モトGPマシンと同じドライカーボンを採用したフルフェイスヘルメット WINS A-FORCE RS試用インプレッション

  • [CREATOR POST]相京雅行

●文:[クリエイターチャンネル] 相京雅行

レース車両の外装に使われる素材で作られたフルフェイスヘルメット

フルフェイス、スポーツジェット限らず、最近ではインナーバイザー付きが人気を博しています。

ただインナーバイザーを装備しようとすれば収納するスペースが必要になるので、帽体が大きくなり重量アップします。

またインナーバイザー付きヘルメットの多くは顎紐にラチェットバックルを採用することが多く、脱着が楽になる反面、やはり重量アップします。

インナーバイザー付きのような多機能型ヘルメットには軽さよりも快適性を求めるユーザーが多いのでしょう。

筆者は慢性的な首肩コリに悩まされているので、ヘルメット選びの第一条件は「軽い事」になります。

そのため多機能型ヘルメットはインプレなどで試すことはあるものの、自分で欲しいと思う製品は限られます。

ですがWINSのA-FORCE RSは多機能型でありつつ、超軽量を実現している希少なヘルメットです。その理由に関しては素材にドライカーボンを採用しているからです。

ドライカーボンだから実現できる超軽量帽体

ライダーならカーボン目に美しさを感じるはず。

市販されているカーボン外装などは一番外側にだけカーボン繊維を使い、内側はガラス繊維を積層して樹脂で固めるのが一般的です。

見ためにはカーボン柄でFRP製品と比べて多少軽く強度も増しますが、ドライカーボンとは性能に雲泥の差があります。

ドライカーボンはカーボン繊維に樹脂を浸透させたシートを圧縮することで余分な樹脂を追い出しつつ、高温高圧化で硬化させたもの。

樹脂の割合が圧倒的に少なく、ほとんどカーボン繊維なので圧倒的に軽く強度に優れている素材となります。

ただカーボンの割合が多いということは原材料が圧倒的に高いことになりますし、ドライカーボンを作るための設備を持っている工場も多くはありません。

2190万円の市販車 RC-213Vの外装は全てドライカーボンが採用されている。

そのためドライカーボン製品は超高級品となり、1gでも軽くすることが求められるレース用のマシンなどに採用されることが多く、市販品として出回ることは少ないのです。

ですがWINSのA-FORCE RSに関しては定価が4万8400円。

帽体を1サイズとしたことで量産する手間を減らすコスト対策が見受けられますが、それだけではこの価格は不可能。どんな秘密があるのか気になるところです。

なお、A-FORCE RSがドライカーボンなのに対して、FRPを採用したG-FORCE SSというシリーズもありますが、こちらもA-FORCEと同じ製法を採用しています。

A-FORCE RSの見ため

A-FORCE RSにはドライカーボンにクリア塗装のみ施したモデルと、差し色を入れたグラフィックモデルが存在します。

単色とグラフィックモデルが同価格でお買い得。

グラフィックモデルはカーボン×レッド、カーボン×ブルー、カーボン×グリーン、カーボン×イエローの4種類がラインナップされていますが、価格はカーボンにクリア塗装のモデルと変わらず4万8400円。

個人的にはグラフィックモデルを推したいですが、差し色を入れることで塗料やステッカーの重量が増えてしまうので、とことん重量に拘りたい人はカーボンにクリア塗装のモデルを推奨したいところです。

次に注目すべきはカーボンのパターンです。筆者はウェットカーボンの製造現場しか見たことがありませんが、基本的には人の手による手張りです。

そのため腕の良し悪しで曲がりがきつい角の部分はカーボン目が歪んでしまうことがあります。

角の部分も均等で美しいカーボン目が確認できます。

ですがドライカーボンは内側から圧力をかけて作っているので角に歪みがほとんどありません。美しいカーボン目を確認することができます。

本来目立たせたいメーカーロゴは同系色とすることでカーボンを引き立てています。

WINSのロゴは額と後頭部に一か所ずつありますが、額はグレーが採用しており、目立ちにくいのでカーボン目を引き立てています。

個人的に青×黄色のグラフィックが大好物です。

今回お借りしたカーボン×ブルーのグラフィックモデルはサイド部分のA-FORCEロゴにイエローが使われており、ブルーのグラフィックに引き立てられレーシーな印象を強めています。

帽体は大きめですが、特に後ろ側は大きく絞り込まれておりコンパクトに見せる工夫も見受けられます。

全体的な形としては丸みを帯びつつも立体的な造形となっており、帽体は大きめですが引き締まった印象を与えています。

A-FORCE RSの機能性

標準ではスモークのインナーバイザー付きとなる。

まずはなんと言ってもインナーバイザー付きということ。A-FORCE RSではDVS【Double Visor System】という名称が使われています。

標準はスモークシールドが採用されていますが、オプションでシルバーミラーやレインボーミラーも用意されています。

レバーはグローブをしたままでも操作しやすい。

出し入れのレバーに関しては左側シールド横についており、ヘルメット下淵に装着するインカムを邪魔しません。

シールドは段階的に開閉が可能になっており、DAC【Dual Action Closing】と名付けられていますが、上にあげる際には外側に、下に下げる際には内側に引き寄せるようになっており高い密閉性を実現しています。

口元から入った風はシールドと口元両方に取り込まれる

ベンチレーションは口元と頭頂部の二か所。口元のベンチレーションは形状的にシールドと口元両方に風が入り、曇り止めと涼しさが両立できそう。

頭頂部のベンチレーションはインナーバイザーの収納スペースを考慮して、やや上の方についています。

チンカーテンは他メーカーと比べると厚手でしっかりしている。

ノーズガードとチンカーテンはどちらも標準装備。特にチンカーテンは素材に厚みがあり、走行時の静粛性に貢献しそうな印象を受けます。

A-FORCE RSの内装

内装は全て簡単に取り外し可能です。

内装はトップ、チークパッド(左右2点)、チンカーテン、ネックカーテン、顎紐カバー(左右2点)の7点が取り外し可能。

珍しいのはネックカーテンがついていること。色々なヘルメットメーカーの製品を試していますが、他のメーカーでついているのを見たことがありません。

目に見える部分は鮮やかな赤。

色は目に見える内側には赤が採用されており見た目に鮮やかです。

帽体が1サイズなので、基本的に内装は厚め。ただ基本的にかなり柔らかいので圧迫感がありません。

チークパッドには穴が空いており潰れやすく柔軟にフィットする構造を採用しており、更にスポンジを取り出して加工することも可能です。

眼鏡のツルが入りやすいように内装の一部はスポンジが入っていない

またチークパッドの一部はスポンジが入っていない部分があり、眼鏡のツルによる圧迫を防ぐ設計も取り入れられています。

内装を外すとインカムのスピーカー用ホールが確認できた。

内装を外した帽体にはインカムのスピーカー用ホールが用意されていて、直径が広めで深さは浅め。

ただ前述したように内装は厚く柔らかいので浅いことは問題にならなそうです。

A-FORCE RSの重さ

グラフィックモデル、Mサイズの重さは1405gでした

今回お借りしたのはグラフィックモデルのMサイズ。帽体は一つ、内装でサイズを調整しているので小さいほど内装が厚くなり重量は重くなります。

測定結果は1405g。

ラチェットバックルではなくDリング、インナーバイザー無しで、更にコンパクト、軽量を売りにしたフルフェイスヘルメットで1400g前後なので驚異的な軽さです。

ですが、更に驚きの測定結果がありました。

FRPのモデルも1432gと超軽量でした。

参考になればとA-FORCEと同じ製法で作られたというFRPモデルのG-FORCE SSも測定してみたところなんと1432g。

FRPでこの装備となると1600gを超えるのが一般的ですが、ドライカーボンと同じ製法で作ると軽さに違いが出ることがわかりました。

フィット感とサイズ感

柔らかく包まれるような内装が特徴。

最近の高級ヘルメットメーカーのトレンドは、チークパッドがきつめで顎紐を引っ張りながらでないと被れません。

ですがA-FORCE RSに関しては被り口が広めで、チークパッドが柔らかいので簡単に被れます。

筆者は大体どのメーカーのヘルメットもMサイズでピッタリですが、A-FORCEに関してもMで問題なし。

ただチークパッドはきつめで慣れてしまっているせいか、少し緩く感じました。

Mサイズに関しては、トップ内装がM、チークパッドにSサイズが採用したM-SLIMが用意されています。しっかりしたサイズ感を求めたい方はチークパッドのみ1サイズダウンを用意してもいいかもしれません。

撮影中に気が付いたFOGWINの性能

撮影中は動き回っているので息が切れます

基本的に一人で撮影しているので、三脚を立ててタイマー機能を使ってシャッターを押し、車両にまたって決めポーズを繰り返しています。

秋になり朝晩は涼しくなってきたとはいえ、ヘルメットを被って動き回っていると息が切れます。

ですが今回の撮影ではシールドが曇ることはありませんでした。理由はA-FORCE RS購入時にFOGWIN引き換えクーポンで郵送してもらえる、曇り止めシートをシールドに貼っていたからです。

曇り止め効果にも優れているが貼りやすいのもありがたい。

筆者は携帯用フィルムなどの貼り付けが大の苦手。そのためFOGWINの貼り付けも自信がなかったのですが、何度でも張り直しができるので簡単にできました。

冬場や雨天時などに少しシールドを開けたり、ベンチレーションを開けたりしなくても曇らないので大変便利です。

購入時には忘れずに申し込んでおきたいところです。

実際に走って感じたA-FORCE RSの性能

日常的に使いやすい印象を受けました。

最近のヘルメットは風洞実験などが当たり前に行われており、一般道や高速道路を走行したぐらいでは空力に違いを感じることがなくなってきました。

A-FORCE RSに関しても同様で、下道高速道路共に全く問題なく、常識内のスピード領域であれば空力に不満を感じることはないでしょう。

静粛性に関しては、国内ハイエンドメーカー製品と比べると多少風切り音が大きい印象を受けました。

推測ですが、これは内装のフィット感に理由がありそうな気がします。

A-FORCE RSは被る際にスポッと簡単に被れてしまいます。かぶり口が広いのでチンカーテンやネックカーテンがついていても、下からの巻き上げの風がある程度入ってきます。

チークパッドは頬に沿うようにしっかりフィットしますが、圧迫感が少なめなので耳の方まで多少風が入ってくることで音が大きくなっている印象です。

またチークパッドが緩めだとヘルメットの重さを肩や首に感じることもありますが、A-FORCE RSは規格外の軽さなので感じません。頬が潰れないのでインカムの通話もしやすくなります。

ベンチレーションに関しては極低速時には口元、頭の上どちらも風の流れを感じませんが、速度に乗じて流入量が多くなってくるので蒸れを感じることがありません。

高速道路走行時には口元にかなりの風が入ってきているのを感じたので息苦しさを緩和することができます。。

絶対的なスポーツ性能より日常的な使い勝手

2時間ほど走って感じたのは、スポーツ性能よりも日常的な使い勝手を考えて作っているのではないか?ということ。

今まで色々なヘルメットを被ってきましたが、ここまで内装が柔らかく被りやすい製品は初めてでした。

インナーバイザーやラチェットバックルは使い勝手が良いですが、重くなるので首や肩こりに悩まされている筆者のような人は敬遠しがち。

ところがA-FORCE RSは便利さと軽さを両立しています。

ドライカーボンという素材だけ聞くと、レースなどのスパルタンな印象を受けますが、WINSはスポーツ性能よりも使用者の快適性の為にドライカーボンを採用したのではないかと思います。


※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。

最新の記事