
●文:文:モーサイ編集部(モリバイク 中牟田歩実)
バイクで“酔った”という話はあまり聞かない!?
車だけでなく、あらゆる乗り物の乗車中に起こりえる“車酔い”問題。車に乗っている最中に酔ってしまったという話はよく聞きますが、バイクに乗って“酔った”という話はあまり聞きません。
「車と比べてバイクの方が酔いにくい」という話も耳にしますが、実際のところはどうなのでしょうか。また、タンデムシートに乗っているパッセンジャー(同乗者)の場合はどうなるのかも気になるところです。
そもそも“車酔い”はどういう仕組みで起きるのか
めまいや吐き気など、様々な症状が発生する車酔いは、そもそもどのようなメカニズムで起こるのかを見ていきましょう。
車酔いは、目や耳などの感覚器官から受け取った情報と、脳の情報処理能力のズレによって生じる自律神経の混乱で、「動揺病/加速度病」とも呼ばれています。車/バイクの乗車中だけでなく、船/飛行機/テーマパークのアトラクションに乗っていても起こりえます。
通常、耳の中にある三半規管/耳石器という器官で捉えられた体の位置/傾き/揺れなどの情報は脳へと送られます。ところが、激しい揺れなどを引き起こす乗り物に乗ると、感覚器官が得る情報が多過ぎるため、送られてくる情報の処理が追いつかなくなります。すると自律神経の乱れが生じ、頭痛や吐き気などの症状が現れるのです。
耳の中には“三半規管”と“耳石器”と呼ばれる器官があり、捉えられた体の位置/傾き/揺れがそこから脳へと送られます。
軽度な症状であれば冷や汗やめまい程度の症状で済みますが、症状が重くなると嘔吐中枢が刺激され、辛い吐き気を引き起こすこともあります。
ちなみに、似たような症状に“ゲーム酔い”がありますが、これはテレビに映し出される3D映像を脳が動いているように認知するものの、実際感覚器官は揺れ/傾き/加速を検知しないことによる感覚のズレによって、脳が混乱するためだと言われています。
バイクが車より酔いにくい理由
車よりも揺れや振動が多そうなバイクですが、実は車と比べると酔いにくい乗り物だと言えます。なぜなら次の理由があるからです。
- 視線を行き先に向ける
- コーナリング中の慣性の影響を受けにくい
- 密室空間特有の空気のよどみや匂いがない
進行方向に向かって視線を向けることができれば、走行中の揺れやコーナリングの慣性などの情報が入ってきても、脳の認識が遅れることはありません。
これは車を運転している人にも同じことが言えますが、密室である車とは異なり、剥き出しで乗車するバイクの方が視界を広く取りやすいため、バイクの方が酔いにくいと言えるでしょう。
また、コーナリング中に車体を傾けるバイクは、車よりも慣性の影響を受けにくいのも酔いにくい理由のひとつだと言えます。
さらに、車だと車内の空気のよどみや匂いの影響がありますが、バイクの乗車中は常に外気にさられされているため、匂いの影響もほとんど受けません。
こうしたことから、バイクの方が車よりも酔いにくい乗り物だと言えます。
バイクは車体とライダーの体を傾けて曲がるために、慣性の影響を受けにくく、また基本的に進行方向に視線を向けているため、脳の認識が遅れることもありません。
バイクを降りてから気分が悪くなる人もいる!?
ここまで、バイクは酔いにくい乗り物と解説しましたが、もちろんバイクに乗っていても車酔いをする人はいます。また、バイクに乗っている最中に気分が悪くなる人もいれば、バイクを降りてから気分が悪くなる人もいるようです。
これは、長時間傾きや揺れの情報を受け取り続けた脳が、いつの間にかその状態に慣れてしまい、バイクを降りても、脳がいつまでもバイクに乗っていると錯覚することから起こる酔いのこと。バイクから降りても頭がコーナーを走っているように、右へ左へふらふらと傾いているような感覚に陥ります……
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
モーサイの最新記事
房総半島の意外な魅力「素掘りトンネル」 東京から小一時間で行けるのに意外と秘境感あふれる千葉・房総半島。ここには味わい深い素掘りのトンネルが多数存在する。そんな異次元空間を求めて、半日だけショートツー[…]
量産車とは異なる無骨さを持ったカワサキ Z750 turbo 【1981】 洗練されたスタイルで後に登場した量産車とは異なり、武骨な雰囲気の外装が目を引くカワサキのプロトタイプは、1981年の時点では[…]
一回の違反で免許取消になる違反 交通違反が点数制度となっているのは、よく知られている。交通違反や交通事故に対して一定の基礎点数が設定されており、3年間の累積に応じて免許停止や取消などの処分が課せられる[…]
インカムが使えない状況は突然やって来る!ハンドサインは現代でも有効 走行中は基本的に1人きりになるバイク。たとえ複数人でのマスツーリングだとしても、運転中は他のライダーと会話ができないため、何か伝えた[…]
ヤマハ RZV500R「2ストV4エンジン搭載で衝撃のデビューを果たしたYZR500レプリカモデル」 ライトウエイトピュアスポーツからレーサーレプリカへの橋渡しであり、起点とも言えたヤマハ RZ250[…]
最新の関連記事(バイク雑学)
クルマの世界では「並列」表記はほぼ見かけない カタログやメーカーwebサイトでバイクのスペックを眺めていると、エンジン種類や形式の表記で「直列」や「並列」という文字を見かける。いずれもエンジンブロック[…]
実燃費の計測でおなじみだった「満タン法」だが…… エンジンを使った乗り物における経済性を示す指標のひとつが燃費(燃料消費率)だ。 「km/L」という単位は、「1リットルの燃料で何キロメートル走行できる[…]
ボクサー誕生、最強バイクとして世界中でコピー BMWといえば2輪メーカーとしてスーパーバイクS1000系からボクサーのRシリーズなど、スポーツバイクで世界トップに位置づけられるメーカー。 そのBMWが[…]
日本のハイオクは海外ではレギュラー!? オートバイに限らずクルマでも輸入車はほぼすべてハイオク指定。世界に誇る高性能な日本車は、基本的にレギュラーガソリンの給油で事足りる。 そういうところが日本の技術[…]
「緑のおじさん」こと「駐車監視員」の概要 緑のおじさんは、正式には「駐車監視員」と言い、警察から業務委託を受け、駐車違反車両の取り締まり業務に当たる人を指す。 緑のおじさんと呼ばれているものの、18歳[…]
人気記事ランキング(全体)
使わないのは「どうせ利かない」もしくは「踏んでもよくわからない」…… リヤブレーキをかけているライダーは、驚くほど少ない。 ブレーキペダルを踏んでも利いているかわからない、すぐABS(アンチロック)が[…]
振動の低減って言われるけど、何の振動? ハンドルバーの端っこに付いていいて、黒く塗られていたりメッキ処理がされていたりする部品がある。主に鉄でできている錘(おもり)で、その名もハンドルバーウエイト。4[…]
足着きがいい! クルーザーは上半身が直立したライディングポジションのものが主流で、シート高は700mmを切るケースも。アドベンチャーモデルでは片足ツンツンでも、クルーザーなら両足がカカトまでベタ付きと[…]
ホンダ新型「CB400」 偉い人も“公認”済み ホンダ2輪の総責任者である二輪・パワープロダクツ事業本部長が、ホンダ新ヨンヒャクの存在をすでに認めている。発言があったのは、2024年7月2日にホンダが[…]
一回の違反で免許取消になる違反 交通違反が点数制度となっているのは、よく知られている。交通違反や交通事故に対して一定の基礎点数が設定されており、3年間の累積に応じて免許停止や取消などの処分が課せられる[…]
最新の投稿記事(全体)
1位:スズキ『MotoGP復帰』&『850ccで復活』の可能性あり?! スズキを一躍、世界的メーカーに押し上げたカリスマ経営者、鈴木修氏が94歳で死去し騒然となったのは、2024年12月27日のこと。[…]
1105点の応募から8点の入賞作品を選出 株式会社モリタホールディングスは、このたび「第20回 未来の消防車アイデアコンテスト」を実施、受賞作品が決定となりました。 全国の小学生から集まった、1105[…]
「ETC専用化等のロードマップ」の現状 2020年に国土交通省が発表した「ETC専用化等のロードマップ」。その名の通り、高速道路の料金所をETC専用化にするための計画書だ。これによると、ETC専用化は[…]
一大ブームが巻き起こった1986年 滑走路で戦闘機と加速競争する姿、美人教官とのタンデム、苦悩を抱えて丘の上に佇む夕暮れ──。数々の印象的なシーンに初代ニンジャ=GPZ900Rがいた。 1986年に公[…]
房総半島の意外な魅力「素掘りトンネル」 東京から小一時間で行けるのに意外と秘境感あふれる千葉・房総半島。ここには味わい深い素掘りのトンネルが多数存在する。そんな異次元空間を求めて、半日だけショートツー[…]
- 1
- 2