
●文/写真:栗田 晃 ●外部リンク:カーベック
歴史的な価値のあるパーツに使われることが多いマグリコート
ホイールやエンジンカバー、といっても一般的な市販モデルではなく、アフターマーケットパーツやレース用のホイールやカバー類に使われることの多い、マグネシウム合金。
その理由は、鉄はもちろん、アルミニウム合金に対しても比重が3分の2と、軽量化にとって最適な素材だからである。
だが、マグネシウムには酸化しやすい特性があり、再生、中でも再塗装時において大きなネックとなってきた。プライマーやサフェーサーで下地処理をしても、塗膜の下でマグネシウム自体の酸化が進行して、剥離してしまうのだ。
最も強力な防錆能力を求める場合には、電解処理によって強制的に酸化皮膜を形成する技術があるが(アルマイトと同様の原理)、再生用の技術として利用するにはハードルが高すぎる。
パウダーコーティングやガンコートの発売元であるカーベックのディーラー間でも、マグネシウムパーツの再塗装時の悩みが共有されたことから、酸化問題を解決する手段として「マグリコート(Magnesium Re・coat)」サービスがスタートした。
これは、マグネシウム専用の液剤による化学反応によって形成される化成被膜によって、マグネシウムの酸化を防止するというもの。ただ、液剤による化成被膜だけでは長期の耐久性に問題があるため、専用プライマーで安定させた後にウレタン塗装やパウダーコーティングを行う。
これまでになかった再生作業向けの化成処理が各所で評判となったことから、2024年秋より全国5カ所のディーラーでマグリコートの施工作業請負がスタートした。マグネシウムは歴史的な価値のあるパーツに使われることが多い。そうしたパーツの再生を行う際は、マグリコートを活用しよう。
愛知県のBOZU GARAGEの例。マグリコートを行うステンレス水槽は自動車用ホイールの処理を考慮したサイズで設計された。電解処理には電気設備が必要だが、水溶液中で化成被膜を形成するマグリコートの設備構成は比較的シンプルだ。被膜形成後のマグネシウム専用プライマーは焼付乾燥を行う。費用はパーツの種類や状態によって変わるので、各ディーラーに確認しよう。
水道水中の不純物で反応が阻害されないよう、水槽内の水は純水が使用される。化成反応を促進するためヒーターも設置されているが、熱くなるまで加温するわけではない。
マグネシウム専用の液剤で化成処理被膜を形成
ここではBOZU GARAGEのブラストを使用したが、腐食の進行具合を確認するため、古い塗装の剥離はユーザーが行う。化成処理液に浸すと表面から細かい泡が発生し、濃いグレーになったら化成被膜が完成。専用プライマーで保護すれば、上塗り塗装が可能となる。
右の人物はBOZU GARAGE代表の戸苅正吾さん。
マグリコート施工店 ■小樽ラヂエーター工業(北海道) / 昭盛工業製作所(静岡県) / BOZU GARAGE(愛知県) / パウダー塗装.com(高知県) / エスエムワークス(沖縄県)
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。
バイクいじりの専門誌『モトメカニック』のお買い求めはこちら↓
モトメカニックの最新記事
ユーザーからのリクエストで開発! ホイールの鉄粉をスプレーひと吹きで溶解 バイク/クルマを問わず、ディスクブレーキでもドラムブレーキでも発生するブレーキダスト。制動時にブレーキローターやブレーキドラム[…]
燃料キット開発時は現物確認と現物採寸が大前提 キースターでは、原付からオーバー1000ccモデルまで、500車種以上のキャブレターに対応した燃調キットを開発してきました。現在でもコンスタントに新製品を[…]
ガレージで眠っているマシンを引っ張りだそう! 今後の展開も期待されるポテンシャルの高さが魅力 コンストラクターの手によるオリジナルフレームを用いたシングル&ツインレースが流行した1990年代、オーヴァ[…]
赤サビの上から直接塗って黒サビに転換。愛車を守るBAN-ZIのラストロックシステム 【RUSTLOCK(サビ転換下処理剤)サビキラープロ】赤サビの上から直接塗ることで黒サビに変化する転換剤機能と、上塗[…]
熱膨張率の均一化によって様々なアドバンテージがある 2ストローク/4ストロークエンジンを問わず、エンジン性能を向上するためには様々な課題や問題がある。特に大きな課題は、“熱膨張率”に関わる問題だ。 「[…]
最新の関連記事(メンテナンス&レストア)
シュアラスターの「バイク洗車図鑑」 バイクが違えば洗い方も変わる! 車種別の洗車情報をお届けするシュアラスターの「バイク洗車図鑑」 ストリートでもサーキットでも大活躍する高性能4気筒スーパースポーツ・[…]
ユーザーからのリクエストで開発! ホイールの鉄粉をスプレーひと吹きで溶解 バイク/クルマを問わず、ディスクブレーキでもドラムブレーキでも発生するブレーキダスト。制動時にブレーキローターやブレーキドラム[…]
バイクいじりで手が真っ黒、そんな時どうしてる? バイクいじりにつきものの、手の汚れ。 特に、チェーンのメンテナンスやオイル交換など、油を使った作業となるとタチが悪い。 ニトリル手袋やメカニックグローブ[…]
タイヤの内圧規定ってなんだ? 今シーズン、MotoGPクラスでたびたび話題になっているタイヤの「内圧規定」。MotoGPをTV観戦しているファンの方なら、この言葉を耳にしたことがあるでしょう。 ときに[…]
シュアラスターの「バイク洗車図鑑」 バイクが違えば洗い方も変わる! 車種別の洗車情報をお届けするシュアラスターの「バイク洗車図鑑」、今回はホンダCL250を洗車します。 洗車ポイントは“黒い部分をしっ[…]
人気記事ランキング(全体)
2ストGPマシン開発を決断、その僅か9ヶ月後にプロトは走り出した! ホンダは1967年に50cc、125cc、250cc、350cc、そして500ccクラスの5クラスでメーカータイトル全制覇の後、FI[…]
PROUDMEN. グルーミングシートクール 16枚入り×3個セット PROUDMEN.のグルーミングシートクールは、横250×縦200mmの大判サイズと保水力約190%のたっぷり液で1枚で全身を拭け[…]
取り付けから録画までスマートすぎるドライブレコーダー ドライブレコーダーを取り付ける際、ネックになるのが電源確保のための配線作業だ。バイクへの取り付けともなると、専門知識や工具、あるいは高めの工賃が必[…]
3つの冷却プレートで最大-25℃を実現 2025年最新モデルの「ペルチェベスト」は、半導体冷却システムを採用し、背中に冷たい缶ジュースを当てたような感覚をわずか1秒で体感できる画期的なウェアです。小型[…]
二輪史に輝く名機「Z1」 いまだ絶大なる人気を誇る「Z1」こと、1972年に発売された900super4。後世のビッグバイクのベンチマークとなる名機は、いかにして世に出たのか──。 1960年代、カワ[…]
最新の投稿記事(全体)
KOMINE プロテクトフルメッシュジャケット ネオ JK-1623 フルメッシュで残暑厳しい秋口のツーリングでも快適さを保つジャケット。胸部・肩・肘・背中にプロテクターを標準装備し、高い安全性も両立[…]
71カ国で認められた気鋭のバイクブランド ゾンテスは、2003年に中国・広東省で設立された「広東大洋オートバイ科技有限公司」が展開するブランドだ。彼らは総投資額26億人民元、従業員3600名という巨大[…]
ヘルメット専用設計で、手提げ&肩にかけてショルダーにしても快適 ツーリング先でのヘルメットの持ち運びのために、ポケットへ忍ばせておくのに最適な、小さく折りたためるヘルメットトートバッグ。出先での急な買[…]
『鈴鹿8時間耐久ロードレース選手権』を初めて観戦した模様を動画に収録 この動画では、若月さんが鈴鹿サーキットの熱気に包まれながら初めて目の当たりにするロードレースの“速さ”や“迫力”に驚き、感動する姿[…]
暫定税率を廃止するなら代わりにって…… 与野党が合意して、11月からの廃止を目指すことになったガソリン税の暫定税率。 このコラムでも数回取り上げてきましたが、本来のガソリン税28.7円/Lに25.1円[…]
- 1
- 2