ノルマのためって本当? 元白バイ警官が交通違反取締の実際を語る
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交通ルールは守るべきものとは言え、威圧感を与えるような口調やわざわざ物陰に隠れたり等、警察の取締には理不尽なものを感じるときもある。そのためか、交通違反の取締は警察官の実績作りや反則金目当て何じゃないのか? といった邪推も世に溢れているのも事実。そんなウワサの真相を元白バイ警官の宅島奈津子さんが語る。
●文:[クリエイターチャンネル] 宅島奈津子
取締ノルマはあるようでない!?
交通取締を行っている警察官に対してノルマがあるのかどうかっていう疑問がよく挙げられますが…結論から言うとある! と言えるかもしれません。ただ厳密にはノルマって言わないのかなって個人的には思っています。というのも、今日は何件検挙してこいとか、いつまでに何人捕まえてこいとか、そういったことではないのです。
そもそも警察という組織は、交通違反だけではなくすべてにおいて目標数値というものが設定されていて、数字で管理されています。検挙率を上げるためだけではなく、事件の発生件数をおさえるためのノルマであったりもするので、必ずしも警察官自身の成績のために、というわけではないということを知っておいていただきたいところです。
そのため、やはり数字で管理しないといけないってことで、ノルマ的な数値が言い渡されるというか与えられるのです。それでも一般の運転手からすると、理不尽だと感じる取締のやり方だったり、上から目線の警察官の態度などからノルマのためだろと感じられてしまうのは、取締側だった私でもよくわかります。
そういったことが原因で、ノルマ説が浮上してしまうのも無理がない話ですね。なかには自分の個人的な実績のために検挙件数を増やしたいという警察官がいるのも事実ではあります。
というのも私自身、白バイ隊員になったばかりの頃、そういうタイプの先輩と勤務を共にしていました。入りたてで指導してもらう立場にある私には逆らったり意見したり反対するという選択肢がなくただただついていくだけの身分。
ひたすら違反者を探す、という交通取締のスタンスが本当はすごく嫌でした。ただその先輩のおかげで検挙件数が高く成績優秀賞をもらったりすることも多々ありました。でも手放しに喜べないというか、本心では嬉しくないというか、そんな複雑な気持ちでした。
ノルマに囚われる警官もいれば役割に真摯な警官もいる
それに反して、自分が主として動けるようになってからはパトロールすることで見せる活動をメインに取締を行ってきました。運転している方のほとんどが白バイやパトカーを見ると無意識のうちに減速してしまうと思います。
だからパトロールしている姿を見せることが交通違反や交通事故の減少の貢献につながるのです。
私自身、ノルマというかそういった目標数値を掲げられることや実績をあげるようにと強要されることに関して正直いい印象はありませんでした。ほとんどの警察官が同じ思いでいるんじゃないかと当時は思っていました。
やっぱり本音ではあら探しみたいで嫌だな、とかこんな検挙のやり方が本当に交通事故削減につながるのか、といった思いでいっぱいだったんです。
繰り返しますが、自分の地位や名誉、評価のためにとにかく実績をあげることにエネルギーを注いでいた同僚もいました。警察官に限らず世の中にはいろんな人がいるわけで自分と考え方、価値観が違う人間はたくさんいるということは頭にあったのでそういう人もいるんだな、ぐらいに思っていました。
ただ悪質な違反者を検挙するためには、時には姿を隠して取締をするということも必要なんです。
どういうことかというと、先程も述べたように、運転している際にパトカーや白バイ、警察官の姿を目にすると誰もが安全運転をしようと心がけることになります。ということは普段より速度を落としたり信号が黄色で停止したり、携帯電話の使用を控えたりするわけです。だから普段は平気で違反行為をしている違反者を検挙するためには姿を隠して取締にあたる、ということも必要なんですね。
私も警察官になる前はそういった取締をやっている警察官に対して「堂々とパトロールすればいいのに」とか「だから税金泥棒って言われるんだよ!」というふうに思っていました。自分が目指す職業であるにもかかわらず(笑)。
だから伝えたいんです。警察官に対していいイメージを持っていない方やものすごく誤解してしまっている方に。本当はやりたくないけど心を鬼にして取締を行っている警察官がたくさんいる、ということを。
そして交通違反が減ることで交通事故が減少するということも紛れもない事実なので、交通事故削減のために取締をして違反者を検挙し、交通違反を減らしていくことは大切なことです。警察にできる重要な仕事のうちの一つなわけなのです。
それと同時に、運転手の方たちに安全運転を心がけてもらうために警察官がパトロールをすることも大切なことであり、また効果的なことでもありますから。
長袖長ズボンはライダーに必須
最後に事故防止のために知っておくといいこと、頭においていてほしいことを書かせていただこうと思います。それは過去の事故を知るということです。
私は警察官時代、本当にたくさんの事故を見てきました。見るに耐え難い悲惨な事故というのも多々ありました。事故はいつどこで起こるかわかりません。自分がどんなに気をつけていても、交通事故に巻き込まれる可能性はゼロではないんです。運転するということ自体がリスクという面もありますから。
見た目も大事ですが、バイクに乗る際は安全面も考慮した服装にしておきましょう。最低限、長袖長ズボンはマストです。最近ではデザイン性に優れたライダースウェアやギアも増えてきていますよ!
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