原付免許で125ccに乗れる!? 新基準原付のギモンを調査してみた [馬力は? 税金は? ラインナップは?]

  • [CREATOR POST]名城政也

●文:[クリエイターチャンネル]名城政也

先日、TVを見ていたら、ちょっと気になるニュースが目に飛び込んできました。なんと50ccの免許で125ccに乗れてしまうようになるというではないですか!

50ccって免許のカンタンにとれるしお手軽だけど、やっぱ原チャリというくらいだから、ちっこいしスピードも出ない。どうせ乗るなら125ccくらいはほしいところ。公道を走っている車両をみていると、車格も250ccや400ccに近いし、クルマの間をすいっと走り抜けていけててスピード感も十分に見えます。

かつて『バリバリ伝説』『特攻の拓』を食い入るように読み、いまなお愛読書は『VIBES』と公言する(編集部注:ウィズハーレーじゃないんかーい!)私にとってバイクに求めるのは「WILD&スピード」。50ccだとスクーターばかりでちょっと残念ですが、125ccならネイキッドにオフロード車などなどかっこいいバイクも沢山選べて、私も気になる車種がちらほら。

普通自動車免許や原付免許で125ccに乗れるようになるなら、万年家バイカーの私でも免許を取ろうかなって俄然やる気になるってものです。自分の想像通りなのか、法改正について調べてみました!

新基準原付ってそもそもなに?

まず最初にぶつかったのが「新基準原付」という耳慣れない言葉。バイク乗りの先輩に聞いてみたところ

「今回の改正で新しいカテゴリーだよ。125ccだけど、いくつか規制を設けることで原付自動車免許の保持者でも安全に乗車できるようになってるんだよ」

はやくも「そのまま125ccに乗れる!」なんて虫のいい話じゃないという事実に行き当たりました…。そりゃあ、当然ですよね。逆に規制してもらったほうが、まったくバイクにまたがったことがない私にだって乗りこなしやすくなるかもしれないと好意的に解釈して、規制の詳細を調べてみました。

新基準原付の馬力ってどうなるの?

規制についてやはり気になるのは、やっぱり馬力。規制といったって何しろ排気量が倍以上になるんだから、グンとアップするはず。「強い! 速い!」こそが私にとってはバイクってものです。

目安をしるべく、50ccと125ccについて執筆時点の現行人気車種の馬力をチェックしてみました。

メーカー車名馬力
ヤマハXSR12515PS
ホンダスーパーカブ1259.8PS
ホンダCT-125ハンターカブ9.1PS
125cc
メーカー車名馬力
ヤマハジョグ4.5PS
ヤマハビーノ4.5PS
ホンダスーパーカブ503.7PS
50cc

125ccの平均は約11.3PS、50ccは平均約4.2PSといったところでざっと3倍。50cc免許で現行の2倍以上の馬力のバイクに乗れるならこれほど嬉しいことはありません。

と思ったのですが、新基準原付の検討内容についてまとめられた、2023年12月公開の「二輪車車両区分見直しに関する有識者検討会」資料によれば…新基準原付は原付一種の馬力が適用されるとのこと。大排気量を持ちながら、発生するパワーは5.4PSに抑えなければいけないとなっています。

一方、加速や坂道での力強さの目安となるトルクは下記の通り。

メーカー車名トルク
ヤマハXSR1251.2kgf-m
ホンダCT-125ハンターカブ1.1kgf-m
ホンダスーパーカブ1251.0kgf-m
125cc
メーカー車名トルク
ヤマハジョグ0.42kgf-m
ヤマハビーノ0.42kgf-m
ホンダスーパーカブ500.39kgf-m
50cc

125ccの平均は約1.1馬力、50ccは平均約0.41馬力といったところでざっと3倍くらい。数字から見ても交通の流れに乗れるだけの加速ができるって感じられます。

実際どうなるの!?と、先程も参照した「二輪車車両区分見直しに関する有識者検討会」資料をみてみたところ、トルクに関しては明確な基準が設けられていない様子。ですが、検討会で使われた車両をみてみると、0.7~0.8kgf-mちょいと現行の50ccからは2倍程度トルクがアップしています。

トルク規制が設けられないようでしたら、最高速はいまいちなものの、出足の速さや登板力は125ccに近い感覚は得られそうです。「強い! 速い!」も味わえる!?

新基準原付に乗ればタンデムできるのか?

家バイカーの私には、一度で良いから言ってみたい言葉があります。

「後ろ乗れよ。普段タンデムはやらねーけど、特別だぜ。」(『バリバリ伝説』巨摩郡風)

キザなバイカーのセリフ、しびれます! 125ccに乗れる!? と聞いたときから私はひらめいていました。「新基準原付なら原付免許でもタンデムできるのではないか」と。

早速タンデム用のヘルメットも買いに行こう!とテンションが高まっていたのですが……先の検討資料によれば、残念ながら新基準原付ではタンデムできないとのこと。道路交通法上の扱いは「原付一種」だってのです…。

「うぉ、夢が、俺の夢が……」

そのほかにも、以下のルールは125ccであっても原付一種免許と扱いは同様

  • 法定最高速度30km/h
  • 二段階右折

馬力規制を鑑みれば、当然といえば当然ですが、元々の排気量が変わるだけで道路交通法としては原付一種免許と変わりません。

あばよ、憧れのタンデム。

新基準原付の自動車税はいくらかかるの?

バイクを愛する気持ちは人並み以上、にもかかわらずバイクもなければ免許もない。私のこのこじらせた原因のひとつに「固定費」があります。

軽自動車税、バイク保険、自賠責保険、駐輪場代など……バイクに乗っていなくてもかかる費用が沢山!

これでもそれなりに忙しく働いていて、バイクに割く時間もなさそうだと思っている私にとっては、少しもったいないという気持ちも働いてしまうのです。

ただ、新基準原付の内容を調べていく中で、なんと原付一種と原付二種の軽自動車税が違うことに気づきました! 今まで知らなかったです。参考までに現在の軽自動車税を見てみよう。

区分排気量軽自動車税(年間)
原付一種500c以下2,000円
原付二種50cc超~90cc以下2,000円
原付二種90cc超~125cc以下2,400円
軽二輪車125cc超~250cc以下3,600円
小型二輪車250cc超6,000円

上記のように原付一種であれば原付二種よりも年間で400円安く済みます! まだ登場していませんが保険だっておそらく同様。お財布へのやさしさでは通常の125ccより若干メリットがありそうです!

しかし……検討会の資料を見ても具体的な言及はありませんでした…。つまり、まだ自動車税についてはハッキリしていないということ。

固定費がもったいないと悩むバイク乗りのためにも、自動車税については早く確定させてほしいところです……。

新基準原付はどんな車種に乗れるの?

いろいろ規制はあるものの、現行の原付と比べればはるかに選択肢が増えそうな新基準原付。検討会資料によれば、「PCX」「CB125R」「スーパーカブ110」「リード125」「ビジョン110」をベースにした車両が検討に使われていました。

これらの車種がそのまま新基準原付として販売されるかはまだ不明ですが、この中ではCB125Rあたりが好み。現行モデルでは国内メーカーはどこも出していないので望み薄ですが、アメリカンタイプとか出てきたら私の免許取得欲もマシマシになるのにな~と思ってます(笑)。メーカーさんぜひ出してください!!

自工会に検討状況を聞いてみた!

調べれば調べるほど、「自動車税はどうなる!?」「販売されるラインナップは?」と疑問がどんどん出てくる新基準原付。

はっきりしないところは専門機関に聞いてしまおう! と思い、警察庁とともに検討を行っている一般社団法人日本自動車工業会に質問をぶつけてみました。ところが…

「法体系は関係省庁、個別車両は個社にて検討を進めておりますため、現時点では、弊会より、警察庁発表内容以上のことについて、お答えすることは難しくなっております」

との回答。やはりまだまだ検討途中ということもあって、詳細はこれから詰めていくようです。

新基準といっても基本のルールは50ccと変わらない

まとめると、新基準原付は排気量が変わるだけで基本のルールは従来の原付一種と変わらなそうです。もし、私と同じように「原付一種で憧れの125ccに乗れる! これを機に125ccのバイクを買っちゃおう!」と考えている方がいたら、一旦気持ちを落ち着けて!

だってルールは原付一種と変わらないんだから! とはいえ、これからの検討次第なところもあるので、ユーザーにとっていい方に転んでくれるといいなと思う今日このごろです…。

新基準原付はあり!

そうなると「あまりメリットのないバイクがなぜ必要なんだろう?」とギモンが湧いてきます。そこで事情通のバイク乗りの先輩に聞いてみたところ、「新基準原付になることでバイクメーカーの負荷が下がって原付き区分のエントリーバイクを続けられるようになるんだよ」とのことでした。

これまで免許区分に対応するために残してきた50ccの製造ラインを縮小して125ccに一本化できれば工場の効率が高まって、バイクメーカーもコストを抑えつつラインナップを存続できるというわけなんですね。バイク業界の存続という面でも、新基準原付は必要なことなのかもしれません。

新基準原付が主流となって、このクラスにかっこいい車両がどんどん出てくればスタイリングを何よりも優先する私としてもうれしいかぎり。パワーはもっと欲しくなりそうだけど…。今後の動向が気になります!

※本記事の文責は当該執筆者(もしくはメディア)に属します。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。