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本格的なアドベンチャーやオフロードモデルと一線を画す「スクランブラー」。尖がったイメージではなく、どちらかというと穏やかな佇まいなのに、なぜスクランブラーの名が付いたのだろう? 現在は人気のカテゴリーだけど、けっこう長く姿を潜めていたのはなぜ?
実は長らく姿を消していたスクランブラー
ドゥカティやトライアンフなど欧州メーカーからリリースされ、人気の高い「スクランブラー」のカテゴリー。近年はブランドを復活したメーカーやアジア圏の中小排気量メーカーもスクランブラーをラインナップしている。
このスクランブラーという呼称の登場は、じつは’60年代初頭まで遡る。当時のモトクロスやダートトラック等の未舗装路で行なわれるレースが、横一線に並んで一斉にスタートすることから「緊急発進=スクランブル」の様子に似ており、“スクランブルレース”の俗称を得たところから始まったといわれる(このスタート方式は現在にもつながる)。
そして当時はまだ本格的なオフロード車やモトクロッサーが存在していなかったため、オンロードスポーツ車に最低限の改造(アップマフラーとダート用のタイヤ程度)を施してレースを楽しんでいた。そんなバイクをスクランブラーと呼んだのだ。
ところが、そんなスクランブラーの形態が、当時の日本にもマッチした。’60年代半ばの日本は道路の舗装率も低く、街中や幹線道路ですら未舗装路が多かった。そのため純粋なロードスポーツ車よりも、むしろスクランブラーの方が実用性やスポーツ性が高かったともいえる。
ホンダの当時のカタログにも「ストリートスクランブラー」という文言があり、高速走行からラフロードまで路面を選ばず力強く走ることを主張していた。また当時アメリカで始まったヒッピーなどの文化も日本に波及し、旧来の価値観から飛び出す若者たちにもスクランブラーのスタイルが大いに受けた。
しかし、’70年代中頃からオフロード性能を本格的に追求した「トレール車」が台頭したことで、ほどなくスクランブラーは姿を消してしまった。じつは近年復活するまで、スクランブラーはじつに40年近くも空白のカテゴリーだったのだ。
1970年代、ホンダはスクランブラーをフルラインナップ!
1970年のホンダ・スクランブラー「CLシリーズ」の総合カタログの表紙。バブルシールドのヘルメットにスエードっぽいジャケット、ストライプのパンツなど、明らかにバイクウエアではないスタイルが、当時のスクランブラーの立ち位置や文化を表している。
ヘビー級の輸出モデル
カワサキのW2TT(画像は1968年の初期型)。カワサキ初の大排気量車W1から発展した輸出モデルのW2をベースに作られたスクランブラー。680台ほどしか生産されなかった希少車で、日本国内では販売されなかった。
復活、再燃したスクランブラー人気
1980年代に入る前にほとんど姿を消したスクランブラーだが、ロードスポーツ車をベースにアップマフラーやブロックタイヤを履かせるカスタムは、一部のマニアやコンストラクターの間で行われていたが、かなりマイナーな存在だった。
しかしドゥカティが2015年に、新たなバイクライフや世界観で打ち出した、その名も「スクランブラー」の登場で、一気に息を吹き返した。
アップライトで軽快なスタイルや、実際には舗装路を走らなかったとしても「どこでも行けそうな」、走りのシーンを限定しないスクランブラーの自由なイメージが、いまの時代や世情に合っているのかもしれない。
ドゥカティのスクランブラーは、昔も今も大人気!
ドゥカティが新たな世界観で新生スクランブラー・シリーズを世に出したのが2015年。遡ること40年余り、1962年に最初のスクランブラーが登場し(250モデル)、1970年代初頭まで排気量も125、250、350、450とラインナップし、アメリカをはじめ世界中で大ヒットした(画像は1969年のスクランブラー450)。
英国スクランブラーの元祖は本格派!
トライアンフはモダンクラシックの2気筒シリーズで、900ccのストリートスクランブラーと、1200ccのスクランブラー1200をラインナップするが(画像はスクランブラー1200XE)、その源流は1960年代初頭に登場したTS20 カブ・スクランブラーだ(画像は1963年モデル)。人気の単気筒200ccのロードモデルT20をベースに多くの英国人ライダーがスクランブルレースに参戦し、その人気に応えてTS20を発売した。
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