●文:ライドハイ編集部(根本健)
性能より品位の高さで世界一を目指した
1969年の東京モーターショーにおいて、「ヤマハXS-1」がデビューした。初の4ストロークエンジンで、これまでにない650ccもの大排気量モデルとして注目を浴びていた。
初の4ストロークという表現を説明しておくと、ヤマハは製品第1号のYA-1(125cc)から2ストロークエンジンのメーカーだった。4ストロークのように機械駆動される吸排気のバルブを持たず、構造もシンプル、毎回爆発するので小排気量エンジンでも高出力が得やすく、多くのメーカーが2ストロークをこぞって採用していた。
1960年代までは、国産大型バイクでメグロ/ライラック/陸王などの4ストロークエンジン車も存在したが、1960年代後半に淘汰されてからは、ホンダを除き2ストロークエンジンが主流を占めていた。
それが世界GP制覇を足がかりに、日本メーカーは250ccスポーツを中心に大型バイク並みの性能が得られると欧米で人気になり、その次へのステップとして英独勢が占めていた高級高価な大型車のマーケットへの進出を試みようとしていた。
ちょうどその折にデビューしたのが1968年のホンダCB750フォアであり、1972年のカワサキZ1という、世界最速を目指したスーパースポーツ。もちろん、量産車で初の4気筒というスーパーメカニズム、そして200km/hという最速! 世界中から注目を浴びた。
もうお分かりのように、ヤマハは、ホンダやカワサキ、そして後に続いたスズキが追求したハイパフォーマンス化には目もくれず、初のビッグバイクを、英独一流メーカーの名車と呼ばれた製品と肩を並べる、品位あるクオリティ側に寄せたのだ。
実は水面下で、2ストロークの4気筒750スーパースポーツも開発されていた(1971年の東京モーターショーにGL750という車名で参考出品)。そのため割り切った考えを推し進められたのかもしれないが、1950~1960年代に日本人も憧れた英国のトライアンフやBSAにノートンといった、エレガントなビッグツインをターゲットに、まずはチャレンジをスタートしていた……
※本記事は2021年7月22日公開記事を再編集したものです。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
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