『バイクで巡るニッポン絶景道』シリーズは、ヤングマシンの姉妹誌であるモトツーリング編集長カン吉(神田英俊)が案内人。第27回は、夏に向けて涼しい話題(?)を提供すべく、真冬の北海道で絶景を味わう糠平国道を紹介する。それはツーリングというよりも冒険に近く、万全の準備なしに訪れてはいけない世界。それだけに、今回の記事は読むだけにとどめておいたほうが……?
TEXT:Hidetoshi KANDA
白銀の大雪山系を一望! 難関、道内最高地点を越す
夏は大雪山一望の絶景が魅力の糠平国道。北海道のガイドでは、必ず掲載されている定番の観光ロードだ。十勝方面と上川方面を連絡しており、物流の面でも大変重要な位置を占めている。人家は皆無。これぞ、まさに北海道。白樺の原生林を貫く一本道が果てしなく続き、秘境ムードは抜群。野趣満点の雰囲気が魅力の道だ。
しかし、冬季の表情は一変。吹雪と共に襲う-20℃を越す極低温は、容易にライダー達を寄せ付けない。ただ走る事ですら、非常に厳しい環境下に豹変するのだ。
路面は基本的にアイスバーン。極低温により強固に氷結しており、スパイクタイヤ無しでは絶対に走行不能だ。その上、大雪山脈直下で風雪も非常に強い為、ただ走行するだけでも非常に神経を使う路線だ。しかし、道内屈指の大動脈の為、冬季でも大型車両の交通量は多め。しかも交通の流れは制限速度上限。ヨタヨタと走っていると、後方より跳ね飛ばされかねない、バイクにとっては悪魔の様な世界である。
また、極低温の為、ヒーター装着等の対策を施していないキャブ車は、ほぼ間違いなくアイシングを起こしストップ。周辺に人家は一切なく、トラブルの際には生命の危険が容易に訪れる。装備・知識・技量共に高いレベルを要求され、無謀な挑戦を挑むライダーには死亡の危機が訪れる街道なのである。
まさに選ばれし者のみが走破できる道。日本のツーリングロードの中ではトップクラスの超ハイレベルな道だ。しかし、その悪魔的環境だからこそ、その風景は驚嘆に値する。
白銀の原野に林立する白樺の森。その幹は雪よりも白く、周囲は純白の巨人達のカーニバルといった様相。まれな晴天時は、白と青がモザイク状に入り乱れ、絵本のような幻想的な風景があちこちに出現する。また、道内最高所を越す三国峠からは十勝方面が一望。白銀に染まる、地平線の果てまで続く壮大な原生林と青空のコラボレーションは、この景色を見る為だけに命をかける価値がある。
原野に浮かぶ赤い鉄骨が独特の雰囲気を醸す事で人気のあるこの場所も、冬季の人気は皆無。エンジンを止めると、風の音と動物のざわめきしか聞こえない孤独のポイントだが、これぞ究極の絶景ロード。敷居は非常に高いながら、苦労に見合う以上の感動を得られる。
ただし、それは天候が穏やかであればの話。暴風雪時の視界はほぼ2m。生命の危機を感じる程、激荒れするポイントでもある。装備・知識・技量はしっかり磨いた上で挑戦をして頂きたい。スパイクタイヤは必須。-20℃の暴風雪が吹き荒れる原野で一晩過ごせる程度の装備は最低限でも必要だ。また、スライドコントロール技術も必須。2輪ドリフトをマスターしていない方は走行をお勧めできない。生命だけは大事にして挑んで欲しい。
ロード情報
交通量:全面凍結した冬季とは言え、大型トラックが頻繁に行き来する大動脈路線。丁寧な除雪が成されており走り易いが、暴風雪下では細心の注意が必要だ。
路面:気温の低さもあり、路面は概ねアイスバーン。轍も少ない上、路面露出も少な目。スパイクタイヤには絶好のコンディションだが、動物の飛び出しには注意しよう。
~国道273号 糠平国道~
秘境感★★★★
天空感★★★★
潮風感
爽快感★★★★
根性感★★★★★+
開放感★★★
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