油圧式とワイヤー式、一見してわかるのは上の画像のようなクラッチレバーの構造の違いだ。なんとなく油圧式の方が高価な感じがしなくもないけれど……。排気量やバイクのジャンルで使い分けしているのか? 本当のトコロ、どっちの方がエラいの?
クラッチ本体の構造は同じだが……
クラッチは、(エンジンがかかっている時に)ずっと回転し続けているクランクシャフトと、停止する時やシフトチェンジを行う際にトランスミッションを切り離したり、発進して走っている時に繋げたりと、パワーを断続するための装置。
普段はクラッチスプリングが突っ張る力(張力)によってクラッチは繋がっており、クラッチレバーを握ることでクラッチスプリングを縮めてクラッチが切れる仕組みだ。詳しい構造は少々難解なので割愛するが、油圧式クラッチもワイヤー式クラッチも、パワーを断続するクラッチ本体の構造自体はほとんど同じだ。
それでは何が違うのかというと、クラッチスプリングを押し縮める方法。ワイヤー式はボール式やネジ式などいくつか種類があるが、基本的にはテコの原理を用いてクラッチスプリングを押し締めている。
対する油圧式は、ザックリいえば油圧式ディスクブレーキが油圧でキャリパーのピストンを動かすのと同様に、クラッチレリーズのピストンでクラッチスプリングを押し締めているのだ。
二輪で世界初の油圧式クラッチを採用
メリットが多い油圧式が主流……というワケではない不思議
昔からあるワイヤー式のクラッチは、ワイヤー注油などのメンテナンスが必要で、ワイヤーが摩耗したり劣化したら交換しなければならない。またクラッチ本体のクラッチ板やフリクション板が摩耗してきたら、随時調整を行う必要がある。
さらに大パワー車の場合、クラッチが滑らないように強力なクラッチスプリングを用いるため、クラッチ操作が重くなるデメリットもある。
ただし完全にクラッチレバーを握り切った状態だと、ワイヤーの摩擦抵抗があるためレバーの反発力が小さく、かえってレバーを保持する力が少なくて済む(軽く感じる)、という効果もある。
対する後発の油圧式クラッチは、クラッチマスターシリンダーとクラッチレリーズのシリンダー径の組み合わせによって、軽い力でクラッチを操作できるのがメリット。さらにクラッチ板やフリクション板が摩耗しても自動的に調整され、ワイヤー注油も必要ないので、基本的にメンテナンスフリー。さらにワイヤー式だとワイヤーの取り回し方で操作が重くなったり、半クラッチのフィーリング等に変化がでるが、油圧式は油圧パイプの取り回しに自由度があるので操作の重さやフィーリングに影響が無い。
これはカウリングを装備したハンドル周りや、エンジン周辺のスペースが狭いバイクにも有効だ。ただし、どんな状態でもほぼ変化がないので、クラッチを握り切って保持しているとずっと反発力がある(重く感じる)のも事実だ。
……と、メリットを掲げると油圧式の方が優勢に感じるが、現行のミドルクラス以上のバイクを見渡すと、必ずしも油圧式が主流というワケではない。これはコストの関係もあるだろうが(油圧式の方が構成部品が多い)、たとえば最新のスーパースポーツ系はどちらかというとワイヤー式が多く感じるが、これはクイックシフターの装備や(走行中にクラッチ操作が必要ない)、アシスト&スリッパークラッチの装備(大パワー車でもアシスト機構によりクラッチ操作力が軽い)が影響しているのかもしれない。
とはいえスポーツ性の高さで定評あるドゥカティは、現行モデルのほとんどが油圧式クラッチだったりする。ちなみにMotoGPマシンは油圧式とワイヤー式が混在している。
というワケで油圧式とワイヤー式、現時点ではバイクのジャンルなどによる「使い分け」の法則が見つからず、単純に優劣をつけるのも難しいようだ。
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