イタリアのモトグッツィからステルビオ以来およそ10年ぶりにアドベンチャーモデルが登場。エンジンは伝統のクランク縦置き空冷OHV2バルブ90度Vツインで、排気量もV9シリーズと同じ853ccのままだが、完全新設計という力作だ。
●まとめ:大屋雄一 ●写真:山内潤也 ●取材協力:ピアッジオグループジャパン
(◯)新設計エンジンが秀逸。フレームも剛性感あり
イタリアのモトグッツィが、久しぶりにアドベンチャーモデルをラインナップに加えた。エンジンは伝統のクランク縦置き空冷OHV2バルブ90度Vツインで、排気量もV9シリーズと同じ853ccのまま。しかし、車体の強度メンバーとして使えるように新設計とされ、合わせてフレームも新作となっているのだ。
V9シリーズの55hpに対し、同じ排気量から80hpを発揮するV85TTのエンジンは、実用域がとにかく広い。3750rpmで最大トルクの90%を発揮するだけあって、ほとんどのシチュエーションでは4000rpm以下で事足りるほど下に力がある。そこから上の領域では、振動が収斂しながらレッドゾーンに向かってスムーズに伸びていく。明確にレスポンスが変わるライディングモードを採用したり、それと連動するトラコンやABSなど、周辺デバイスは現代的になってはいるが、小太鼓を打っているかのような心地良い鼓動感は健在。加えて、コクッと吸い込まれるように入るシフトフィーリングや、400cc並みに操作力の軽いクラッチなど、新設計だけに各部の進化も著しく感動の連続だ。
シャーシもいい。フレームは最低地上高を稼ぐためアンダーループを省略しているが、大きな荷重が掛かる高速コーナーのギャップ通過時にも剛性不足は感じられず、ビシッとラインをトレースし続ける。ホイールトラベルは前後とも170mmと長めに確保されているが、通常の加減速におけるピッチングは少なめで、これが扱いやすさの源に。特に感心したのはシャフトドライブならではの症状、いわゆるスロットルのオンオフにおけるテールの上下動があまり感じられなかったこと。クランクケースの前後長を詰めてスイングアーム長を稼いだことが功を奏したようで、もちろん乗り心地も優秀だ。
ブレーキは、フロントにブレンボのラジアルマウント対向4ピストンキャリパーをダブルで装備。やや過剰かと思われたが、絶対制動力が高いだけでなくコントロール性も秀逸で、コンチネンタル製ABSと合わせて安心感の高い装備と言える。
(△)猛暑で熱ダレの症状も。左足の熱さは覚悟せよ
両ヒザのすぐ前にシリンダーがあるので、熱風が直撃するのは伝統とも言えるが、V85TTで気になったのは左足の熱さ。サイレンサーの熱が速度域を問わず周辺に対流するようで、途中からガニ股で走ることに。レザーパンツは必須だろう。
(結論)こんな人におすすめ:直接のライバルF750GSよりも味わいは上かも
試乗車の純正大型スクリーンは防風効果が高く、ケース類も使いやすかった。こうしたアクセサリー類の充実ぶりも魅力と言えるだろう。ライバルはBMW のF750GS あたりで、価格も近いが、エンジンの楽しさならV85TTが一枚上手か。
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