電動スーツケースの違法性とは? 公道走行可能にするための手続きや改造って?【元警察官が解説】

  • [CREATOR POST]宅島奈津子

利便性が起こす弊害

世の中はどんどん便利になっていく一方ですが、そのことによって引き起こされる弊害というものも多々あります。ここまで利便性を追求すべきなのか、と目や耳を疑いたくなるようなものも、たくさんあるな…と感じているのは私だけではないと思います。

電動スーツケースの登場

みなさんは、電動スーツケース、電動キャリーケースと言われるものをご存知でしょうか。初めて耳にする方もいらっしゃるかもしれませんね。日本国内では、まだあまり普及していないため、そうそう見かけるものではありませんが、海外からの観光客を中心に人気を博しています。

一昔前には、想像もしなかったようなものが次から次へと登場してきますね。この電動スーツケースも、そうしたものの一つではないでしょうか。

電動スーツケースは車両扱い⁉

実はこの電動スーツケース、原動機付自転車としての扱いとなるため、車両として扱われることになります。ということはもちろん、乗車するには、運転免許が必要となります。なにせこの電動スーツケース、速度はそこまで出ないものの、電動機(モーター)のみで運転できるのです。

一例として、2022年に発売された電動スーツケース「GeeRidecase」を見てみましょう。販売している株式会社Glotureによると、価格は10万円ほどで「スクーターのように乗れる、夢のようなスーツケース」といったキャッチコピーで紹介されている一台です。

ハンドルの右側のボタンで発進し、左側のボタンで停止するといった、非常に簡単な操作で乗ることができ、最高時速は10kmとなっています。人の歩く速さは通常、時速5kmほどなので、時速10~13kmというのは小走りするぐらいの速さと同等。走行時には、周囲への注意や配慮が必要となってきます。

ほぼ電動キックボードと同じような気もしますが、あちらとは違い、規格にそった設計とはなっておらず、速度制限機構がまず備えられていません。そのため、特定小型原動機付自転車扱いとはならず、2024年9月時点の日本では、公道走行は不可とされています。原動機付自転車である以上、ヘルメットの着用義務があるだけでなく、ナンバープレートが必要なのです。

転倒や衝突のリスク

簡単な操作で利便性の高い電動スーツケース、この電動スーツケースにKPOPアイドルが空港でまたがって登場したことも話題となり、新たなブームになるのではないか、とも言われています。その一方で、専門家によると危険性が高い乗り物であるとの、指摘もあります。

タイヤのサイズが非常に小さいため、段差やちょっとした障害物でさえも乗り越えることが難しく、転倒する危険性が高いからです。さらに重心が高いので、バランスをとりにくく、速度を上げてしまうと急に止まることができず、曲がることも難しかったりします。つまり、歩行車等に後ろから衝突してしまったり、曲がり角で正面衝突したりする可能性が高いわけです。

電動スーツケースを販売するサイトには、「走行は十分に広く、周囲に人や障害物がない状況でご利用ください。当ストアでは走行に伴い生じた事故・トラブルにつきましては一切補償しかねます」「日本国内では本品の公道走行は禁止されております」等の注意書きもあります。

本音を言うと、安全運転を啓蒙する立場である私自身、お勧めしたい乗り物ではありませんが、今後どのようなかたちで普及していくのか、というところは気になるところです。

大事なことなので繰り返しますが、この新しい乗り物である電動スーツケース、走行するには運転免許が必要であり、現時点では公道を走行してはいけないとされています。

公道を走行するためには、ヘッドライト等の保安基準を満たしたうえで、ナンバープレートの取得と装着、ヘルメットの着用が必須となります。そこまでして公道を走行したいという人が今後、現れるのかといったところを、交通取締りを行う側である警察官は気にかけているようです。

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