
いつも調子よく走っていても、エンジン内部ではさまざまな汚れが発生している。中でも由々しき問題なのが“カーボンスラッジの堆積”だ。そんな汚れを落とすと言われているのが、ガソリン添加型のクリーナー。ここではエンジンの中身を実際に確認しながら、ヤマルーブPEAカーボンクリーナーの効果を検証してみよう。
●文:栗田晃(モトメカニック編集部) ●写真:ミヤシーノ宮下豊史 ●外部リンク:ワイズギア
定期的に使用して燃料系統と燃焼室のコンディションをキープ
空気とガソリンを混合気として燃焼させて動力を得ている内燃機関。混合気が燃焼室内で爆発的に燃える際に、副次的に発生してしまうのが「カーボン」「スラッジ」と呼ばれる汚れ/燃えかすである。その発生源はガソリンだけではなく、エンジンオイルが原因となる場合もある。
ピストンリングの摩耗や張力低下によってクランクケース内のオイルが上がったり、バルブステムシールやバルブガイドの摩耗によってシリンダーヘッドから燃焼室内に下がったオイルも、カーボンとなり堆積するのだ。
それらは即座に悪さをするわけではないが、カーボンは硬い生成物であるため、バルブフェイスとシートリングの間に噛み込むと傷ついて気密性低下を招いたり、シリンダーの摺動面を傷つけてコンプレッション低下の原因となることがある。ピストントップに溜まったカーボンが熱を溜め込み、異常燃焼を引き起こす可能性もある。
こうしたカーボンスラッジの除去に効果があると言われているのが、ポリエーテルアミン=PEAという化学物質を主要成分とした、燃料添加型のカーボンクリーナーである。
酸素原子/炭化水素基/アミノ基から合成されるPEAには、カーボンやオイル汚れを溶解する効果があるとされており、多くの製品がPEAを採用している。元よりPEAは清浄性を強くアピールするハイオクガソリンに含まれている物質なので、効果に間違いはない。
ただ、PEAにも分子構造の違いや配合濃度の違いがあるため、どのクリーナーも性能が同じというわけではない。
そうした前提条件の下、ここではワイズギアの「ヤマルーブPEAカーボンクリーナー」でリアルなクリーニング効果を確かめてみた。実験方法は、クリーナー投与前/投与300km走行後/600km走行後の燃焼室とピストントップの比較検証という、手間はかかるが確実に確認できる手法で行った。
左・ヤマルーブ PEAカーボンクリーナー100ml ●価格:1320円/右・ヤマルーブ PEAカーボンクリーナー200ml ●価格:1870円
左・ヤマルーブ PEAカーボンクリーナー100ml ●価格:1320円/右・ヤマルーブ PEAカーボンクリーナー200ml ●価格:1870円
テストに使用したヤマハWR250Rは2万3000kmを走行しているが、さすがインジェクションかつ高回転高出力型ということもあり、テスト開始時も極端なカーボン堆積は見られなかった。
だが規定量である3%を添加して300km/600kmと走行すると、吸気バルブ周辺やピストントップのカーボンは明らかに減少した。テスト中にガソリンの銘柄や走り方を変えることはなかったので、これは純粋にカーボンクリーナーによる洗浄効果と考えるのが妥当だろう。
一般的に、カーボンスラッジは高温になる排気側より吸気側に堆積しやすく、テスト開始時に吸気バルブ外側のスキッシュエリアに堆積していたカーボンはカチカチに硬かった。しかし、600km走行後はウエスで簡単に拭い取れる程度まで軟化しており、この点でもクリーニング効果の高さを実感できた。
今回は確認しなかったが、ヤマルーブのカーボンクリーナーにはインジェクターに付着したカーボン堆積物を洗浄、除去する能力もあるという。燃焼室での実績を目の当たりにすれば、ガソリンを断続するプランジャーや細かい霧状にするスプレーチップノズルのクリーニングによる霧化の改善や燃焼効率の向上も期待できる。
クリーナーケミカルには、気づかぬうちに進行するエンジンパフォーマンス低下や、トラブルや不調を未然に防ぐ効果がある。パワーアップ系の添加剤と違って派手さはないが、愛車の好調さを維持したいユーザーには定期的な利用を推奨したいケミカルである。
テスト車両は走行2万3000kmのWR250R。タンク容量5Lごとに15cc添加し、1タンク合計33ccを投与
テストに使用したヤマハWR250Rは、公道用トレールモデルとして初採用されたアルミフレームに31馬力を発生するエンジンを搭載して、2007年に発売された。テスト時点の走行距離は2万3000kmで、これまでにシリンダーヘッドを外したことはない。ガソリンタンク容量5Lごとに、ヤマルーブPEAカーボンクリーナー15ccを注入。3ヶ月または3000kmごとの使用が推奨されている。
添加前/300km走行後/600km走行後に燃焼室とピストン上面を確認
ビッグタンクに交換しているため、容量は純正より多い11Lで、付属の計量カップで33ccを添加。ピストン上部だけならスパークプラグ孔からファイバースコープを挿入して見えるが、燃焼室面まで比較検証するためシリンダーヘッドを3回着脱した。スペースはギリギリだが、フレームにエンジンが載った状態でヘッドを着脱できるのは整備性が良い。
走行テストは一般道と高速道路を100kmほど走行、その後林道ツーリングを行った。クリーナー使用中もエンジンパフォーマンスやフィーリングの変化は感じられなかった。
走行テストは一般道と高速道路を100kmほど走行、その後林道ツーリングを行った。クリーナー使用中もエンジンパフォーマンスやフィーリングの変化は感じられなかった。
PEAの効果でカーボンデポジットが明らかに減少。3000kmごとに使用すれば洗浄効果の持続が期待できる
【テスト前】カーボンクリーナー投入前、走行2万3000kmのヘッドとピストン。走行距離の割には燃焼室もヘッドもきれいだが、堆積しているカーボンは硬く、ワイヤーブラシなどの物理的手段でなければ取れない印象。WR250Rはプレミアムガソリン指定なので、ふだんからある程度の洗浄効果はあるはず。
【テスト前】カーボンクリーナー投入前、走行2万3000kmのヘッドとピストン。走行距離の割には燃焼室もヘッドもきれいだが、堆積しているカーボンは硬く、ワイヤーブラシなどの物理的手段でなければ取れない印象。WR250Rはプレミアムガソリン指定なので、ふだんからある程度の洗浄効果はあるはず。
【300km走行後】ガソリン銘柄や走行パターンを変えず、カーボンクリーナーを添加しただけで、ピストントップの吸気側(向かって左)は地肌が見えるようになってきた。吸気バルブフェイスのカーボン汚れも薄くなり、中心部分は素地が確認できる。排気バルブはそもそも高温でカーボンが付着しにくいので変化はない。
【300km走行後】ガソリン銘柄や走行パターンを変えず、カーボンクリーナーを添加しただけで、ピストントップの吸気側(向かって左)は地肌が見えるようになってきた。吸気バルブフェイスのカーボン汚れも薄くなり、中心部分は素地が確認できる。排気バルブはそもそも高温でカーボンが付着しにくいので変化はない。
【600km走行後】ピストントップのカーボンはさらに落ち、バルブリセス部分に堆積していた固形物も7割方除去された。走行距離がもっと少ない頃から定期的に使用すれば、カーボンの堆積自体を減らせるはず。硬いカーボンによる機械的なトラブルを予防できると思えば、製品価格もリーズナブルと言えるだろう。
【600km走行後】ピストントップのカーボンはさらに落ち、バルブリセス部分に堆積していた固形物も7割方除去された。走行距離がもっと少ない頃から定期的に使用すれば、カーボンの堆積自体を減らせるはず。硬いカーボンによる機械的なトラブルを予防できると思えば、製品価格もリーズナブルと言えるだろう。
テスト前、スキッシュエリアのカーボンはカチカチで岩肌を撫でているようだったが、投入後600kmで軽く拭い取れるほど軟化した。分解せず確実なクリーニング効果が得られるのは魅力的だ。
テスト前、スキッシュエリアのカーボンはカチカチで岩肌を撫でているようだったが、投入後600kmで軽く拭い取れるほど軟化した。分解せず確実なクリーニング効果が得られるのは魅力的だ。
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