
●文:ライドハイ編集部(根本健)
ネモケンにかかってきた“1本の電話”からドラマが始まった
1986年の秋、ボク(根本健)のところへ、世界GPで闘うHRCワークスチームのボスである尾熊さん(以下 クマさん)から、電話があった。
「来春のルマン24時間レースにホンダから出ませんか? HRCへ来社ください。ただし、いっさい他言無用で」
クマさんらしい、いつものぶっきらぼうな口調で一方的に伝えると、いつ来るのかというスケジュール確認のみ。
「行ってみないことにはどうにも掴めない」ということで、HRCへ伺った。会議室に通されると、ベールを被ったマシンが1台置いてあった。
挨拶もそこそこに、クマさんの指示でベールを取ると、ロスマンズカラーの「RVF750ワークスマシン」が現れた。
ただ、よく見るとツインチューブフレームに切り欠きが入っていて、エンジンのヘッドカバーが飛び出しているではないか。
続いてカウルも取り外され、RVFエンジンより幅広なV4が姿を見せる。前バンクに4本、後ろバンクにも4本のエキゾースト。これはオーバルピストンV4に違いない。
世界GPを2ストのNS500やNSR500に譲ったNR500だったが、水面下で開発は続いていて、翌春のデイトナ200マイルで750ccまで排気量をアップして、パフォーマンスを見せる予定だったそうだ。
ところが、アメリカAMAの車輌規則がアップハンドルの市販車ベースに変わってしまい、出場のチャンスを逸してしまったという。
そうなると、プロトタイプが走れる世界的なレースとなれば、ルマン24時間耐久レースぐらいしかない。
そろそろ実用化も見据えた開発に着手したいので、ルマン24時間でジャーナリストライダーに走ってもらい、そういった段階にあるアピールも兼ねよう、ということになった由。
鈴鹿での初乗りで驚愕のパフォーマンスと底知れぬポテンシャルに衝撃!
すでに栃木のテストコースで、「300km/hでも安定して走れるのを確認済み」とのことで、まずはどんなものだか、耐久仕様へデチューンする前のデイトナ仕様のまま試走ということになった。
オーバルピストンで、シリンダー幅はRVFよりワイド。そのため、とりあえずツインチューブのメインフレームに切り欠きを入れた状態になっており、毎周ピットインしてホームストレートは駆け抜けない。タイヤも「ビードがパワーでスリップするため、試す程度なのを心してください」と、注意を受けてコースイン。
ウォーミングアップしつつ、ヘアピンを過ぎスプーンカーブにさしかかると、イン側から合同テストを走るNSR500にブチ抜かれる…。
立ち上がりから裏ストレートなので、どんなものか全開にしてみた。
3速→4速→5速→6速、なんと同じ間隔で6速でも同じ加速G。矢継ぎ早のシフトアップが追いつかない未体験ゾーンだ。哮り狂った爆走としか表現できないロケットダッシュで、前を走るNSR500に瞬く間に追いつく。聞けば188ps/18,500rpm以上だという。
しかし、もっと驚いたのが……
※本記事は2023年1月31日公開記事を再編集したものです。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
ライドハイの最新記事
2007年に「感動創造」をテーマにプレミアムなモーターサイクルを提案! 2007年の東京モーターショーに、ヤマハは異彩を放つショーモデルをローンチ。 その名もXS-V1 Sakuraと、和をアピールす[…]
A.慣れたコーナーには先が見えている安心感で、そこそこアベレージ高くコーナリングできる満足感を楽しめます。でも慣れているからこそ潜んでいるリスクも考えましょう。知らない道のほうが楽しいといえる走り方こ[…]
カワサキも予想しなかったZEPHYRの大ヒット! 1989年、カワサキがリリースしたZEPHYR(ゼファー)は、レーサーレプリカ熱に辟易とした空気が漂いはじめたタイミングもあって、瞬く間に400ccク[…]
1999年、東京モーターショーに突如CB Fourが出現! CB Four、ホンダファンは憶えているはず。1999年の東京モーターショーに、何の前ぶれもなく展示されたショーモデル。その名も「CB Fo[…]
Q.ツーリングへ出かけるとバイクのすぐ前の路面ばかり見てしまいます。そのため先のほうの様子に気づくのが遅れ、カーブの手前で慌てます。「遠くを見ろ」とよく言われますが、先を見ていると手前の路面が心配にな[…]
最新の関連記事(名車/旧車/絶版車)
初代はスポーツモデル:1975年ゴールドウイング(GL1000) 1970年代当時、巨大なアメリカ市場を独り占めしていた英国車をCB750フォアで一蹴したホンダだったが、Z1とそれに続く競合車の登場で[…]
バンビーンOCR1000が搭載するのは「2ローターで996cc」のロータリーエンジン、最高出力は100ps 私(1966年生まれ)世代のライダーでバンビーンの存在を知っている人は、おそらくバイク漫画『[…]
〈2012年1月〉SR400[3HTU]:黒にホワイトステッチ追加 2012年モデルではカラー変更を実施。ヤマハブラックは、FI化した2009年モデルとはグラフィックを変更し、モノトーンのシートにSR[…]
実質的な速さで4気筒に挑む 2020年モデルでは、3psのパワーアップを果たし、スリッパークラッチの標準装備と、クイックシフターをオプションに新設定し、同年デビューのカワサキ・ニンジャZX-25Rに対[…]
2007年に「感動創造」をテーマにプレミアムなモーターサイクルを提案! 2007年の東京モーターショーに、ヤマハは異彩を放つショーモデルをローンチ。 その名もXS-V1 Sakuraと、和をアピールす[…]
最新の関連記事(ネモケンのこのバイクに注目)
新型4気筒を待ち焦がれていたホンダファン CBにXが加わった車名のCBX400Fは、1981年10月にデビュー。バイクブーム真っ只中で爆発的な人気を誇ったホンダの切り札となったマシンだ。 実はカワサキ[…]
ボクサーエンジンの誕生、最強バイクとして世界中でコピー BMWといえば、2輪メーカーとしてスーパーバイクS1000系からボクサーのRシリーズなど、スポーツバイクで世界トップに位置づけられるメーカーだ。[…]
特別な存在をアピールする“衝撃”=IMPULSEと名付けたバイク スズキには、1982年から400ccネイキッドのシリーズに「IMPULSE(インパルス)」と銘打ったバイクが存在した。 IMPULSE[…]
250ccの4気筒はパフォーマンスで不利。それでも届けたかった4気筒の贅沢な快適さ 250ccで4気筒…。1982年当時、それは国産ライバルメーカーが手をつけていないカテゴリーだった。 1976年にD[…]
一般公道は乗りやすさ最優先、そのコンセプトを後方排気でピュアレーシーへ ヤマハは、1980年にレーサーレプリカ時代の幕開けともいうべきRZ250を発売。一躍250ccをビッグバイクを凌ぐパフォーマンス[…]
人気記事ランキング(全体)
2007年に「感動創造」をテーマにプレミアムなモーターサイクルを提案! 2007年の東京モーターショーに、ヤマハは異彩を放つショーモデルをローンチ。 その名もXS-V1 Sakuraと、和をアピールす[…]
英国生まれインド育ち:クラシック風味に全振りしたモデル 現存するオートバイブランドでは最古(大元のジョージ・タウンゼンド・アンド・カンパニーの創業は1851年! )と呼ばれ、1901年にオートバイの生[…]
カワサキが提案する、クリーンでファンな未来のパワーユニット=2スト! 世界中から注目を集める大阪万博。この巨大イベントはまさに国家プロジェクトだが、このイベントにカワサキが出展。 そのカワサキブースの[…]
フルフェイスが万能というわけでもない ライダーにとって必需品であるヘルメット。みなさんは、どういった基準でヘルメットを選んでいますか。安全性やデザイン、機能性等、選ぶポイントはいろいろありますよね。 […]
なんと“MotoGP全サーキット”を100均ハンガーで再現! 筆者はまったく門外漢なのですが、なんでも鉄道ファンには「乗り鉄」「撮り鉄」「模型鉄」など、趣味や嗜好によって、たくさんの棲み分けがあるんだ[…]
最新の投稿記事(全体)
大盛況だったサイン・ハウスブース 今年もモーターサイクルショーに登場した「サイン・ハウス」のブース。 ブースはシンプルで洗練されたデザインながらも、ひと目でギア好きの心をくすぐる雰囲気。 各製品に触れ[…]
初代はスポーツモデル:1975年ゴールドウイング(GL1000) 1970年代当時、巨大なアメリカ市場を独り占めしていた英国車をCB750フォアで一蹴したホンダだったが、Z1とそれに続く競合車の登場で[…]
フルフェイスが万能というわけでもない ライダーにとって必需品であるヘルメット。みなさんは、どういった基準でヘルメットを選んでいますか。安全性やデザイン、機能性等、選ぶポイントはいろいろありますよね。 […]
特別色と専用ロゴなどを配した『50th ANNIVERSARY』 ホンダは、1833ccの水平対向6気筒エンジンを搭載する大型プレミアムツアラー「ゴールドウイング ツアー(GOLD WING TOUR[…]
1998年モデル:初代1300はとにかく巨大だった ヤマハXJR1200、カワサキZRX1100といった、CB1000SFを超える排気量のライバル出現で、ビッグネイキッド界は重厚長大化していった。そん[…]