
2019年暮れに惜しまれつつもこの世を去った昭和銀幕の大スター・梅宮辰夫さん。東映ニューフェイスとして銀幕デビューを果たして以降は、アクション映画や『仁義なき戦い』をはじめとする任侠映画にも数多く出演。晩年はテレビのバラエティ番組でも独特のキャラクターでお馴染みの存在でした。そんな梅宮さんが1960年代後半から1970年代初頭にかけて主演を務めていたアクション映画『不良番長』シリーズをご存知でしょうか?
●文:モーサイ編集部(土山亮) ●写真:東映ビデオ 八重洲出版
『不良番長』は、シリーズを通して当時のバイクが大暴れするアクション映画!
記念すべき第1作目は、東映が1968年に10月に公開した『不良番長』。以降は翌1969年に公開された第2作目『不良番長 猪の鹿お蝶』から、シリーズ最終作となる1972年の『不良番長 骨までしゃぶれ』まで、わずか4年間でシリーズ16作が製作されたという人気ぶり。
1年に3〜5作が公開されるという今では信じられないようなペースですが、当時の映画公開情報を確認してみると、お正月に合わせて公開されたこともあったようで、人気スターが主演する娯楽映画として当時ではかなり人気があったということでしょうね。
そんな『不良番長』シリーズですが、全作品ではないものの、現在ではネット配信サービス「Amazonプライム」を使えば気軽に見ることができます!(筆者も改めて視聴してしまいました)──というわけで、バイク好き目線で作品に登場する各車について紹介します。
シリーズ第1作『不良番長』:CB450K1/CB72/AC50などが登場
1968年公開の『不良番長』。これが以降に続く不良番長シリーズのすべての始まりです。新宿を根城にする愚連隊「カポネ団」を率いる神坂を演じるのが、“辰兄ぃ”こと梅宮辰夫。バイクに乗って我が物顔で新宿を徘徊しながら、女の子にちょっかいを出したり、セコイ方法で小銭を稼いだり…。愚連隊とは言いますが、実際には街の小悪党といった雰囲気。
神坂の周囲には彼を慕う仲間たちがいて、彼らもバイク乗りでいつも一緒に悪さをしています。そんなカポネ団、大金を稼ぐためにせっせとシノギに精を出すのですが、いつしかヤクザ組織との大規模な抗争に発展してしまう…と、不良番長シリーズは全作このパターンで進行します(笑)。
さて、この『不良番長』のオープニングは湘南がロケ地。国道134号から江ノ島へ向かう江ノ島弁天橋や、湘南のビーチを爆走するシーンが楽しめます。辰兄ぃ演じる神坂の愛車はホンダCB450K1ですが、大排気量車(当時の)はこのK1だけで、仲間たちはホンダCB72やスズキ スクランブラーAC50などを乗り回しています。
【ホンダCB450(K1)】不良番長シリーズ初期では、番長こと神坂の愛機としてたびたび登場。4作目以降では当時のフラッグシップであるCB750FOUR(K0)に変わり、その後K2へ。シリーズ後期ではスズキGT750が番長の愛機となります。
【スズキ スクランブラーAC50】カポネ団の個性豊かな仲間たちが乗り回しているのがコレ。軽量コンパクトな車体と、元気のいいエンジンを生かして、アクションシーンでは大活躍! AC50がここまで大暴れする映画は他にないかもしれません(笑)。
映画中盤では、カポネ団が再び湘南のビーチを疾走するシーンがあるのですが、CB72に乗っていたはずの谷隼人のバイクが突然古めかしいヤマハYD2に変わり、そのまま海に入っていってしまったり、ラストの壮大なバイクアクションシーンでは、辰兄ぃのバイクがいつのまにかC92に変わって爆発炎上してしまったり…。古いアクション映画ではお約束の車両吹き替え(?)もありますが、大半のシーンでは辰兄ぃ含めて出演俳優全員が自分でバイクを運転しているのは、バイク好きにとってはグッと来るポイントでありましょう。
なお、上のパッケージ版の写真では、辰兄ぃと谷隼人が陸王と思しき車両にまたがっていますが、作品内には一度も出てきませんのでご注意ください(笑)。
シリーズ第7作『不良番長 一攫千金』:CB750FOUR(K0)/DT-1/Z50Aなどが登場
1970年公開のシリーズ第7作『不良番長 一攫千金』。辰兄ぃ演じる神坂が率いるカポネ団は、またしてもセコイ金稼ぎに没頭。その最中でまたしてもヤクザ組織との大抗争事件へと発展していきます……
※本記事は2021年6月16日公開記事を再編集したものです。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
モーサイの最新記事
房総半島の意外な魅力「素掘りトンネル」 東京から小一時間で行けるのに意外と秘境感あふれる千葉・房総半島。ここには味わい深い素掘りのトンネルが多数存在する。そんな異次元空間を求めて、半日だけショートツー[…]
量産車とは異なる無骨さを持ったカワサキ Z750 turbo 【1981】 洗練されたスタイルで後に登場した量産車とは異なり、武骨な雰囲気の外装が目を引くカワサキのプロトタイプは、1981年の時点では[…]
一回の違反で免許取消になる違反 交通違反が点数制度となっているのは、よく知られている。交通違反や交通事故に対して一定の基礎点数が設定されており、3年間の累積に応じて免許停止や取消などの処分が課せられる[…]
インカムが使えない状況は突然やって来る!ハンドサインは現代でも有効 走行中は基本的に1人きりになるバイク。たとえ複数人でのマスツーリングだとしても、運転中は他のライダーと会話ができないため、何か伝えた[…]
ヤマハ RZV500R「2ストV4エンジン搭載で衝撃のデビューを果たしたYZR500レプリカモデル」 ライトウエイトピュアスポーツからレーサーレプリカへの橋渡しであり、起点とも言えたヤマハ RZ250[…]
最新の関連記事(バイク雑学)
クルマの世界では「並列」表記はほぼ見かけない カタログやメーカーwebサイトでバイクのスペックを眺めていると、エンジン種類や形式の表記で「直列」や「並列」という文字を見かける。いずれもエンジンブロック[…]
実燃費の計測でおなじみだった「満タン法」だが…… エンジンを使った乗り物における経済性を示す指標のひとつが燃費(燃料消費率)だ。 「km/L」という単位は、「1リットルの燃料で何キロメートル走行できる[…]
ボクサー誕生、最強バイクとして世界中でコピー BMWといえば2輪メーカーとしてスーパーバイクS1000系からボクサーのRシリーズなど、スポーツバイクで世界トップに位置づけられるメーカー。 そのBMWが[…]
日本のハイオクは海外ではレギュラー!? オートバイに限らずクルマでも輸入車はほぼすべてハイオク指定。世界に誇る高性能な日本車は、基本的にレギュラーガソリンの給油で事足りる。 そういうところが日本の技術[…]
「緑のおじさん」こと「駐車監視員」の概要 緑のおじさんは、正式には「駐車監視員」と言い、警察から業務委託を受け、駐車違反車両の取り締まり業務に当たる人を指す。 緑のおじさんと呼ばれているものの、18歳[…]
最新の関連記事(タレント)
モデル/タレントのダレノガレ明美さんが、ホンダを代表するビッグネイキッドとして長らく愛され続けたCB1300のラストモデル「CB1300スーパーフォアSPファイナルエディション」のオーナーになったこと[…]
富山県で靴を磨いていたときのこと。「君、面白いことしてるねー」と声をかけてくれたのはロードバイクに乗ったとあるおじいさんでした。 「こんにちは! 今このバイクで日本一周しながら靴磨きしているんです。良[…]
故郷・北海道から1週間をかける“大人の同窓会” テレビ/映画/舞台への出演のほか、音楽シーンなどマルチに活躍する俳優/ミュージシャン・武田真治さん。芸能界きってのバイク好きとして知られ、これまで『ウィ[…]
大ブームだった50ccスクーターのCMを振り返る 今から30〜40年も昔、1980年代中盤から1990年代前半のいわゆるバブル経済期には、バイクの売り上げも絶好調でした。 中でも50ccスクーターは、[…]
バイクブームを彩ったCMとアイドルたち 昭和から平成にかけて巻き起こった一大バイクブーム。ブームには1970年代の第一次、1980年代から1990年代前半の第二次ブームがありますが、これらの時期に顕著[…]
人気記事ランキング(全体)
使わないのは「どうせ利かない」もしくは「踏んでもよくわからない」…… リヤブレーキをかけているライダーは、驚くほど少ない。 ブレーキペダルを踏んでも利いているかわからない、すぐABS(アンチロック)が[…]
振動の低減って言われるけど、何の振動? ハンドルバーの端っこに付いていいて、黒く塗られていたりメッキ処理がされていたりする部品がある。主に鉄でできている錘(おもり)で、その名もハンドルバーウエイト。4[…]
足着きがいい! クルーザーは上半身が直立したライディングポジションのものが主流で、シート高は700mmを切るケースも。アドベンチャーモデルでは片足ツンツンでも、クルーザーなら両足がカカトまでベタ付きと[…]
ホンダ新型「CB400」 偉い人も“公認”済み ホンダ2輪の総責任者である二輪・パワープロダクツ事業本部長が、ホンダ新ヨンヒャクの存在をすでに認めている。発言があったのは、2024年7月2日にホンダが[…]
一回の違反で免許取消になる違反 交通違反が点数制度となっているのは、よく知られている。交通違反や交通事故に対して一定の基礎点数が設定されており、3年間の累積に応じて免許停止や取消などの処分が課せられる[…]
最新の投稿記事(全体)
片手で食べられるハンバーガーはバイク乗りにおすすめ いよいよ始まるゴールデンウィーク。気候も暖かくなり、梅雨や猛暑を迎える前のこの時期はツーリングにうってつけだ。 ちょっとバイクで遠出しようか…そんな[…]
1位:スズキ『MotoGP復帰』&『850ccで復活』の可能性あり?! スズキを一躍、世界的メーカーに押し上げたカリスマ経営者、鈴木修氏が94歳で死去し騒然となったのは、2024年12月27日のこと。[…]
1105点の応募から8点の入賞作品を選出 株式会社モリタホールディングスは、このたび「第20回 未来の消防車アイデアコンテスト」を実施、受賞作品が決定となりました。 全国の小学生から集まった、1105[…]
「ETC専用化等のロードマップ」の現状 2020年に国土交通省が発表した「ETC専用化等のロードマップ」。その名の通り、高速道路の料金所をETC専用化にするための計画書だ。これによると、ETC専用化は[…]
一大ブームが巻き起こった1986年 滑走路で戦闘機と加速競争する姿、美人教官とのタンデム、苦悩を抱えて丘の上に佇む夕暮れ──。数々の印象的なシーンに初代ニンジャ=GPZ900Rがいた。 1986年に公[…]