![[バイク歴史探訪] BMWボクサーエンジンが今も存続できる最強の理由とは?【100年の歴史を経た水平対向2気筒】](https://young-machine.com/main/wp-content/uploads/2023/12/001_bmw_r1250r_201008_01.jpg)
●文:ライドハイ編集部(伊藤康司)
無類の安定性による信頼感と巨大ボアのワイルドな瞬発力。スポーティーな魅力でファンを惹きつけてきた
前から見ると、両側に巨大なシリンダーが突き出た水平対向“ボクサー”エンジン。ボクサーが胸のところでグローブを水平に突き合わせるポーズが、ふたつのピストンが往復する動きを象徴しているので、そう呼ばれることとなった。
このエンジン形式の最大の特徴は、シリンダーが水平なので、クランクシャフトから上に重いエンジン機構がなく、そのため低重心で走行安定性の高さが抜群。
ボクサーが誕生した100年近く前から第二次世界大戦あたりまで、非舗装路が多かったり、舗装されていても路面がバンピーだったりしていた環境で、ライバルより高速で走れる圧倒的優位さで、マン島をはじめ世界のレースも制していた最強エンジンだったのだ。
天才エンジニアが作った高耐久のエンジン
その当時に人気だったもうひとつの理由に、耐久性の高さがあった。航空機エンジンのメーカーだったBMW(丸いマークの中に白と青が十字で配色されているのは、回転しているプロペラと空の青をモチーフしたもの)が、第一次大戦の敗戦で航空機産業が稼働できなかった事情から、航空機用としてはメジャーな水平対向2気筒エンジンを、オートバイメーカーに供給しようと設計したのがそもそものきっかけだった。
このエンジンを手がけたマックス・フリッツという天才エンジニアは、どうせなら車体も自社で生産して完成車メーカーを目指そうと、実は車体構造と一体化を構想していたのだ。
クランク軸を車体の進行方向と同じ縦にマウントし、当時は別体で繋いでいたトランスミッションやクラッチをひとつのエンジンケースに収め、しかもシャフト駆動として、チェーンやベルトによる駆動で切れて立ち往生するトラブルの多かった時代に、故障知らずの耐久力の圧倒的差異をアピール。重心の低い高速走行も可能な安定性とともに、瞬く間にベストセラーとなった。
天才エンジニアのマックス・フリッツが設計して、1920年に製造がスタートした水平対向2気筒・M2B15は、各メーカーに供給されていたが、1923年に自社で車体も含めたコンプリートバイクとして初の量産車「R32」が発売となった。
その後、一時は2輪からの撤退も考えられたが…
しかし第二次大戦後、舗装路の整備も進み、バーチカルツインなど英国製スポーツが台頭し、その後1970年代には日本製4気筒がマーケットを独占。BMWは、ツーリングモデルとして初のフルフェアリングを纏ったR100RSに活路を見出そうとしたが、厳しくなる一方の排気ガス規制に空冷ボクサーの将来を悲観して、2輪から撤退も検討するほど窮地に追い込まれた……
※本記事は2020年12月24日公開記事を再編集したものです。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
ライドハイの最新記事
デビュー時は2スト125で敵ナシ状態! 1982年のヤマハRZ125が生んだムーブメントは、高速道路へ入れないマイナーな125スポーツだったのを、2ストの水冷化で通勤通学だけでなくレースへ興じる層が加[…]
250cc2気筒の水冷Newエンジンだけではないテクノロジーによる軽量化! 1980年、世界中を震撼させたRZ250がリリースされた。 排気ガス規制で1970年代中盤を過ぎると軽くてシンプルな高性能と[…]
50レプリカのフルサイズからミニバイクレースを経てデフォルメフルサイズへ! VR46カラーのTZR50……実はヨーロッパで1997年から2012年まで生産されていたイタリアのミナレリ製エンジンで、現地[…]
20年ものロングランは、ライバルに気をとられない孤高を貫く開発があったからこそ! カワサキは1972年、DOHCで900ccと先行する初の量産4気筒のCB750フォアを上回るハイクオリティなZ1を投入[…]
夏場は100℃超えも珍しくないけれど… いまやバイクのエンジンは“水冷”が主流。安定した冷却性能によってエンジンパワーを確実に引き出すだけでなく、排出ガス/燃費/静粛性の面でも水冷の方が空冷より有利な[…]
最新の関連記事(バイク雑学)
オートバイって何語? バイクは二輪車全般を指す? 日本で自動二輪を指す言葉として使われるのは、「オートバイ」「バイク」「モーターサイクル」といったものがあり、少し堅い言い方なら「二輪車」もあるだろうか[…]
【燃料タンク容量考察】大きければ良いってもんではないが、頻繁な給油は面倒だ 当たり前の話ではあるけれど、燃費性能とともに、バイクの航続距離(無給油で連続して走れる距離)に関係してくるのが、燃料タンクの[…]
バイクいじりで手が真っ黒、そんな時どうしてる? バイクいじりにつきものの、手の汚れ。 特に、チェーンのメンテナンスやオイル交換など、油を使った作業となるとタチが悪い。 ニトリル手袋やメカニックグローブ[…]
白バイ警察官になるためのファーストステップ、必要なのは執拗なアピールや根回し!? 警察官になっても、すぐに白バイ警察官になれる訳ではありません。白バイ警察官になるには、まず「白バイ隊員になりたい」と希[…]
シート後部、リヤ両サイドにある白バイの計3つのボックス 白バイのボックスは3つあります。荷物を入れるためのサイドボックス、無線機を入れる無線機ボックスがあり、サイドボックスは車両後部の左右に1つずつ、[…]
最新の関連記事(メカニズム/テクノロジー)
夏場は100℃超えも珍しくないけれど… いまやバイクのエンジンは“水冷”が主流。安定した冷却性能によってエンジンパワーを確実に引き出すだけでなく、排出ガス/燃費/静粛性の面でも水冷の方が空冷より有利な[…]
LEDのメリット「長寿命、省電力、コンパクト化が可能」 バイクやクルマといったモビリティに限らず、家庭で利用する照明器具や信号機といった身近な電気製品まで、光を発する機能部分にはLEDを使うのが当たり[…]
ケーヒン/ショーワ/ニッシン/日立を統合した“日立Astemo(アステモ)”が4月より“Astemo”へ 自動車業界で「100年に一度」と言われる変革期を迎えるなか、キャブレターや電子制御スロットル、[…]
【冒頭解説】ECUをサスペンションに一体化、フロントフォークに自動車高調整を初採用 2021年1月に日立オートモティブシステムズ、ケーヒン、ショーワ、日信工業が経営統合して誕生した日立Astemo(ア[…]
ヤマハ発動機と三菱重工業は、200kgの貨物を搭載可能な中型マルチコプター型無人機(以下、中型無人機)の開発に向けた共同研究を行っていることを発表した。 パワーユニットには、ヤマハが2023年にコンセ[…]
人気記事ランキング(全体)
日本仕様が出れば車名はスーパーフォアになるか ホンダの名車CB400スーパーフォアが生産終了になって今年ではや3年目。入れ替わるようにカワサキから直列4気筒を搭載する「Ninja ZX-4R」が登場し[…]
トレリスフレーム+ユニトラックサスペンションの本格派 カワサキは欧州で、15psを発揮する水冷125cc単気筒エンジンをスチール製トレリスフレームに搭載し、前後17インチホイールを履かせたフルサイズス[…]
125ccクラス 軽さランキングTOP10 原付二種は免許取得のハードルも低く、手軽に楽しめる最高の相棒だ。とくに重要なのは「軽さ」だろう。軽ければ軽いほど、街中での取り回しは楽になるし、タイトなワイ[…]
高級感漂うゴールドカーキのデザイン 「IQOS ILUMA PRIME ゴールドカーキ」は、その名の通り落ち着いたゴールドトーンとカーキを組み合わせた洗練デザインが特徴です。手に取った瞬間に感じられる[…]
PROGRIP専用の信頼接着剤 デイトナ(Daytona)の「グリップボンド PROGRIP 耐振ゲルタイプ専用 12g 93129」は、PROGRIP用に設計された専用接着剤です。容量は12gで、初[…]
最新の投稿記事(全体)
その姿、まるでハンターカブ×ミニトレ?! タイ仕様は新型に切り替わるとともにカラーバリエーション変更&グラフィックが変更された。 一方ベトナム仕様は、従来モデルを標準仕様として併売。この標準モデルはカ[…]
滑りにくさと耐久性を両立したソール設計 アシックスの安全靴「WINJOB CP113」は、油で劣化しにくく耐久性に優れたCPグリップソールを採用。濡れた床や油で汚れた現場でも安定したグリップ性能を発揮[…]
生産累計1億台、60周年の原点モデル 初代スーパーカブはホンダ創業の本田宗一郎氏と藤澤武夫氏が直接開発の先頭に立ったオートバイ。それに続く東南アジアのドリーム、WAVEなどを含む歴代スーパーカブシリー[…]
W230/MEGURO S1 デビュー応援キャンペーン 株式会社カワサキモータースジャパンが、2025年9月1日(月)より、全国のカワサキプラザにおいて「W230」および「MEGURO S1」の新車([…]
デビュー時は2スト125で敵ナシ状態! 1982年のヤマハRZ125が生んだムーブメントは、高速道路へ入れないマイナーな125スポーツだったのを、2ストの水冷化で通勤通学だけでなくレースへ興じる層が加[…]
- 1
- 2