
4月19日・20日にモビリティリゾートもてぎで開催された「もてぎ2&4レース」にて、全日本ロードレース選手権の開幕戦が行われた。開催クラスはJSB1000のみだが、国内トップレベルのライダーたちによる戦いにはヤマハ、ホンダ、スズキの3メーカーがファクトリー体制で参戦。さらには昨年より猛威を振るうファクトリースペックのドゥカティ、そしてファクトリースペックのBMWも加わった。
●文/写真:ヤングマシン編集部(佐藤寿宏)
昨年の最終戦から連勝を続けた水野涼
2025年の全日本ロードレース選手権がようやく4月19日・20日に栃木県・モビリティリゾートもてぎで開幕しました。4月9日・10日には、PRE-TEST “Round ZERO”と題し、レースのあるJSB1000クラスだけではなく、全クラスのテストがありました。少し肌寒い感じもありましたが、そのままレースもやってくれればいいのにと思ってしまいましたね。
昨年は例年より1か月も早い3月上旬に鈴鹿2&4レースがありましたが、今年は、4月下旬と去年に比べると約2か月も遅い開幕。今回も2&4レースのため、JSB1000クラス以外は、5月のSUGOが開幕という事態になっています。昨年、4輪のF1日本GPが10月から4月に移動した影響を受け、各サーキットもいろいろ調整してくださっているのですが、JSB1000クラス以外のクラスを地方選手権と一緒にやるとかできないものなんでしょうか? あまりにもレース数が少ないですから。
JSB1000クラスのみだが、ようやく2025年シーズンが開幕した全日本ロードレース選手権。
話しを戻して、今回の開幕戦もてぎ2&4レースは「Honda HRC Test Team」と「Team SUZUKI CN CHALLENG」というホンダとスズキのワークスチーム、「オートレース宇部レーシングチーム」がBMW M1000RRのファクトリーマシンを持ち込み、迎え撃つヤマハファクトリーとDUCATI Team KAGAYAMAとの戦いに注目が集まりました。
結果的に開幕戦は、水野涼+DUCATIが圧勝となりました。事前テストから予選まで常にトップタイムをマーク。レース直前のサイティングラップに1号車にクラッチトラブルが発生しピットアウトできず、急きょ2号車カーに乗り換えてスタート。序盤こそ長島哲太や野左根航汰がトップ争いをかき回すものの、4周目の5コーナーで水野はトップに立つと一気にペースアップ。この4周目にファステストラップとなる1分47秒706をマークすると、その後の5周も1分47秒台で周回し一気に独走態勢を築きました。
開幕戦で独走優勝を飾り喜びを爆発させた水野。昨年の最終戦鈴鹿のダブルウインから3連勝だ。
「2号車だったことはレース後に知りました。基本的に個体差はありますが2台とも同じ仕様にしてもらっていますので、完ぺきに仕上げてくれたチームに感謝です。今シーズンの目標はシリーズチャンピオンなので、まずは開幕戦を勝ててよかったです。この調子で次戦SUGOも勝ち続けていきたいですね」と水野。
開幕戦の前週に行われたPRE-TEST “Round ZERO”が昨年の最終戦鈴鹿以来の走行となった水野。マシンは、フレーム、スイングアームは新品に。ECUはイタリア本国で昨年のデータをもとに2025年仕様になり、サムブレーキ(リアハンドブレーキ)を付けるなどアップデートしています。また、チーフエンジニアに大森秀紀氏が加入しました。大森氏は、TSRで長年活躍し、昨年からフリーランスとなっていました。「本当は、テスト前に一度走っておきたかったけれど」とチームを率いる加賀山就臣監督は語っていましたが、決勝直前のトラブル以外は、ほぼ完ぺきと言っていいレースでした。
序盤の混戦を冷静にやり過ごしトップに立つと一気に2番手以下を引き離して行った#3水野涼。
「結果からすれば勝てましたし、うまく乗り切れました。メカニックの仕事ぶりを誇りに思います。ウチはメインカー、Tカーではなく、どちらも一緒。調子のいい方をレースでチョイスするやり方。ただ、2台同じ状態にそろえるのは、本当に大変なことんだよね」と加賀山監督。
ただ昨年、時間のない中、3日間寝ないで準備に奔走したことに比べれば、2年目の今年は遥かに楽だと言います。昨年のデータも生かし、さらにレベルアップした走りを次戦SUGOでも見せてくれそうですね。
中須賀克行と浦本修充、高橋巧の3台がバトル!
水野の後方でし烈な2位争いを繰り広げたのが、ヤマハファクトリーの中須賀克行と、8年振りの全日本参戦となったオートレース宇部の浦本修充、そしてHRCの高橋巧の3台でした。このバトルは、中須賀と浦本が先行し、追い上げて来た高橋が加わりましたが、レース終盤にペースが上がらない高橋が遅れ、中須賀と浦本の一騎打ちとなりましたが、中須賀が浦本を抑え切って2位でゴールしました。
2位争いを制し「最低限のことはできた」と語った#2中須賀克行。次戦、逆襲なるか!?
「厳しいレースウイークでしたね。2025年仕様でいろいろ変えてトライしてみたのですが、まとめきれなかったのが現実でした。他がバージョンアップしているので、何とかウイングレットを含む、今年型の良いところを引き出そうと、チームスタッフも一生懸命頑張ってくれて、レースには、現状で最高の状態で送り出してくれました。2位という結果は、最低限の仕事ができたと思います。ただ、目指しているのはあくまで優勝なので、次回のSUGOは、今回得たデータをもとに、去年、(岡本)裕生がコースレコードを出したデータもあるので、しっかり精査して、また頂点を目指します」と中須賀。
ウイングレットが新たに装着された2025年型YAMAHA YZF-R1は、確実に良くなっていますが、まだ、その良さを引き出せていないと言います。ただ、基本設計は2015年と最も古いことは否めません。ドゥカティ、そして新たに現れたBMWファクトリーマシンと、どう戦っていくか見ものです。
そして中須賀とのバトルに敗れはしたものの、久しぶりの全日本JSB1000クラスで3位となったのは、浦本でした。
7シーズン、スペインスーパーバイクにチャレンジした浦本が大きく成長して全日本に戻って来た。
「まずは、戦闘力の高いマシンを用意してくださったチームに感謝ですね。JSB1000クラスでは初めて上位を走りましたし、中須賀選手と一緒に走れましたから。限られた時間の中だったので、ロングランもできていなかったので、マシン、タイヤ、そしてボク自身も終盤にどうなるか分からない部分もありました。そんな状況で表彰台に上がれたのはうれしいですね。今回は大きなトライはできていませんし、走り始めから少しアジャストしたくらいなので、次戦はタイヤを含めてテストしていきたいですね」と浦本。
データのない中、前週のテストでシェイクダウンし、浦本自身もBMWを初ライド。僅かな時間で速さを見せつけました。今回のもてぎは、スズキMotoGPテストで走っていたこともありましたが、次戦のSUGOは、8年振りに走るそうです。その速さに注目したいところですね。
2019年以来の全日本復帰となったHRC。スタッフも若いメンバーが多くなっていた。人材の育成にレースの現場は適している。
HRCの高橋は、スタートでやや出遅れるものの、徐々にペースを上げ2位争いの後方につけていましたが、レース終盤は、スライドが目立ち、単独4位でゴールしました。今シーズンより、SHOWAからオーリンズにスイッチしたことが大きく、レースに勝つレベルまで仕上げるには時間がなかったようです。Team SUZUKI CN CHALLENGの津田拓也もそうですが、あくまで鈴鹿8耐に向けた実戦テストが最大の目的となっています。それでも全日本JSB1000クラスに、ホンダとスズキのワークスチームが復活した事実は大きな出来事でした。これも昨年、DUCATIワークスマシンを持ち込んだDUCATI Team KAGAYAMAが、その起爆剤になったと言えるでしょう。HRCは今回のみ、スズキは、次戦のSUGO、最終戦の鈴鹿への出場を考えてくれているみたいです。ぜひ、来シーズンは、フルエントリーしていただきたいものです。
昨年の鈴鹿8耐でレースに帰ってきたファクトリースズキ。チームスズキCNチャレンジからは開発ライダーも務める津田拓也が出走し、今年の鈴鹿8耐で昨年以上の結果を出すべくテストを重ねる。
さて、次戦は、5月24日(土)・25日(日)にシリーズ第2戦が宮城県・スポーツランドSUGOで行われます。JSB1000クラスとST600クラスは、2レース制なので、土曜日もレースが見られますよー。その前週の5月13日(火)~15日(木)には公開テストもSUGOであります。こちらは入場・駐車場代だけで全日本ライダーの走りを目の当たりにできますよー。ぜひぜひサーキットに足を運んでください。
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