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現行ラインナップとして今はなくても、あの頃の憧れや、もう一度乗ってみたいという思いを叶えてくれる絶版車。数ある絶版車オフロードマシンの中から、ヤマハが誇るマウンテントレール「セロー250」を紹介する。
●文:ゴーライド編集部(青木タカオ) ●写真:栗田晃 ●外部リンク:レッドバロン
モデルチェンジでフルスケールへ。’08年式はインジェクション元年
ひとつの機能に精鋭化するのではなく、多用途に使える。日常に溶け込むやさしさやとっつきやすいキャラクターを持ちながら、難所も2輪2足で走破できる頼もしさ/タフな一面が高く評価されているのが、ヤマハ セローだ。’20年7月末にラインオフした最後の1台まで、35年ものロングセラーを続けたのは、”らしさ”を忘れることなく各時代のニーズに合わせて対応してきたからで、進化と熟成を繰り返す歴史でもあった。
初代が誕生した’85年から20年、セローは大きな転換点を迎える。’05年、成人式というタイミングでフルモデルチェンジを果たす。車体を新設計し、223ccだったエンジンは249ccに排気量をスケールアップ。車名を「セロー250」とした。
【’08 YAMAHA SEROW250】■全長2100 全幅805 全高1160(各mm) 車重130kg ■空冷4ストローク単気筒SOHC2バルブ 249cc 18ps/7500rpm 1.9kg-m/6500rpm 始動:セル式 ■タイヤサイズF=2.75-21 45P R=120/80-18M/C 62P ●発売当時価格:47万円
[左]軽量でスリムな扱いやすいパッケージをそのままに、排気量アップを果たしたセロー250。ヘッドライトが丸目となり、軽量コンパクトになっている。[右]軽快なテールエンド。’18年にリヤフェンダーをロングタイプにし、テールランプをLED化する。
ボア×ストローク74×58mmのエンジンは、前年登場したトリッカーの空冷SOHC2バルブがベースで、225時代から見れば、ストロークをそのままに4mmのボアアップ。鍛造ピストンやメッキシリンダーを採用し、優れた放熱性による性能安定化が図られている。
最高出力20→21ps/最大トルク1.9→2.14kg-mともに向上し、6速だったトランスミッションは5速に。これは実用回転域のワイドレンジ化を裏付けるもので、キャブレターを’08年式でインジェクション化して出力を18psとするが、扱いやすさはその後も変わらない。車体も刷新された。ダイヤモンドフレームをセミダブルクレードル式にして剛性アップ。解禁された高速道路二人乗りにも対応した。フロント21インチ/リヤ18インチの足まわりをそのままに、ホイールベースを10mm伸ばし(1360mm)、直進安定性を向上している。
その上で、左右それぞれ51度という大きなハンドル切れ角や、わずか1.9メートルの最小回転半径は225時代と変わらない。車両重量は126kg(’05年式)で、重量増はわずか4kgに抑えた。取り回しの良さと軽快性を犠牲にせず、250cc化を果たしているのは、見事としか言いようがない。
角目だったヘッドライトは、丸目となって小型軽量化。100mm径レンズと60/55Wハロゲンバルブのラ
イト下には、初代から受け継がれてきたスタックバーがもちろん健在で、リヤ/サイド2カ所にあるハンドルスタンディングともどもスタック時に頼りとなる装備だ。指針式だったメーターは時計やツイントリップも備えたデジタル式にグレードアップし、夜間も見やすいグリーンのバックライトを採用した。
フロントフォークは225mmのゆとりあるストロークを確保。リヤサスペンションは軽量アルミ製シリンダーのボトムリンク式で、前後ホイールには軽量アルミ製リムが用いられる。ブレーキは前輪が異径2ポットキャリパーと245mm径ディスク、リヤは1ポットキャリパーと203mm径ローターの組み合わせ。ブレーキ&シフトペダルが可倒式になり、オフロードでの利便性を上げるなど全方位に進化。この後さらにまた15年もの間、ファンに愛され続ける名車が誕生したのだった。
[左]撮影車両は’08年式。このとき空冷SOHC2バルブ単気筒エンジンはフューエルインジェクション化され、吸気ポート形状を見直した。環境性能を向上するだけでなく、低中速域での扱いやすさと豊かなトルク特性を実現している。[中]’08年式はフロントフォークアウターチューブの仕様変更によるトレール量の見直しも行われた。撮影車両はパープリッシュホワイトソリッド1(シロ/ミドリ)。[右]可倒式のシフトペダルを採用。’08年式ではシフトフィーリングを向上し、メカノイズやオイル消費量を低減するなど改良が加えられている。
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