[伊藤由里絵 靴磨き日本一周バイク旅]青森、ガラガラだった靴磨き屋に行列を作ってくれた芸術家のおばあさんの話
![[伊藤由里絵 靴磨き日本一周バイク旅]青森、ガラガラだった靴磨き屋に行列を作ってくれた芸術家のおばあさんの話](https://young-machine.com/main/wp-content/uploads/2024/05/unnamed-1.jpg)
●文:[クリエイターチャンネル] 伊藤由里絵
北海道からスタートさせた靴磨き日本一周のバイク旅。2県目の青森県では初めて『商店街』で靴磨きをする予定でした。路上で靴を磨くのは靴磨き職人になりたての時に新宿駅前で磨いた以来。全然知らない土地の商店街で靴を磨く不安と緊張でいっぱいだった私の気持ちを変えてくれたのは、あるおばあさんとの出会いでした。
初めて青森県に入って感じたことは・・・
函館と青森市を繋ぐ津軽海峡フェリーに乗り込んで、揺られることおよそ三時間半。夕暮れ時の空をバックに港の建物が見えてきて、いよいよ本州に突入! だったのですが・・・青森に入ってまず最初に感じたことは、意外なことに強烈な寂しさでした。日本一周はまだ始まったばかり。ひとつ県を越えただけなのに、ホームシックではないけれどこの町に誰も知り合いが居ないことに急に不安を覚えたんです。
翌日から靴磨きイベントを控えている私は、初めての土地のお散歩がてらイベントを開く商店街の下見に行くことにしました。青森駅前のメイン通り商店街で、18時頃にもなるとお店の明かりは消え始めて家に帰るサラリーマンの様子がぽつぽつ見られました。イベントを開く広場のすぐ前に居酒屋があったので、入ってみることに。
「青森らしいもの食べたいんですけどオススメはありますか?」
「『生姜味噌おでん』だね。どこから来たの?」
「今、日本一周をしていて。明日ここの広場で靴磨きをするんです。」
「あぁ~聞いたよ! 君なんだ! ・・・でもねぇ、お客さん来るかなぁ。前にアイドルの人たちが広場でライブしに来たけど、お客さんガラガラでね・・・。集まるといいね。」
店主の言葉にますます不安が募っていきましたが、郷土料理の生姜味噌おでんが美味しかったのと、地元の方とお話しすることが出来たことで少しずつ気持ちも前向きになってきました。
あるおばあさんのおかげでまさかの行列に・・・
久しぶりの路上靴磨きは、最初は正直やっぱり怖さが勝りました。靴磨き道具を広げて準備をしていると行き交う人が皆何をしているんだろうと注目してくれるのですが、その視線が全部冷たいものに見えてしまったんです。
しかし準備が終わるとまもなくして、「かっこいいバイクね!! あなたが乗ってるの?」と、ひとりのおばあさんが声をかけてくれました。そのおばあさんは会話上手で、私がなぜ靴磨きをしているのかや、前職が警察官であること、そして日本一周をはじめた動機や旅の思い出まで、どんどん話が盛り上がっていって。すっかり話し込んでしまいました。
おばあさんが履いていた靴を磨くと、喜んでくれたおばあさんは今度は私では無く行き交う人たちに声をかけ始めました。
「見て! この靴ピカピカでしょう? この子が磨いてくれたのよ! この子は凄いのよ! 東京からこのバイクに乗って靴磨きしながら日本を旅しているの。」
おばあさんに声をかけられた人たちは皆足を止めて、「へぇー! 凄いね!」とどんどん声をかけてくれて、気付けば靴磨きは待ち時間が発生するほど長蛇の列に・・・!! 準備をしていたときの不安な気持ちはもうすっかり無くなっていたんです。
私一人ではぜんぜん声かけ出来なかったのに、おばあさんの営業力、凄すぎる・・・!
あっという間に行列を作ってしまったおばあさんの正体は、現役の芸術家でした。普段関東に住んでいるおばあさんは陶器製の人形作品を作っていて、自分の個展を開いては全国を飛び回っていて、ちょうど青森を訪れたところだったそう。翌日からの個展の案内をすべく、ビラ配りに商店街に出てみたら、面白そうなことをしている私を見つけて思わず声をかけてくれたのだとか。
靴磨き屋の前に行列を作ると「じゃ頑張ってね~」と笑顔で行ってしまいました。もっとお話してたかった・・・。お礼も出来なくて後悔が残ったけれど、昨日の居酒屋店主の言葉が嘘だったかのように止まらないお客さんの波に、とにかく夢中で磨きました。
おばあさんと過ごした夜
おばあさんからもらった個展のビラを見てみるとその会場は有名な温泉宿の館内で、私がこれから通るルートの途中にあるみたいで。これは行くしか無い! と、温泉宿に向かってバイクを走らせました。
「えぇー!!! あなた来てくれたの!? また会えるなんて、本当に嬉しいわ!!」
こっそり行って驚かそうと思ったらおばあさんの方からすぐに気付いてくれて、無事に再会することが出来ました。
おばあさんの勧めで私も温泉宿に一泊することに。一緒に夜ご飯を食べながらも、おばあさんは絶えず周りのお客さんたちに私のことを紹介してくれました。
私は今まで初対面の人と話すとき、自分のことを語ることはしませんでした。人は私にあまり興味がないだろうと思い込んでいたからです。けれどおばあさんが私のことを話すと、皆はすぐに興味を持ってくれて。私が思っているよりもっと自分のことを開示して良いのかもしれない、おばあさんと出会ったおかげで気づけたことでした。
その日から私は少しずつ、初対面の人にも自分のことを話せるようになってきました。最後におばあさんは、これだけは言わせて。と言ってくれた言葉があります。
「貴方は若いから、これからもやりたいことが沢山出てくると思う。あれもこれもやりたいけど自分がブレてしまうのではないかと悩むときがくると思う。そんなときはとことんブレなさい。何でも良いからやってみるの。そうした先に本当の気持ちに気づけるから。今の時代だから出来る生き方をしなさいね。」
色んなことに興味が出る私は、時折自分の軸について悩んでしまうことがあります、でもそんな時はおばあさんのこの言葉を思い出して背中を押してもらっているのです。
※本記事の文責は当該執筆者(もしくはメディア)に属します。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(伊藤由里絵)
みなさん、こんにちは! 靴磨きしながら愛車のヤマハボルトで日本一周している、いとです! 「靴磨きを始めたいけど、どんなアイテムを用意すればいいのか分からない!」なんてお悩みをよく耳にします。昔はミンク[…]
みなさんこんにちは、靴磨きしながら愛車のヤマハボルトで日本一周中のいとです! まだ暑さが残る日も続いていますが、涼しい日も多くなり、ツーリングシーズン到来となりました。この時期のおすすめは、なんといっ[…]
こんにちは! 愛車のヤマハボルトで日本一周しながら靴磨きしている靴磨き職人のいとです! みなさん、靴磨きの応用技「鏡面磨き」ってご存知ですか?? あまり馴染みのない言葉かもしれませんが、文字通り鏡のよ[…]
1分でわかる記事ダイジェスト 北海道をバイクで走りたいと思う人も多いかもしれないが、本州から離れ、フェリーでないと行けないので、ハードルはちょっと高い。そんな方に向けて、筆者が日本一周旅の道中で走った[…]
皆さんこんにちは! 愛車のヤマハボルトで日本一周しながら靴磨き職人として働くいとです! 暑~いこの季節、皆さんいかがお過ごしですか~?? さてさて、この季節にお客様からよくこんな相談を受けます。夏の間[…]
最新の関連記事(ツーリング)
「HAVE A BIKE DAY.」加藤ノブキ × TANAX 『加藤ノブキ』は、椎名林檎のCDジャケットや、東京モーターサイクルショー2024のメインビジュアルなども手がける、トップクラスのイラスト[…]
『HAVE A BIKE DAY.』加藤ノブキ × TANAX 加藤ノブキは、椎名林檎のCDジャケットや、東京モーターサイクルショー2024のメインビジュアルなども手がける、トップクラスのイラストレー[…]
【おさらい】ライダーが「吉方位」を気にするべき理由 「吉方位」とは、「その方角へ向かうことで良いエネルギーを吸収し、自分自身のパワーをフルチャージできる場所」のこと。 適切なタイミングで吉方位へ走り、[…]
ツーリング&キャンプを楽しむ人の強い見方 寒い冬もようやく終わりが見えてきて、春の陽気を感じるこの季節。しばらく遠ざかっていたツーリングに出かけてみたくなるシーズンでもある。気軽な装備で楽しむのもいい[…]
極寒の1300km走破で証明した「絶対的信頼」 大容量シートバッグのフラッグシップとして君臨する定番モデルが、ついに大幅刷新を遂げた! パッと見のシルエットこそ馴染みあるものだが、中身は別物。細部にわ[…]
最新の関連記事(ヤマハ [YAMAHA])
可変バルブ機構と縦目2灯フェイスを備えた本格派オフローダー まずはWR125Rが持つポテンシャルをおさらいしておきたい。最大の特徴は、走行中に吸気カムが切り替わる可変バルブ機構(VVA)を採用した水冷[…]
RY1003 2Wayジャケット YAMAHA:「風を、着脱せよ。」ジップひとつで3シーズンに対応する2Wayジャケット 「風を、脱着せよ。」をコンセプトに、ジップひとつで夏の暑ささえもコントロールで[…]
125ccオフ車「WR125R」を快適にするカスタムパーツが登場 2026年1月に国内発売された125ccクラスのフルサイズオフローダーWR125R。その走行性能と快適性を向上させる各種カスタムパーツ[…]
免許制度変更→ビッグバイクのハードルが大幅に下がった ’90年代末にさしかかると、ゼファー以降に登場したCBやXJRもビッグチェンジを果たした。とくにCBはバルブ休止機構のハイパーVTECを導入し、新[…]
レースは自分の人生そのもの 始まりがあれば、終わりは必ずやってくる。絶対王者として長年、国内最高峰の全日本ロードレース選手権JSB1000クラスに君臨してきた中須賀克行が、今シーズン限りでの引退を表明[…]
人気記事ランキング(全体)
穏やかでない社名は南北戦争に由来。人種差別の意図はないと断言 1991年、成功を収めた弁護士、マシュー・チェンバースが興したバイクメーカー、コンフェデレート。和訳すると「南軍」を意味する社名は、創業地[…]
メンテフリーで静粛。高級車さながらの「ベルトドライブ」 定期的に行うチェーンのメンテナンス。油まみれの手は作業の実感を呼んでくれるけれど、ちょっと煩わしいのも確か。ヒョースンが放つ新型「GV250X […]
レースはやらない社長の信念に反して作成 前述の通り、ボブ・ウォレスがFIAの競技規定付則J項に沿ってミウラを改造したことから始まったイオタ伝説。Jというのはイタリア語に存在しないため、イオタは「存在し[…]
憧れの英国スポーツ、でも毎日の渋滞や維持費が心配? カッコいいスポーツバイクに乗りたい。休日はワインディングを駆け抜け、その流麗なスタイリングをガレージで眺めたい。そんな想いの前に立ちはだかるのが、「[…]
50㏄原付一種と同じルールで走る新原付 はっきり言って、ちょっと侮っていました。だってスペックだけで想像したら、スーパーカブ110を遅くしたのが、新基準原付となるスーパーカブ110 Lite。私は大型[…]
最新の投稿記事(全体)
「HAVE A BIKE DAY.」加藤ノブキ × TANAX 『加藤ノブキ』は、椎名林檎のCDジャケットや、東京モーターサイクルショー2024のメインビジュアルなども手がける、トップクラスのイラスト[…]
可変バルブ機構と縦目2灯フェイスを備えた本格派オフローダー まずはWR125Rが持つポテンシャルをおさらいしておきたい。最大の特徴は、走行中に吸気カムが切り替わる可変バルブ機構(VVA)を採用した水冷[…]
ライダーの使い勝手を徹底的に考えて作られたコンパクトナビ 株式会社プロトが輸入、販売するバイク用ナビゲーション「ビーライン モト2」は、ライダーの使用環境に最適化された専用設計モデルである。一般的なカ[…]
憧れのレトロバイク、でも「維持費」と「トラブル」が心配…そんな悩みを一掃する新星が登場 大型バイクは重くて車検も面倒。かといって中古のレトロバイクは故障が怖いし、維持費も馬鹿にならない。そんな悩みを抱[…]
日常のマンネリを打ち破る、万能ストリートファイターの誘惑 毎日の通勤ルート、代わり映えのしない景色。そんな退屈な日常に刺激が欲しいと感じたことはないだろうか。そんな不満を一掃してくれる頼もしい相棒、ス[…]
- 1
- 2

![[伊藤由里絵 靴磨き日本一周バイク旅]青森、ガラガラだった靴磨き屋に行列を作ってくれた芸術家のおばあさんの話|[伊藤由里絵 靴磨き日本一周バイク旅]青森、ガラガラだった靴磨き屋に行列を作ってくれた芸術家のおばあさんの話](https://young-machine.com/main/wp-content/uploads/2024/05/unnamed-768x445.jpg)
![[伊藤由里絵 靴磨き日本一周バイク旅]青森、ガラガラだった靴磨き屋に行列を作ってくれた芸術家のおばあさんの話|[伊藤由里絵 靴磨き日本一周バイク旅]青森、ガラガラだった靴磨き屋に行列を作ってくれた芸術家のおばあさんの話](https://young-machine.com/main/wp-content/uploads/2024/05/view_image-3-768x576.jpg)
![[伊藤由里絵 靴磨き日本一周バイク旅]青森、ガラガラだった靴磨き屋に行列を作ってくれた芸術家のおばあさんの話|[伊藤由里絵 靴磨き日本一周バイク旅]青森、ガラガラだった靴磨き屋に行列を作ってくれた芸術家のおばあさんの話](https://young-machine.com/main/wp-content/uploads/2024/05/view_image-4-768x576.jpg)
![[伊藤由里絵 靴磨き日本一周バイク旅]青森、ガラガラだった靴磨き屋に行列を作ってくれた芸術家のおばあさんの話|[伊藤由里絵 靴磨き日本一周バイク旅]青森、ガラガラだった靴磨き屋に行列を作ってくれた芸術家のおばあさんの話](https://young-machine.com/main/wp-content/uploads/2024/05/view_image-8-768x1024.jpg)
![[伊藤由里絵 靴磨き日本一周バイク旅]青森、ガラガラだった靴磨き屋に行列を作ってくれた芸術家のおばあさんの話|[伊藤由里絵 靴磨き日本一周バイク旅]青森、ガラガラだった靴磨き屋に行列を作ってくれた芸術家のおばあさんの話](https://young-machine.com/main/wp-content/uploads/2024/05/view_image-6-768x1024.jpg)
![[伊藤由里絵 靴磨き日本一周バイク旅]青森、ガラガラだった靴磨き屋に行列を作ってくれた芸術家のおばあさんの話|[伊藤由里絵 靴磨き日本一周バイク旅]青森、ガラガラだった靴磨き屋に行列を作ってくれた芸術家のおばあさんの話](https://young-machine.com/main/wp-content/uploads/2024/05/view_image-7-768x1024.jpg)
![[伊藤由里絵 靴磨き日本一周バイク旅]青森、ガラガラだった靴磨き屋に行列を作ってくれた芸術家のおばあさんの話|[伊藤由里絵 靴磨き日本一周バイク旅]青森、ガラガラだった靴磨き屋に行列を作ってくれた芸術家のおばあさんの話](https://young-machine.com/main/wp-content/uploads/2024/05/view_image-8-1-768x576.jpg)
![[伊藤由里絵 靴磨き日本一周バイク旅]青森、ガラガラだった靴磨き屋に行列を作ってくれた芸術家のおばあさんの話|[伊藤由里絵 靴磨き日本一周バイク旅]青森、ガラガラだった靴磨き屋に行列を作ってくれた芸術家のおばあさんの話](https://young-machine.com/main/wp-content/uploads/2024/05/view_image-5-768x1024.jpg)
![[伊藤由里絵 靴磨き日本一周バイク旅]青森、ガラガラだった靴磨き屋に行列を作ってくれた芸術家のおばあさんの話|[伊藤由里絵 靴磨き日本一周バイク旅]青森、ガラガラだった靴磨き屋に行列を作ってくれた芸術家のおばあさんの話](https://young-machine.com/main/wp-content/uploads/2024/05/view_image-12-768x1024.jpg)
![[伊藤由里絵 靴磨き日本一周バイク旅]青森、ガラガラだった靴磨き屋に行列を作ってくれた芸術家のおばあさんの話|[伊藤由里絵 靴磨き日本一周バイク旅]青森、ガラガラだった靴磨き屋に行列を作ってくれた芸術家のおばあさんの話](https://young-machine.com/main/wp-content/uploads/2024/05/view_image-8-2-768x576.jpg)
































