アクスルシャフトの主な仕事と言ったら、多くの人が思い浮かべるのはホイールの支持だろう。とはいえ、この部品の素材と製法を見直すことで、コーナリングの安定感や乗り心地など、ライディングフィールはガラリと変化するのだ。
金属の素性に精通したコウワならではの製品
近年のカスタム市場で流行している、クロモリ製アクスルシャフト。多種多様な金属製品を手がけるコウワが、クードというブランドを立ち上げてこの分野に参入したのは、今から約5年前で、そのきっかけは、同社の代表を務める浮田和宏さんに、バイク仲間が相談を持ちかけたことだったと言う。
「ウチの業務内容を知っている友人が、クロモリでアクスルシャフトができないかと言うので、モノは試しという気持ちで作ってみたところ、純正とは完全な別物だと言うんです。そんなに違うの? と思って僕も試乗してみたら……、本当に別物でした(笑)。それで商品化を前提にして、いろいろな車両の純正アクスルシャフトの素性を解析したうえで、材質と焼き入れ、メッキの選定を始めたんです。ひと口にクロモリと言っても、製法によって特性は大きく変わってきますからね」
クードのアクスルシャフトで興味深いのは、3層メッキで表面がピカピカに仕上げられていることと、あえて最上級の硬さを追求していないこと。「3層メッキの主な目的は錆び防止ですが、カスタムパーツとしての美観を追求した結果でもあります。硬さに関しては、単純に硬ければいいというわけではないんですよ。ウチの社員と僕の友人知人を総動員して、ありとあらゆる環境でテストしてみたら、適度なしなやかさがあったほうが、良好な感触が得られることがわかったんです」
クードの生みの親
クードの生みの親である浮田和宏さんは、’68 年生まれの51歳。’06年以降はCBR600RRで鈴鹿4耐に参戦しているものの、昔からツーリング好きで、これまでの愛車はカワサキが多かったと言う。元保護犬の愛犬の名前は八兵衛。
KOOD クロモリアクスルシャフト
運動性だけではなく快適性も劇的に向上!
クロモリ製アクスルシャフトが真価を発揮するのは、ある程度以上のペースで峠道やサーキットを走ったとき。世の中にはそう感じている人がいるようだし、実際、市場で販売されているクロモリ製アクスルシャフトの中には、そういう特性の製品もあるだろう。
でもクードは違った。STD→フロントのみ交換→リヤも交換という順序で行った今回の試乗で、僕が最も感心したのは、普通に走っている状況での乗り心地が、段階を経るにつれて向上したことだったのだ。もっとも、フロントのみを交換した際は、ブレーキング時の安定性に驚いたし、リヤを交換した際は、旋回中の車体の落ち着きと、バンクした状態からアクセルを開けた際の挙動のわかりやすさに、目を見張ることとなった。とはいえ、そうやってスポーツライディングをした際のフィーリングと同等以上に、僕としては流すようなペースで走ったときに感じた、上質さが印象的だったのである。
どうしてこんな感触が得られるのかと言うと、前後サスペンションの形が崩れないからだと思う。具体的には、アッパー&アンダーブラケット/フロントアクスル/2本のフォークが作る“日の字”と、スイングアームとリアアクスルで作る“ロの字”が、どんな方向からの負荷がかかろうとも、クード装着車は維持されているのだ。いや、浮田さんの説明から推察するなら、多少は変形しているはずだが、その変形の度合いが、クードはSTDより格段に小さいのではないだろうか。
そんなわけで僕としては、スポーツ指向のライダーだけではなく、ツーリング好きにも、同社の製品をオススメしたい。クードならではの上質なフィーリングは、ロングランでの疲労の少なさ、快適性の向上という面でも、大いに役に立つに違いないのだから。
TESTER 中村友彦
1900年代初頭の旧車から最新SSまで、世界中のありとあらゆるバイクに興味を示す、雑誌業界23年目のフリーランス。カメラマンの箱崎さんから、“シルエットがカッコいい!”と誉められたパンツは、ヒョウドウのST-X Lite。
【車両協力】大阪のカワサキ専門店
試乗車は八尾カワサキ東大阪店から借用。逆輸入車を含めて、現行カワサキ車のほとんどを揃える同店では、多種多様なレンタルバイクも準備している。 ■八尾カワサキ東大阪店 TEL:06・6618・7270 http://yaokawasaki.com/
●文:中村友彦 ●写真:箱崎大輔
※取材協力:コウワ
※ヤングマシン2019年9月号掲載記事をベースに再構成
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