どんなに時間が経とうが、その輝きを失わない物がある。モーターサイクルに対する確固たる信念と溢れる情熱でつくられたハーレーダビッドソンもその一つだ。アメリカの工業製品が高性能と洗練されたデザインで世界を席捲した1930~60年代に生産されたモデルは、旧き佳き時代の象徴として人々を魅了してやまない。大阪のセンバモータースに保管されている貴重なコレクションの一部を6回に渡って紹介する。第5回はパンヘッドとスプリンガーフォークの組み合わせた「1948年式」の激レアなELだ。
●文:ウィズハーレー編集部(青木タカオ) ●写真:藤村ノゾミ ●外部リンク:センバモータース
パンヘッド&スプリンガー。奇跡の“ヨンパチ”ここにあり!
ファンを魅了してやまないパンヘッド。エンジン上部がキッチンの鍋を裏返したような形をしているから、そう呼ばれる。
第二次世界大戦以降、戦勝国アメリカは世界で最も富める国となり、すべてにおいて最高であることがユーザーからも求められていた。ナックルヘッド登場から10年が経つ頃、ハーレーダビッドソンは最新技術をふんだんに盛り込んだ新型エンジンの開発に着手する。
鋳鉄シリンダーゆえのオイル漏れやオーバーヒートという問題を開発当初から抱えていたナックルヘッドに対し、パンヘッドでは放熱性に優れ軽量なアルミ製シリンダーヘッドを採用した。
鋳鉄製のシリンダーや半球形の燃焼室、ボア×ストロークはナックルと同じだが、プッシュロッドにタペットクリアランスを自動調整する油圧ユニットを新設。最高出力は1000ccのELが約46PS、1200ccのFLが50PSを発揮する。
デビューは1948年。翌年には油圧式フォークを新たに採用したハイドラグライドがデビューするので、パンヘッドと旧来のスプリンガーフォークの組み合わせは、この年式だけとなってしまう。
しかしなにゆえに、ニューエンジンと新作のサスペンションを同時に持ったニューモデルとならなかったのか!? 不可解にも1年だけズレたことで、48年式“ヨンパチ”は特別扱いされ、別格となっていく。
47年から採用されているタンクエンブレムはレッドボールと呼ばれるが、赤い塗料はほとんど残っていない。ティアドロップ型のツールボックスはリヤ周りでアクセントとなって、存在感がある。テールライトのデザインは、’47年式からビーハイブ(蜜蜂の巣)からトゥームストーン(墓石)型となっている。傑作と呼ばれるものは、隅々まで見ても隙がない。
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