インディアンモーターサイクルのミッドクルーザーであるスカウトが全面刷新。しかも、いきなり5種類ものバリエーションを展開してきた。その中でももっともスポーティな101スカウトをワインディングに誘い出してみた。
●文:小川勤 ●写真:長谷川徹 ●外部リンク:インディアンモーターサイクル
クルーザーにスポーティなエンジンを搭載するのがインディアン流
なんてアグレッシブなんだろう。インディアンモーターサイクル(以下、インディアン)の101スカウトに乗った瞬間にそう思った。この車体にスポーティなVツインエンジンを搭載するのはインディアンだけだろう。2014年の先代スカウトのデビュー時も同じように感じたことを思い出す。もちろんゆっくりクルージングすることもできる。しかし、のんびり走っていると、常に101スカウトが「エンジンを回さなくてもいいのか? お前はエンジンを回せないのか?」と急かしてくる。
「いやいやだってクルーザーじゃん」と返答すると「あ、そんなもんなのね」と鼻で笑われたような気がするのだ。なんだかクセの強い、面白いバイクだなぁと思う。「わかった。じゃ回すよ」とスロットルを大きく開けると101スカウトは「待ってました!」とばかりに加速。シフトアップをしてもその加速は揺るがない。「やればできるじゃん」101スカウトはようやく満足げな表情を見せるのだ。
101スカウトに乗っているとアメリカで開催されている「キング・オブ・ザ・バガーズ」や「スーパー・フーリガン」のレースが頭に浮かぶ。「キング・オブ・ザ・バガーズ」はインディアンがチャレンジャーでハーレーダビッドソンとガチンコ勝負しているバガーレース。「スーパー・フーリガン」はFTR1200で参戦しているネイキッドのレースだ。
どちらもフルカウルの窮屈なポジションに身を置く常識的なレーススタイルと異なり、大胆で、自由で、カッコ良さとアメリカらしさを追求。インディンはこういったアメリカンスポーツに積極的で、101スカウトもそんなインディアンらしさの片鱗に触れることができるのだ。101スカウトのスロットルを大きく開けると「スポーツライディングはもっと自由でいいんだ。もっと気軽に楽しめばいいんだ」と言われているような気がしてくる。
最上級グレードのスカウトを、ラグジュアリーではなくスポーティにするインディアン
今年、スカウトシリーズは10年ぶりにフルモデルチェンジとなった。「101スカウト」の他に、「スカウトクラシック」「スカウトボバー」「スポーツスカウト」「スーパースカウト」があり、全部で5つのバリエーションを用意する。ちなみに101の車名の由来は1920年代にデビューした初代スカウトの最高速が101マイル(176km/h)だったからだ。
DOHC4バルブの水冷Vツインエンジンは、「スピードプラス1250」と呼ばれ、旧モデルからボアを5mm拡大することで、よりショートストローク化。排気量は1133ccから1250ccに拡大している。圧縮比は10.7対1から12.5対1に上げられ、スロットルボディの径も3mm 拡大。レブリミットも旧モデルから200rpmアップした8500rpmに設定し、パワーは17%、トルクは12%アップしている。パワーは101スカウトが特別な燃調や点火により111hpを発揮、その他のモデルは105hpとなっている。この進化を見てもそれはクルーザーのそれでなく、まるでスポーツバイクの原稿を書いているような気分になる。
フレームも大胆な変更が行われており、旧モデルのアルミからスチール製(シートレール部はアルミ)に変更。これは性能よりもカスタムのしやすさを優先した結果。全車、キャスター角やオフセット量などは共通とのことだが、これは超低重心が生み出す安定感ゆえの車体なのだろう。
また、電子制御も充実。モードは「レイン」「スタンダード」「スポーツ」の3パターンが用意され、冒頭でのフィーリングはもちろん「スポーツ」時のもの。メーターはタッチパネルで簡単に必要な情報を呼び出せるのも嬉しい。 ちなみに上級グレードとなる101スカウトは、前後にアジャスト機能付きのサスペンションを装備。この手のバイクは、スタイルやラグジュアリーさを優先することが多いが、スポーツ性を優先するのがとてもインディアンらしい。
バンク角はないが、ワインディングの超安定コーナリングが楽しい
「カリカリカリカリッ…」。峠に入るとステップのバンクセンサーがなくなってしまわないか心配になる。バンク角はない。でも、101スカウトのコーナリングはとても楽しいのだ。もちろんモードは「スポーツ」。「レイン」「スタンダード」はエンジン特性が穏やかになるが、路面やタイヤのコンディションがよければ「スポーツ」一択。ダイレクトなパワー感が101スカウトにマッチする。
直線的にコーナーに進入し、素早く向きを変え旋回時間をなるべく短くする走りでコーナーを繋いでいく。前後サスペンションのストロークは短いものの路面追従性は高く、タイヤのグリップもわかりやすい。
ポジションは足を前に投げ出すクルーザースタイル。身長165cmの僕にこのポジションは大柄。ステップもハンドルも遠めだ。ただ、コーナリングは気持ちが良い。エンジンはトルクの立ち上がる中低速からスロットルを大きく開けると、リヤタイヤがトラクションを増やすわかりやすい挙動を示す。トルクフルだがスムーズで、さらにインディアンらしい鼓動感も教えてくれる。「た、楽しい…」そのバイクとのコミュニケーションはスポーツバイクに近い。
だが、101スカウトは「乗りやすいからいいよ」「楽しいからいいよ」と誰にでも手放しでオススメできるバイクではない。前途したようにバイクがライダーにきちんと詰め寄ってくるし、プレッシャーをかけてくるからだ。101スカウトはクルーザーとしては尖っているから、もっと気軽に楽しみたいなら、スカウトクラシック、スカウトボバー、スポーツスカウト、スーパースカウトからチョイスした方が良いだろう。ただし、シリーズのフラッグシップに乗っている優越感は101スカウトだけのもの。悩ましい。
ちなみに、先日行われたジャパンプレミアムでは6機種目の用意もあるとのこと。自身のキャリアやライフスタイルにどのスカウトを当てはめるか?まずはここから悩めるのも楽しみの一つだ。NEWスカウトシリーズの本気の作り込みと走り、さらに戦略的なバリエーションを見ると、世界中でインディアンがミッドレンジクルーザーをどのようにリードしていくのかとても楽しみになった。
膨大なラインナップから好みのスカウトを探し出そう!
スカウトシリーズは「101スカウト」「スーパースカウト」「スポーツスカウト」「スカウトクラシック」「スカウトボバー」の5機種を用意。さらに「スカウトクラシック」「スカウトボバー」「スポーツスカウト」の3機種においては「スタンダード」「リミテッド」「リミテッド+テック」という3グレードも用意する。「101スカウト」「スーパースカウト」は「リミテッド+テック」のみのラインナップだ。
「スタンダード」はABS、LEDライト、アナログメータ、ブラックメタリックペイントを装備。
「リミテッド」は「スタンダード」にプラスしてクルーズコントロール、ライドモード、トラクションコントロール、USBポート、リミテッドエンブレム、単色ペイントオプションを装備。
「リミテッド+テック」は「リミテッド」にプラスして4インチデジタルメーター、キーレスイグニッション、ライドコマンド(Bluetoothで着信、音楽鑑賞、走行履歴の記録など)、単色プレミアムペイントオプションを装備。
他にも純正アクセサリーは100種類以上を用意。注目すべきはポジション用のパーツで、ハンドル、ハンドルライザー、シート、ステップなどを30種類以上揃えている。僕のように車体が少し大柄に感じる場合は、こういったパーツを積極的に活用すれば問題はすぐにクリアできるはずだ。
様々な風景や光に溶け込む101スカウトを見てみよう!
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