ブリヂストンがMotoGPでタイヤサプライヤーだった時代に総責任者を務め、2019年7月にブリヂストンを定年退職された山田宏さんが、かつてのタイヤ開発やレース業界について回想します。2001年は、ロードレース世界選手権最高峰クラス参戦に向け、タイヤ開発テストを繰り返していた時期。山田さんはチームの主要メンバーとして奔走していました。
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契約書づくりと室内試験を並行して進めながら、マシンのカラーリングもデザイン
そして我々は、1月中旬のヘレステストで無事に集結。このときに何種類のタイヤを持ち込んだのか、正確な記憶はないのですが、10種類なんて優に超える数だったと思います。タイヤを構成する要素というのは、大きくわけて構造・形状・コンパウンドという3項目。これらを個別に判断するため、例えば形状に関するテストを実施する場合、構造とコンパウンドは共通化しておいて、形状のみを変更していきます。それまでのブリヂストンには、GP500用タイヤに関する経験がなかったので、形状だけでもさまざまなものにトライしていく必要がありました。形状については、図面を書いて金型を製作するので時間もかかります。対して構造については、より簡単に変更できる状態。例えばベルトを何枚にするかとか素材をどうするかとか角度は……と、少しずつ異なる構造にできます。そしてコンパウンドも、さまざまな成分を配合したケミカルなものですから、こちらも次々にニュータイプを生みだせます。そして、それらを組み合わせることで膨大な種類のタイヤがつくれることになります。
とはいえ、すべてを片っ端からテストするわけにはいかないので、室内試験の研究開発によりタイヤの性能を想定して、実際に製造したいくつかのタイヤを走らせて評価し、そこで得たデータも参考にしながら、次回のテスト用タイヤを開発していきます。最重要テーマとして掲げたのは、「より高いグリップを、レース距離に必要なだけ持続させる」というもの。ところが1月のヘレステストに持ち込んだタイヤに対して、テストライダーの青木選手からは、「コースインして3~4周走って、よしこれから……というときにはすでに、グリップが落ちています」とコメントされたことを覚えています。本格始動してから最初の実走テスト段階とはいえ、やはり我々にとってはショッキングな内容でした。
「高いグリップ性能を、必要なだけ持続させる」ことの難しさ
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