
●文:ライドハイ編集部(根本健)
エンストを警戒する長い半クラッチだと自信がないまま
キャリアの浅いビギナーはもちろん、そこそこ経験年数があっても、発進の半クラッチに自信がないライダーは多い。
典型的なのが、エンストを怖れて少しエンジン回転を上げておいて、クラッチをそろそろと滑らせながら、どこかで勝手に(?)クラッチが繋がってしまい、エンジン回転がドロップするものの、まァ繋がったからイイかとあらためてスロットルを捻る…。
これだと完全に繋がるまで長い時間と距離を使ってしまい、信号待ちから発進直後に左折や右折ができない、もしくは大回りに陥りがちで、なんとかしたいと思いながら解決できていないパターンだ。
上手な半クラッチは、アイドリングよりちょっと上の回転で、クラッチが滑る時間が短く瞬く間に繋がって、半クラッチがなかったかのようにサクッと発進…。ベテランのこの仕草を真似たいけれど、ちょっと試してみてもエンストするばかりで、諦めるしかないほど難しい。
ではなぜ半クラッチが難しいのか、まずはその理由を知ることから始めよう。
オートバイの湿式多板クラッチの曖昧さが原因
ほとんどのオートバイエンジンには、右側に丸い膨らみが出っ張っているはず。これがクラッチのある場所で、内部にイラストのようなフリクションプレート(青)とクラッチプレート(黄)が交互に重なっていて(イラストでは3枚+3枚だが実際はおよそ6枚ずつ)、クラッチレバーを握るとお互いが離れた状態となり、レバーを放すとスプリングの張力で全部の板がくっついた状態になる。
半クラッチは、お互いがくっついた状態よりちょっとだけ離れる位置となって、滑りながらチカラを伝える状態。ただこれが何枚もあるので、均等に滑ってくれるワケではなく、半分はくっついたままの位置で半分が滑りながら繋がる状態だったりする。つまり安定して一定の滑り方をキープする状態にはなりにくいという曖昧な作動なのだ。
ちなみに、なぜ何枚もあるややこしい構造になっているかといえば、(自動車などの)お互いが1枚どうしで離れたり繋がったりするクラッチの場合、大きなパワーやトルクで滑ってしまわないよう、直径が大きく接触面積も大きな構造になっているのに対し、オートバイのエンジンはそんな大きな円盤を設定するスペースもないのと、大径だと慣性力でエンジンのレスポンスが回転を上げるのにもたつくことになり、スロットルを閉めても回転が落ちてくるのに時間がかかるという、とてもスポーツライディングなどできないお荷物を抱えてしまうことになる。
そこで、大きな円盤をイラストのように何枚もの小径の円盤に分離することで、接触面積を稼ぎながら、回転しても慣性力の少ない小径な構造としたのだ。
滑りやすいクラッチレバー位置を避け、繋がる寸前の位置を使うのがコツ
では、どうすれば短い半クラッチが可能になるのかといえば、クラッチレバーのストロークする位置を再確認することから始めるしかない……
※本記事は2022年6月6日公開記事を再編集したものです。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
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