原付バイクのミラー、片方だけでも違反にならない理由は?
●文:[クリエイターチャンネル] Peacock Blue K.K.
左右のミラーは安全走行する上で欠かせない装備ですが、時々右側にしか付いていない原付バイクを見かけます。
このような状態で走行することは、保安基準上問題ないのでしょうか。
原付バイクのミラーって片方でもいいの?
ミラーについての保安基準は、排気量に応じた法定速度によって異なります。
道路運送車両の保安基準における二輪自動車等の後写鏡(ミラー)および後写鏡取付装置の技術基準によると、最高速度が時速50kmを超える二輪自動車/側車付二輪自動車/三輪自動車は、左右両側にそれぞれ1個ずつ備えなければなりません。
一方で、最高速度が時速50km以下のものについては、自動車の右側に1個備えればよいとされています。
つまり、50cc以下の原付一種バイクは、法律上で最高速度が時速30kmと定められているため、右側に1個備えるだけでよいということになります。
とはいえ、備え付ければなんでも良いというわけではなく、前提として外側後方50mの交通状況を確認できるものでなければなりません。
また、2007年に保安基準の改定が行われ、ミラーの面積および形状について次のような基準が設けられました。
まず、面積は69cm2以上であること。そして形状については、円形であれば鏡面直径が95mm以上150mm以下に収まっていること、円形でないものは鏡面直径78mmの円を内包し、かつ縦120mm×横200mmの長方形に収まっていること。
ただし、これらは2007年1月1日以降に製造された車体に適用され、2006年以前に製造された車体には適用外となります。
面積や形状以外にも、取付位置は鏡面の中心とステアリングの中心の水平距離が280mm以上確保されていること/歩行者が接触しても衝撃を吸収できる構造で、傷害を与える恐れのないもの/運転姿勢でもミラーの角度を容易に調整できる機構であるもの/といった詳細な基準も設けられています。
こうした基準を満たしていない場合、整備不良の違反に問われ、50cc以下では違反点数1点および罰則金5000円、51cc以上では違反点数1点および罰則金6000円が科せられます。
ちなみに、ミラー事情に関連する法改正は1992年にも実施されています。
1992年以前は、排気量に応じた法定速度が現在と異なり、50cc未満は時速30km(低速車)、51cc以上250cc以下は時速50km(中速車)、251ccは時速60km(高速車)とされていました。
したがって、250cc以下でも片側ミラーが合法とされており、ホンダ「スーパーカブ90デラックス」のように、まれに標準仕様でも片側ミラーのモデルも存在していました。こうしたモデルにおいては、法改正以前は合法であったことから、現在でも違反に問われません。
とはいうものの、当時と現在では交通事情も異なるため、両側に備え付けたほうが安全なのは言うまでもありません。
過去にラインナップしていた片側ミラーのモデルとは
片側ミラーが違反ではないとはいえ、安全性を考慮した現行の原付バイクは左右備え付けが一般的です。では、ミラーに関する規制が現在よりも緩かった2006年以前には、どういった原付バイクが販売されていたのでしょうか。
当時は標準で片側ミラーの車種も販売されており、直近の代表的なモデルとしては、スズキ「チョイノリ」が挙げられます。
2003年2月から2007年8月に販売されていたこのモデルは、その名の通り“ちょい乗り”をコンセプトとしており、ちょっとした買い物や通勤通学など近距離での使用を狙いとしたものでした。
また、販売当初の車体価格は5万9800円と当時としても破格であり、原付バイクとして必要最低限の装備しか搭載されていませんでした。
それゆえミラーも右側にしか備えておらず、加えて、リヤサスペンションがなかったこと/キックスタートのみ(2004年にセルモデルも登場)であったこと/フレームと車軸が一体であったこと、といった徹底したコストカットぶりが話題となりました。
他のモデルとしては、ホンダの誇るロングセラー「スーパーカブ」が挙げられます。
1958年に登場して以来世界中で愛され続け、幾多ものモデルチェンジを経て現在でも新車で購入可能な1台です。
ロングセラーゆえにさまざまなグレードやカスタムモデルも販売されており、標準的なグレードでは、2000年代初頭まで片側ミラーのモデルも存在していました。法改正以降は全グレードで両側ミラーが備え付けられており、メーカー側としてもミラーに対する意識変化があったことが窺えます。
このように、50cc以下の原付バイクに関しては、ミラーが右側のみにしか備え付けられていなくても違反とはなりません。
とはいえ、現行モデルで右側のみ装着車は販売されていないことから、メーカーとして両側への備え付けを推奨していると言えます。
また、ミラー自体にも保安基準が設けられているので、カスタムする際はその内容を理解しておくことが大切です。
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