
●文:ライドハイ編集部(根本健) ●写真:藤原らんか Shutterstock(OlegRi)
低速で曲がるとき、思ったより内側へ前輪が切れ込んでいく
小さなターン/ヘアピンコーナー/交差点の右左折など、前輪がイン側へ切れ込もうとして、ハンドルをもってかれそうになることがある。
いつもの愛車/いつもの近所と、ふだんは気にも留めずに曲がれていた箇所で、いきなりこんな目に遭うと、ビックリというか疑心暗鬼の塊に陥って当然だろう。
これはバイクの不具合も考えられるが、低速で前輪が安定しにくくなっている状況に、ライダーのある種の勘違いの感覚と操作をしてしまうところに原因がある場合も少なくないのだ。
まずは前輪の空気圧を疑ってみる
この前輪の切れ込みが、異様にハンドルを重く感じたなら、まずは躊躇せず道端へバイクを止め、降りてフロントタイヤを手の指で押してみよう。規定の空気圧であれば簡単に凹んだりしないはずで、少しでもたわんだ場合は、一番近くのガソリンスタンドまでゆっくり走り、空気圧をチェック。1kPa(kg/cm3)以下なら、そのままの走行はNG。フロントタイヤが凹み過ぎて変形すると、本来のアライメントが機能する直進を保つ復元力や旋回に従って曲がるセルフステア効果も働かないので、危険きわまりない。
タイヤは1ヶ月以上乗らないと20%ほど空気圧は自然に抜けるものの、ここまで減っているのはパンクを疑ったほうがイイ。釘などが刺さっていれば外から見てわかりやすいが、小さな金属片などが食い込んでいるとほぼ目立たない。空気圧を1.7~2.2kPaのそれぞれ指定されているところまで充塡して、タイヤに耳を当てて小さな空気が漏れている音が聞こえないか確認するぐらい、慎重になるべきだ。
曲がろうと思う旋回に、バンク角が深すぎる!?
前輪の空気圧が何でもなかったら、次に考えられるのがライダー側の問題。曲がろうとしている旋回に対し、車体を傾け過ぎている可能性が濃厚だからだ。
バイクは、通常の速度域では後輪の旋回する軌跡の外側を前輪が追随して同心円を描くのが基本原理。この後輪との関係が従順であるほど、ライダーは違和感なく乗れる。
そもそもフロントのアライメントは、フォークを斜めに設定する効果で直進する復元力と、ちょっとでも傾くと曲がりやすく前輪がステア追従する特性とを併せ持つのが基本原理。この前輪の追従性をセルフステアといって、基本原理に逆らわないバランスとなるよう、フロントフォークの傾斜角やブラケットのオフセット量を設定してあるのだ。
ただ、前輪がフラつくまで速度が下がると、このセルフステアの原理は働かなくなる。そこで低速では、ライダーがハンドルを左右へ舵取りする操作でフラつかないようバランスをとっているのはご存じのとおり。
これが切り替わる15~20km/hあたりで、ついライダーがいつもの安定した感覚のまま勘違いしてバイクを寝かせ過ぎると、前輪が倒れ込むように内側へ切れていこうとするのだ。
この予想外の反応に、ライダーは驚いてハンドルを押さえ、“信用ならない不安”を抱くことになる。前回のツーリングでもこんな違和感はまるでなかったのに、ナゼ? と混乱するかも知れない。
が、ライダーの感覚が日によって違ったりするのはよくあること。エッ、昨日乗ったばかりなのに、そんなに簡単に馴染んだ感覚を忘れてしまうなんて…そう思われるのもムリないが、ベテランでも頻繁に起きることで、人間はしょっちゅう変わるモノと思うほかなさそうだ。
ということで、落ち着いて低速のターンを車体を傾け過ぎていないか、ハンドルを押したり引いたりしていないか等々を確かめながら、フツーの走れるバランスへ自分の感覚を戻していこう。
セルフステアをどれだけ妨げているか、確認しておこう!
せっかくの機会なので、ここでセルフステアの機能を妨げやすい左手についておさらいしよう……
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
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