
ハーレーダビッドソンのラインナップにおいて最高峰に位置づけられる「CVO(カスタムビークルオペレーション)」。ウィリーGが中心となって、自社の技術者が持てるすべてをかけたファクトリーカスタムとして初代が誕生して以来25周年。2024年式ではプレミアムなアニバーサリーモデルとして特別な装いとしている。今回、注目の2台に乗った。贅沢で格別な時間であったことは、言うまでもないだろう。
●文:青木タカオ(ウィズハーレー編集部) ●写真:望月勇輝 関野温 ●外部リンク:HARLEY-DAVIDSON JAPAN
OHV45度Vツインの伝統を受け継ぐ史上最強エンジンは、キャラに違いあり!!
長きにわたり、ウィリーGが熱き情熱でスタイリングを手がけ、開発技術者たちとともに魂が込められ、製品化されてきたハーレーダビッドソン。その信念/熱情/スピリットは最新2024年モデルにも受け継がれ、デザインと機能美が融合したメカニカルアートと呼ぶにふさわしいプロポーションを見せている。
ブランドを代表するフラッグシップ・ロードグライドとストリートグライドは、シンボルとも言えるフェアリングを進化させた。
従来型のフォルムを継承しつつ、流体力学を用いたデザインによってエアロダイナミクス(空力性能)を向上。ヘッドライトをLED化し、デイタイムライトも備えるまったく新しいフロントマスクに生まれ変わった。
ニューモデルとすぐにわかるのと同時に、誰が見ても紛れもなくそれはハーレーダビッドソンであると認識できる。
「CVOロードグライド」に最初に乗ったのは、2023年夏、富士スピードウェイのレーシングコースだった。2リッターに迫る超弩級エンジンの抜きん出たトルクフィールと、スムーズながらもやはりハーレーらしく怒涛のごとく高回転へ至る、あふれんばかりのパワーを発揮するVツインに感銘を受けつつ、サーキットにてその高い運動性能を存分に味わうことができた。
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そして今、新登場の「CVOロードグライドST」とともに公道へ出た。
まず、どちらにもH-D史上最大となる排気量1977ccのミルウォーキーエイト121が積まれている。歴代のエンジンがそうだったように、V型2気筒エンジンのシリンダーが45度で配置されるのは、ずっと変わらない。
ロングストローク設計のOHVで、クランクからの駆動力はプライマリーチェーンを介して、別体式のトランスミッションへ伝達していくという、他社のモーターサイクルにはもう存在しないトラディションなエンジン機構を採用し続ける。
吸排気バルブを1気筒あたり4バルブ、合計で8バルブとしたことから「ミルウォーキーエイト」とパワーユニットはネーミングされた。ミルウォーキーはハーレーダビッドソンが1903年の創業時から本社を構え続ける米国ウィスコンシン州の最大都市だ。
シリンダーヘッドは水冷化され、ラジエターをエンジン前方ダウンチューブにマウントさせ、フロントタイヤの後ろで走行風を効率よく当てている。
エンジン回転数/スロットル開度/ギヤ段数など状況に応じてバルブの開閉タイミングを最適化するVVTは、パワーデリバリーがより滑らかで、ハイエンドモデルらしい上質なものとしている。
CVOロードグライドの「ミルウォーキーエイトVVT121」には可変バルブタイミング機構が採用され、全域でたっぷりと余裕のあるトルクを発揮しつつ、穏やかな扱いやすさがそこに同居する。
一方でCVOロードグライドSTの「ミルウォーキーエイト121HO(ハイアウトプット)」では、スロットル操作に対してシャープにレスポンスし、ドラマティックとも言える強力なヒット感を伴いつつ回転を上げ、満ち溢れんばかりにパワーを盛り上げていく。
最高出力115→126ps、最大トルク183→193Nmと、カタログスペックにも明らかな違いが見られる。
CVOロードグライドSTは、H-Dワークスチームも参戦するキング・オブ・ザ・バガーズの流れをくみ、アグレッシブな走りをより強く意識した味付け。
シングルシート化し、フルアジャスタブルのSHOWAリヤサスペンションは、高性能な足まわりであることを誇示するかのように、リザーバータンクをフェンダーストラットにマウントし、テールエンドでその姿を見せつけている。
楕円形のチタン製シェルを持つスクリーミンイーグルのマフラーは、ハイフロー設計で、とくに加速時に爽快なサウンドを発生。フェンダー/タンクコンソール/シートカウル/エキゾーストエンドキャップを軽量な鍛造カーボンファイバーとし、車体全体で11.3kgも軽い。
もちろん、CVOロードグライドの走りもかなりスポーティだ。47mmSHOWA倒立フォークは76.2mmのトラベル量を持つプレミアムショックで、フロントにはブレンボ製のラジアルマウント4ポットキャリパーが大径320mmディスクローターと合わせて組み込まれる。
2022年式よりも16kgもの軽量化がなされ、車体の引き起こしから軽く、加速やブレーキなどあらゆる性能を向上。STよりグリップ位置の高い堂々たるハンドルポジションを好むライダーも多いだろう。
両車ともハーレーダビッドソンにおけるトップエンドモデルであり、2024年式はCVO25周年アニバサリーの特別な仕上げが施されているから、プレミアム度はなおさら高い。どちらに乗っても大排気量Vツインならではの強力なトルク、ハーレーらしい鼓動に酔いしれるばかり。
じつに贅沢なテストライドであり、それは至福のひとときであった。オーナーになれば羨望の眼差しを受けつつ、こうした時間をずっと過ごせるのだ。
【HARLEY-DAVIDSON CVO ROADGLIDE|M8 121VVT】●ボアストローク:103.5×117.5mm ●排気量:1977cc ●最高出力:115ps/5020rpm ●最大トルク:183Nm/3500rpm
【HARLEY-DAVIDSON CVO ROADGLIDE ST | M8 121HIGH OUTPUT】●ボアストローク:103.5×117.5mm ●排気量:1977cc ●最高出力:126ps/5020rpm ●最大トルク:193Nm/3750rpm
CVOロードグライドST
【HARLEY-DAVIDSON FLTRXSTSE CVO ROADGLIDE ST】風洞実験のデータの解析と流体力学(CFD)を用いてシルエットを造形し、シームレスなビジュアルフローを生み出した。エンジンガードはスライダー付きで、エクストリーム系のスタイルを匂わすトレンドを反映。また、SCREAMIN’ EAGLEエクストリームフローチタン製スリップオンマフラーは、楕円形の軽量チタン製シェルと鍛造カーボンファイバー製エンドキャップを備える。●価格:544万2800円〜
■全長:2410mm シート高:720mm 最低地上高:130mm レイク:26度 トレール:170mm ホイールベース:1625mm タイヤサイズ:(F)130/60B19 (R)180/55B18 燃料タンク容量:22.7L 車両重量:380kg 空水冷OHV4バルブV型2気筒MILWAUKEE EIGHT 121 HIGH OUTPUT ボア×ストローク:103.5×117.5mm 排気量:1977cc 圧縮比:11.4:1 最大トルク:193Nm@3750rpm 最高出力:126HP/94kW@5020rpm 変速機形式:6速リターン ブレーキ形式:(F)ダブルディスク (R)ディスク
◆フェアリングには専用のグラフィックが施される。
◆6インチのライザーにハンドルバーがセットされ、グリップ位置をより低く設定しているのもスポーティーな走りのためだ。
◆フロント19/リヤ18インチのホイールサイズは変わらないが、CVOロードグライドSTではY字7スポークのアルミキャストをグロスブラック仕上げにし、精悍に引き締めた。
◆シートをソロ仕様に、レーシングライクなシートカウルをセット。
CVOロードグライド
【HARLEY-DAVIDSON FLTRXSE CVO ROADGLIDE】ハーレーの伝統と歴史を受け継ぎつつも70%は再構築された新型ロードグライドをベースにしたCVOバージョン。●価格:562万9800円〜
■全長:2410mm シート高:720mm 最低地上高:145mm レイク:26度 トレール:170mm ホイールベース:1625mm タイヤサイズ:(F)130/60B19 (R)180/55B18 燃料タンク容量:22.7L 車両重量:393kg 空水冷OHV4バルブV型2気筒MILWAUKEE EIGHT 121 VVT ボア×ストローク:103.5×117.5mm 排気量:1977cc 圧縮比:11.4:1 最大トルク:183Nm@3500rpm 最高出力:115HP/86kW@5020rpm 変速機形式:6速リターン ブレーキ形式:(F)ダブルディスク (R)ディスク
◆12.3インチTFTカラータッチスクリーンによるインフォテインメントシステムはSkyline OSを搭載し、スマートフォンと連携。Apple CarPlayに対応する。4チャンネル500ワットRMSアンプを備えたRockford Fosgate Stage II 4スピーカーオーディオシステムを装備し、クリアで迫力のあるサウンドが楽しめるのはSTも同じだ。
◆インナーチューブ径47mmの倒立フォークおよびトラベル量を従来型より50%増やしたリヤサスペンションはSHOWA、ブレーキはフロントにブレンボ製ラジアルモノブロック4ピストンキャリバーに320mmディスクローターの組み合わせ、アルミ鋳造リムとレース状スポークを組み合わせた豪華なホイールは、複雑な形状で高級感を漂わす。
CVOロードグライド/STのライディングポジション〈身長175cm/体重66kgの場合〉
【CVOロードグライドST】ハンドルポジションがわずかながら低く、より前傾気味になってスポーティーな姿勢もとれる。シングルシート仕様のSTは座面後部が大きく盛り上がり、加速時に身体を支えるストッパーとして機能する。シート高は両車とも変わらず720mmだ。
【CVOロードグライド】ロングライドも苦にしない、ゆったりとしたライディングポジション。シートもまた従来のCVOモデルに対して、デザインだけでなく素材も改め快適性の向上が図られている。シート高は720mmで、身長175cmの筆者は足つき性に不安はない。
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