
1980年代に巻き起こったバイクブーム、およびその源流となった2ストレーサーレプリカブーム。ここでは、タンデムツイン(前後2気筒)という独創的なエンジンレイアウトを採用するも、短命に終わってしまった幻のレプリカ、カワサキKR250について振り返ろう。※本記事はヤングマシン特別号 青春単車大図鑑からの転載です。
●文:ヤングマシン編集部
「ガンマ」が火をつけたレプリカ戦線にカワサキも参入
スズキRG250Γ(ガンマ)の登場で活気づいたレプリカ戦線に、勇んでカワサキも参入する。
1984年に投入されたKR250は、異彩を放つタンデムツインを搭載。
シリンダーを前後に配置し、並列2気筒を縦置きとしたようなエンジンレイアウトは、1978~1981年のWGP250、1978~1982年の同350で連続タイトルを勝ち取ったKRから継承した。
市販バイクでの採用例は、後にも先にもKRのみである。
さらに、低回転域ではロータリーバルブが作動し、高回転域では吸気ポート両側に設けられたリードバルブからも吸入するRRIS(ロータリーリードバルブインテークシステム)も、GPレーサーのKR譲り。
シャーシも最新技術が凝縮されており、軽量で高剛性なアルミフレーム、フロント16インチ、車体下部に水平配置されたリンク式のモノショックなどを採用。
GPZ系の流れを汲む角型スタイルも独創的だった。
【1984 KAWASAKI KR250】レーサーのKRとはまったく異なる、GPZ系の角張ったスタイルを採用。フルカウルながらエンジンを露出したデザインも独特だった。レプリカ然としたマシンを熱望していたライダーには支持されず、短命に終わることとなる。主要諸元■水冷2スト縦置き並列2気筒 ロータリーリードバルブ 249cc 45ps/10000rpm 3.7kg-m/8000rpm ■133kg ■タイヤサイズF=100/90-16 R=110/80-18 ●発売当時価格:49万8000円
1985年には排気デバイスのKVSSを追加
しかし、初期型は低中速域の扱いにくさがよく指摘された。これを受けて1985年には排気デバイスのKVSSを追加したKR250Sが登場。
しかしシェアを拡大するには至らず、1988年にはタンデムツインから一般的な並列2気筒に変更したKR-1を打ち出したが、またも不発に終わった。
カワサキは1982年でGP活動を休止しており、イメージリーダーが不在だったことも不振の要因に挙げられる。
技術としては革新的だったものの、短命に終わったKR。レプリカのジャンルにおけるカワサキの逆襲は、1989年のZXRまで待たねばならない。
前後のシリンダーごとにクランクシャフトを設置。これをギヤでつないで駆動力に変えている。シリンダーの振動を抑制するカムダンパーを市販車で初採用したほか、サブフレーム付きのアルミ製リヤアーム、水平に配置されたリヤショックなど先進メカをふんだんに投入。しかし、機構の複雑化や整備性に課題を残した。
武骨なサイレンサーを上下に配置。真円テールランプとともにKR特有のリヤビューを形成する。
リヤショックの減衰力調整ダイヤルをアンダーカウルに設置。工具不要で4段階に調整できる親切設計だ。プリロードもダイヤルで調整可。
いかにもレプリカらしい独立式メーターだが、この手のモデルとしては珍しく燃料計を装備。初期型のみ独特なハンドルマウントのミラーを備える。
低速トルクは薄いが、7000rpmから豹変。実力は一線級で、ゼロヨンでは驚愕の12秒台を叩き出した。
カワサキKR250/S 系譜
1985 カワサキKR250S
【1985 KAWASAKI KR250S】排気デバイスKVSSを搭載し、ミラーをカウルに移設した2代目。これがラストモデルに。
1988 カワサキKR-1
【1988 KAWASAKI KR-1】フルカウルに排気デバイスKIps付きのパラツインを搭載。F3レース参戦を前提に開発。
1989 カワサキKR-1S
【1989 KAWASAKI KR-1S】1年でフルチェンジし、フレームほか大部分が新作に。同社最後の2ストレプリカとなる。
1989 カワサキKR-1R
【1989 KAWASAKI KR-1R】Sと同時発売されたSP仕様。φ35mm大径キャブやクロスミッションを備える
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