「イマドキのバイクにはいらない?」冬のバイクの“暖機運転”は必要? 不要?「やっぱりやっとこうかな」
寒い冬が到来! ライダーには厳しい季節ですが、みなさん安全にバイクライフを楽しんでますか? 現在のバイクは暖機運転がいらないという話を聞きますが、寒い冬でも不要なのでしょうか? 今回は冬のエンジン暖機運転について考えてみたいと思います。
●文:[クリエイターチャンネル] DIY道楽テツ
ひと昔のバイクは一年中暖機運転が必須でした
昔のバイク…と行かないまでも、1990年代末ぐらいまでのバイクは、一年中エンジンの暖気が必要不可欠でした。とくに2サイクルエンジン車は、冬はなかなかエンジンがかからないし、エンジンがかかった後もエンジンのご機嫌を伺いながらゆっくりゆっくり温めたものです。比較的安定していた4サイクルエンジン車でも、暖機運転をしなければ、うまく走れないこともありました。
しかし、近年のバイクや車は暖機運転が不要といわれています。ですが、寒い冬でも暖気運転は不要なのでしょうか? 結論づける前に、まずは暖機運転不要論について考えてみましょう。
技術の進化による暖機運転不要論
暖機運転不要論とは、近年の自動車技術の進化により、従来のようにエンジンを長時間かけて暖機運転を行う必要性が薄れているという考え方です。従来の暖機運転の目的は、下記の2つ。
- エンジンオイルを温めて潤滑性能を高める
- エンジン各部の温度を上げて、適切なクリアランスを確保する
現代の暖機運転不要論の根拠については、以下の通りです。
エンジンオイルの進化
近年のエンジンオイルは、低温時でも高い潤滑性能を発揮するように進化しました。そのため、昔のようにエンジンを温める必要性が減少しています。
電子制御技術の向上
最新のエンジンは、エンジンコンピューターが温度や回転数などを細かく制御することで、冷間時でも最適な燃焼状態を維持できるようになっています。そのため、暖機運転を省いても効率的に運転を開始できます。
エンジン素材の性能向上
エンジン素材そのものの性能が向上しただけでなく、コーティングやメッキ技術の進化により摩擦も大幅に低減されています。
これらの理由により、エンジンが温度に左右されにくくなり、暖機運転の必要性が低くなっているといわれています。あとは単純に、ガソリンを消費することによる燃費の低下と環境問題への配慮という点も忘れてはいけませんね。
とはいえ、温かい季節ならまだしも、寒い冬でも本当に暖機運転しなくてもいいのでしょうか?
暖機運転をしないとどうなるのか?
「暑い夏、バイクのエンジンに暖機運転は必要or不要?を徹底解説!」でも書かせていただきましたが、筆者自身の考えとしては【暖機運転は必要】と考えます。
- 暑くなった状態で走るように設計されているのだから、冷えた状態でいきなり走れるはずがない
- エンジン停止状態ではオイルは下に下がってしまうから、せめて最低でもオイルが一巡するまでは暖機運転をするべき
- 最高レベルの技術を集めたレーサーエンジンこそ、ちゃんと暖機運転を捨てるという事実
要約するとこんな感じです。
暑い夏でさえ、そうなのですから、冬になるとなおのことです。
冷えた状態からいきなり動き出すと、「ぎゃあッ」ってなっちゃうのは機械も人間も同じこと。若い頃は気にならなかったけど、アラフィフになるとガチでキツいのですよ。
エンジンの中にある、シリンダーもピストンもクランクもギアもシャフトも、みんな温まった状態を前提に設計されていますし。そして、低温に強いエンジンオイルだったとしても、寒い冬の動き出しからいきなり100%の潤滑性能を発揮できるとは思えません。
おすすめの暖機運転の方法はゆっくりじっくりと
暖機運転の方法については諸説ありますが、ここでは筆者自身の暖機運転について語らせていただきます。
暖機運転というと、アイドリング状態でエンジンを温めるイメージが強いですが、じつはそれだけとは限りません。車もそうですが、バイクという乗り物はエンジンだけではないからです。
エンジンに繋がるチェーンやリアホイール、ステアリングからフロントフォーク、そしてフロントホイール、これらすべてがスムーズに動くようになって初めて性能を発揮できるものです。一流ライダーの気分になって、バイクの状態を肌で感じながら走り始めるのが、おすすめの暖機方法です。
まずはエンジンをかけて、少なくとも1分ぐらいかけてオイルがエンジン内部を一巡するのを待ちます。エンジンの調子に異常がないことを確認してから、バイクにまたがり、ギアを入れてゆっくり走り出しましょう。
とくに冬場はタイヤが冷たく硬くなっているので、いきなりバイクを傾けると滑り出す危険性があります。タイヤが温まるまではとくに注意が必要です。同様に急ブレーキもスリップダウンの原因となるので、とにかく「急」のつく動作は避けるようにしましょう。
寒い朝の部活動のように、まずはストレッチから始めて軽い負荷で体を温めていくように、ゆっくりじっくりバイクを走らせるのが冬の暖気運転と言えると思います。
バイクだけじゃない! 暖気運転のあれこれ
ここまでバイクの暖気運転について考えてきましたが、人間の方にも暖気運転が必要です。車とバイクの大きな違いは、ライダーの動きそのものがバイクの挙動に大きく関わってくることです。
それなりにバイクに乗ってきたライダーのみなさんなら分かると思いますが、ちょっと体が硬いだけでも、うまく曲がれなくなるものです。ですので、エンジンをかけて暖気運転をしている間に、屈伸したり、スクワットをしたり、軽いジャンプをするなどして体をほぐしておくと、それだけで安全性が高まります。
「人馬一体」という言葉がありますが、バイクもまたしかり。ライダーの体を温めることが、安全にもつながります。
冬のバイクライフは体を温めながらご安全に
冬のツーリングの合間に飲む缶コーヒーは、なぜあんなに美味しいのでしょうか? バイクは暖気運転をして走り出してしまえば、あとはどんどん暖かくなっていきますが、乗っているライダーはそうはいきません。
走っていれば全身に風を浴びて、どんどん体が冷えてくるものです。完全に体が冷え切ってしまうと、信号待ちなどで足を出したつもりが出ていなくて、そのまま立ちゴケしてしまったりすることもあります。筆者も何回か経験があります!
そんなわけで、完全に体が冷えきる前にたまには小休止をして、自動販売機やコンビニエンスストアで缶コーヒーを買ったりして飲み、体を温めるようにしましょう。
冬の転倒は痛いです。本当にガチで痛いです。バイクも体もちゃんと暖気運転をして、この冬もご安全にバイクライフをお楽しみください。
この記事が皆様の参考になれば幸いです。今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました~!
私のYouTubeチャンネルのほうでは、「バイクを元気にしたい!」というコンセプトのもと、3日に1本ペースでバイクいじりの動画を投稿しております。よかったら遊びにきてくださいね~!★メインチャンネルはコチラ→「DIY道楽」 ☆サブチャンネルもよろしく→「のまてつ父ちゃんの日常」
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(DIY道楽テツ)
セルが弱くなったらバッテリー交換のサイン スクーターのバッテリーが弱ってきたのか、始動性がイマイチになってきました。 そういえば、このバッテリーもずいぶんずいぶん古くなってきたので、バッテリーを買い替[…]
新品タイヤが滑るその理由 新しいタイヤは滑ります。 滑りたくないから新しいタイヤに交換したというのに、なぜか新しいタイヤはマジで滑るんです(経験者は語る)。 なぜ滑るかというと、それはタイヤの製造過程[…]
場所によっては恒例行事なバイクの冬眠(長期保管) 「バイクの冬眠」…雪が多い地域の皆様にとっては、冬から春にかけて毎年恒例の行事かもしれませんね。また、雪国じゃなかったとしても、諸事情により長期間バイ[…]
燃料コックにも涙? それはある日の出来事。バイクで走り出そうとガソリンタンクの燃料コックをオンにした時、指先に冷たいものを感じました。 何があるのかと覗き込んでみると・・・燃料コックが泣いているぅ~![…]
チューブレスタイヤのビード落としは難しいよね!? タイヤレバーを使ったタイヤ交換、いわゆる手組でタイヤの脱着ができるという方でも、チューブレスタイヤとなると腰が引いてしまう、そんな方も多いのではないで[…]
最新の関連記事(ビギナー/初心者)
スーパースポーツの前傾姿勢は特にコーナリング向き! A.スーパースポーツとネイキッドでは、前傾度の違いだけでなく、シート座面へ体重の載る位置、重心となるエンジン位置とライダーの関係も違います。体幹移動[…]
二輪免許こそない私だけれど、子供の頃から「特攻の拓」や「バリバリ伝説」のようなバイク漫画がとにかく好きだった。学生時代ともなれば、漫画から読み取れた知識だけで「バリバリ伝説の主人公、巨摩 郡みたいにC[…]
ハイグリップ仕様でなくても溝が少なく浅い最新スポーツタイヤ! A. 確かに最新のツーリングを意識したスポーツタイヤは、少し前のサーキット専用のハイグリップタイヤのように、トレッドに刻まれた溝が少なく、[…]
場所によっては恒例行事なバイクの冬眠(長期保管) 「バイクの冬眠」…雪が多い地域の皆様にとっては、冬から春にかけて毎年恒例の行事かもしれませんね。また、雪国じゃなかったとしても、諸事情により長期間バイ[…]
チェーンの張り調整が必要なのは、チェーンが徐々に伸びるからだけど…… バイクのチェーンのメンテナンスといえば「清掃・潤滑」と「張り(あそび)のチェック」。まず、チェーンを長持ちさせるには清掃や潤滑をマ[…]
最新の関連記事(ニュース&トピックス)
1月25日(土)に東京都・埼玉県のバイク用品店3店舗にて開催! 2024年のロードレース世界選手権にて、Moto2クラスのチャンピオンを獲得した小椋 藍選手のサイン会が、2025年1月25日(土)に、[…]
電動過給機の採用により、コンパクトで排気量以上のパフォーマンスを発揮するV型3気筒エンジン 2030年までに30モデル以上のEVを投入するとしているホンダにとって、その目標の10機種目と11機種目にあ[…]
オートバイのメンテナンスは大切 オートバイや乗用車に限らず、どんな乗り物でもメンテナンスは必要不可欠です。定期的にメンテナンスを行うことで、長く乗り続けることができるだけでなく、事故を防ぐことにもつな[…]
基本的なライディングフォーム バイクファンであれば一度は耳にしたことがあるかもしれませんが、時に白バイ隊員は公道を走るスペシャリスト集団とも言われています。ですが、走行中はライディングフォームを意識す[…]
新基準原付 2025年、バイク界に起こる最大の変化は従来の50cc原付(=原付一種)に代わって登場することになった「新基準原付」でしょう。 従来の50cc原付が、今年の11月から施行される排ガス規制に[…]
人気記事ランキング(全体)
ステップアップの階段・R7の成功が生んだR9 YZF-R9の開発者・お二人にインタビュー 編集部:まずはYZF-R9(以下R9)の企画経緯や狙いを教えてください。 兎田:他社さんを含めてスーパースポー[…]
「お金も時間もありそうなのに、なぜこんな天気の良い日にツーリングにも行かず、用品店に来ているんだろう?」という疑問 都内の某大手バイク用品店の駐輪場にて。今日も「なぜ来ているのかわからない?」ようなバ[…]
ジクサー150でワインディング 高速道路を走れる軽二輪で、約38万円で買えて、燃費もいいというウワサのロードスポーツ──スズキ ジクサー150。 まだ子どもの教育費が残っている50代家族持ちには(まさ[…]
セルが弱くなったらバッテリー交換のサイン スクーターのバッテリーが弱ってきたのか、始動性がイマイチになってきました。 そういえば、このバッテリーもずいぶんずいぶん古くなってきたので、バッテリーを買い替[…]
市販バージョンは750ccオーバー!? ホンダが世界に先駆けて量産直4マシン=CB750フォアを発売したのは’69年のこと。つまり、今年は直4CBの生誕30周年にあたるってわけ。そこで、提案モデルとい[…]
最新の投稿記事(全体)
様々なイベントで製品を伝えるサイン・ハウス サイン・ハウスは、様々なイベントに出向いてユーザー接点を多くとっている。最新モデルを直接体感してもらい、それぞれの特徴を的確にユーザーに伝える。活用方法や操[…]
YZF-R9の開発者・お二人にインタビュー スピンフォージドホイールを非採用の理由とは? (前編から続く)編集部:エンジンですが、内部部品や吸排気系も含め、基本的にはMT-09と共通です。YZF-R9[…]
1月25日(土)に東京都・埼玉県のバイク用品店3店舗にて開催! 2024年のロードレース世界選手権にて、Moto2クラスのチャンピオンを獲得した小椋 藍選手のサイン会が、2025年1月25日(土)に、[…]
250ccクラスは16歳から取得可能な“普通二輪免許”で運転できる バイクの免許は全部で7種類ある。原付(~50cc)、小型限定普通二輪(~125cc)、普通二輪(~400cc)、大型二輪(排気量無制[…]
市販バージョンは750ccオーバー!? ホンダが世界に先駆けて量産直4マシン=CB750フォアを発売したのは’69年のこと。つまり、今年は直4CBの生誕30周年にあたるってわけ。そこで、提案モデルとい[…]
- 1
- 2