
2025年7月11日~13日にアメリカのラグナセカ・レースウェイで開催されたモトアメリカ選手権第5戦の週末、グランプリで3度のワールドチャンピオンを獲得したレジェンドライダー、ウェイン・レイニーがヤマハよりXSR900 GPを贈呈され、サーキット走行を行った。
●文:ヤングマシン編集部(ヨ) ●写真:YAMAHA
欧州ヤマハとUSヤマハの連携で生まれたカスタムビルドのXSR900 GP
ウェイン・レイニーがバイクでサーキットを走った! 往年のレースファンなら、それがどれほど特別なことか理解できるだろう。
1993年、WGP500クラスで前年までに3年連続チャンピオンを獲得してきたアメリカ人は、シーズン中の事故で脊髄を損傷。下半身不随となり、その場でレース生命を絶たれてしまった。
その後はレースチームの監督などを務めながらヤマハとの関係性を維持し、重要なイベントなどには今も顔を出す伝説のライダーだ。
そんなレイニーがラグナセカを走った。特別なモディファイが施されたXSR900 GPが贈呈され、彼の師匠でもあるケニー・ロバーツらが並走する、2周のバレードラップが行われたのだ。
XSR900 GPを走らせるウェイン・レイニー。並走するMT-09を操縦するのはケニー・ロバーツだ。
レイニーが事故以来、バイクに乗るのは3度目。これまでも全てヤマハ車で、2022年にグッドウッドフェスティバルにおいて改造した1992年のYZR500をライドしたのが最後。そのバイクはリヤブレーキとギヤシフターをハンドルバーに移設していた。
そして、ラグナセカ・レースウェイをレイニーが走るのは、1991年のアメリカGPでポールtoウィンを達成(決勝では2位に6.9秒を差をつけてゴール)したとき以来だという。
1990年のウェイン・レイニー。ゼッケン2を付けて走ったのはこの年のみ。
じつはXSR900 GPが初登場した際、ローンチビデオではウェイン・レイニーがフィーチャーされていた。ご記憶の読者もいらっしゃるだろう。レイニーには量産車の初期ロットの1台が贈呈される予定だったが、欧州ヤマハのチームは、ウェインがカノにレースで乗っていたマシンをオマージュしたデザインのバイクで再び走れることを目標に、スペシャルな1台を製作したのだという。
そんな今回のXSR900 GPは、ヤマハがMT-09やトレーサー9 GT+、MT-07に投入した最新技術の「Y-AMT(ヤマハ オートメイテッド マニュアルトランスミッション)」を特別にフィッティングしているのが最大の特徴。さらに、レイニーが走らせていたYZR500を彷彿とさせるカラーリングにゼッケンを合わせ、フレームとホイールをブラック仕上げとした。
また、腰から下が動かせないレイニーのために、安定した姿勢を保てるように燃料タンク後端に大型パッドを設置、またステップとブーツを固定できる金具も採用するなどの改造も施された。
こちらはノーマル状態のXSR900 GP。レイニー号をリスペクトしているのは明らかだ。
2024年にはランディ・マモラが走らせた1987年のYZR500(0W86)をオマージュしたカスタムカラーも披露された↓
1987年にランディ・マモラが3勝を挙げたYZR500 ヤマハが欧州で展開するカスタムプロジェクト「ヤードビルト(YARD BUILT)」の最新作品が登場した。元々がWGPファクトリーマシン・YZR5[…]
XSR900 GP Y-AMT の量産はあるのかないのか
MT-09 Y-AMTやトレーサー9 GT+とベースを共有するXSR900 GPだけに、今回のパレードラップが純正でY-AMTを搭載したモデルが登場する前振りなのでは、と思われる方も少なくないはず。当然ながらまるっきり別の機種にY-AMTを搭載するよりもハードルが低いのは間違いなく、可能性としてはあると断言したい。あとはそれが市場に求められているかどうかにかかっている。直近での登場、たとえばEICMA 2025でのお披露目があるかは微妙なところだが、将来的な可能性としてはけっして低くないと見る。
そんなことも踏まえながら、XSR900 GPレイニー仕様の写真を楽しんでいただければ幸いだ。
【動画】🏁 Wayne Rainey Rides Laguna Again | MotoAmerica
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
最新の関連記事(ヤマハ [YAMAHA] | レース)
欧州仕様に準じた仕様でKYB製フロントフォーク、ウイングレット、ブレンボキャリパーなどを採用するR1 2026年シーズンをヤマハ車で戦うライダーに向け、サーキット走行専用モデルの新型「YZF-R1 レ[…]
ワールドスーパーバイク選手権で6度の世界王者に輝いた北アイルランド人 ジョナサン・レイがついに引退へ──。 2024年にカワサキからヤマハへと移籍したジョナサン・レイが、2025年シーズン終了をもって[…]
今年の8耐レーサーYZF-R1&1999 YZF-R7フォトブース 6年ぶりに鈴鹿8耐へファクトリー体制での参戦を果たすヤマハ。それもあってか、今年の8耐は例年以上の盛り上がりを見せている。 会場のヤ[…]
“モンスターマシン”と恐れられるTZ750 今でもモンスターマシンと恐れられるTZ750は、市販ロードレーサーだったTZ350の並列2気筒エンジンを横につないで4気筒化したエンジンを搭載したレーサー。[…]
欧州ヤマハとUSヤマハの連携で生まれたカスタムビルドのXSR900 GP ウェイン・レイニーがバイクでサーキットを走った! 往年のレースファンなら、それがどれほど特別なことか理解できるだろう。 199[…]
最新の関連記事(ヤマハ [YAMAHA] | 新型ヘリテイジ/ネオクラシック)
43年で歴史に幕……と思ったらタイで続いてるよ! 平成32年排出ガス規制の壁、ABS義務化、そして灯火類の追加レギュレーション……。日本ではさまざまな理由から継続生産ができなくなり、2021年モデルを[…]
8/1発売:ロイヤルエンフィールド「ハンター350」 2025年8月1日より受注を開始するのが、ロイヤルエンフィールドの新型「ハンター350」だ。注目すべきは、従来モデルから5万円以上の値下げが敢行さ[…]
大型二輪免許は18歳から取得可能! バイクの免許は原付(~50cc)、小型限定普通二輪(~125cc)、普通二輪(~400cc)、大型二輪(排気量無制限)があり、原付以外には“AT限定”免許も存在する[…]
評判のいい正立フロントフォーク時代のMT-07がベース ヤマハは、スポーツヘリテイジ「XSR」シリーズの2気筒モデル「XSR700 ABS」2025年モデルを発表。この物価高の時代に価格据え置きとし、[…]
”XSR900”の登場によりカジュアル寄りに回帰 2024年モデルまでのXSR900は、初代モデルに対し“レーシングヘリテイジ”を標ぼうすることで1980年代のレーシングマシンカラーをまとい、走りもス[…]
人気記事ランキング(全体)
どうする? スクーターのエンジンがかからない ※これはまさに、筆者が直面した実話です。我が家のスクーター(TODAY)に乗ろうと思って、車庫から引っ張り出しました。ちょっと久しぶりですね。エンジンをか[…]
カスタムスピリットから生まれた英国ブランド まずMUTT Motorcyclesというブランドについておさらいしておこう。2016年、英国バーミンガムでカスタムビルダーのWill RiggとBenny[…]
“思い出の1台”に乗りたい バイクメーカーがニューモデルを開発する際は、ユーザーがそれを受容できるか、あるいは新たなマーケットを作り出せるかが重要。レーサーレプリカもネイキッドも、それがウケると分かっ[…]
日本の免許制度を考慮してナナハン4気筒と同時開発 GS750の弟分。世間にはそういう見方をする人がいるけれど、’76年から発売が始まったGS400を弟分と呼ぶのは、少々語弊があるのかもしれない。なんと[…]
随所に専用部品を投入したZシリーズ初のR仕様 Z1000の派生/上級機種として’78年に登場したZ1‐Rは、評価がなかなか難しいモデルである。まず当時の流行だったカフェレーサーの手法を取り入れながら、[…]
最新の投稿記事(全体)
エンデュランス バイクETCケース 汎用 EK395HANA1の概要 エンデュランスのETCケース EK395HANA1は、材質にSUS304を採用した黒塗装仕上げで耐久性と防錆性に配慮された製品です[…]
FLHXSE CVOストリートグライド:CVOでは唯一となるバットウイングフェアリング フラッグシップモデルを象徴するバットウイングフェアリング。そのアイコンを持つ最上級仕様が「CVOストリートグライ[…]
コンパクトで使いやすいワイヤーロック ヘンリービギンズの「デイトナ ワイヤーロック DLK120」は、質量約90gの軽量設計で、ツーリング時の携行に適したポータブルロックです。ダイヤルロック式のため鍵[…]
随所に専用部品を投入したZシリーズ初のR仕様 Z1000の派生/上級機種として’78年に登場したZ1‐Rは、評価がなかなか難しいモデルである。まず当時の流行だったカフェレーサーの手法を取り入れながら、[…]
125ccクラス 軽さランキングTOP10 原付二種は免許取得のハードルも低く、手軽に楽しめる最高の相棒だ。とくに重要なのは「軽さ」だろう。軽ければ軽いほど、街中での取り回しは楽になるし、タイトなワイ[…]
- 1
- 2