
’22年度よりETC車における高速道路料金の休日割引は大型連休に適用されないことになっていたが、’25年度よりすべての3連休が除外対象になる。渋滞緩和に加えてオーバーツーリズムの抑制を目的としているというが、多くのユーザーにとっては単に使い勝手が悪くなり、損をするだけのような感覚になってしまいそうだ。
●文: Nom(埜邑博道)
大型連休の休日割引除外から、年間すべての3連休へ除外対象を拡大
4月から始まる’25年度は、GW、お盆休み、年末年始およびシルバーウイーク(昨年度から追加され、’25年度は9月13日(土)~15日[月・祝]と21日(日)~23日[火・祝])に加え、すべての3連休で高速道路のETC車・休日割引が適用されないことになりました。
3月14日、国交省とNEXCO各社、本州四国連絡道路会社、宮城県道路公社がオーバーツーリズムの抑制と、観光需要の分散・平準化のため、4つの大型連休に加えて今年度からはすべての3連休(下の表参照)も割引除外とすることを発表しました。
ご覧のように、’25年度の3連休すべてが割引除外日となった。
’22年度からスタートした大型連休の休日割引の除外ですが、高速道路会社が発表した資料によると除外以前に比べると渋滞量が緩和され、それなりの効果を発揮していると言います(とはいえ、’23年度に比べると’24年度は渋滞が増加しています)。
ただ、大型連休中に高速道路を使用して帰省や観光をしたことがある人にとっては、大幅に渋滞が緩和されたとは実感としてとても思うことができず、それまであった30%の割引料金が適用されずに金銭的負担だけが強まったと感じている人も多いはずです。
コロナ前の令和1(2019)年と比較すると、休日割引適用除外となった令和5(2023)年はかなり渋滞が緩和されたが、昨年(令和6年)は再び上昇傾向に。大型連休しかまとまった休みが取れない人は、割引なしで渋滞が予想されてもそこで行くしかないのだ。SWはシルバーウイークの略。
昨今の働き方改革などで、休日の取り方もだいぶ変わってきているとはいえ、大手よりも体力も人手が少ない中小企業(日本の企業の99、7%を占めています)ではなかなか自分の思うように休暇が取得できないのが現状。それゆえに、休日割引がなくても大型連休に止むなく高速道路を利用せざるを得ないことになっているわけです。
そして、今年度は大型連休に加えてすべての3連休にも割引が適用されないことになったのですから、今年度、3連休を利用しての旅行を計画していた人にとっては、ちょっと大袈裟ですが青天の霹靂かもしれません。
調べて申し込まないと使えない周遊パス、いったいどれだけの人に恩恵が?
来年度はGW、お盆休み、シルバーウイーク、年末年始を除いて6回の3連休があります。有給休暇をとりづらい仕事や職場の人にとってはせっかく大手を振って休める連休なのに、なんとも残念でやりきれない気持ちを抱くことでしょう。
発表では、観光周遊の促進を目的に以前から実施している周遊パス(NEXCO各社が企画、一定のエリアの高速道路を通行・周遊する場合、平日・休日ともにETC搭載の二輪・四輪ともに割引料金が適用される)については、一層の利用拡大を図るため、自治体等との連携を強化して企画・販売を行っていくとしていますが、使用したいエリア/地域には設定されていなかったり、NEXCO各社のウェブサイトで事前申し込みが必要だったりと、申し込みなどは一切不要で、適用日にETC搭載車で高速道路を利用すれば自動的に高速料金が30%引きになる休日割引に比べると使い勝手はよくありません。
NEXCO各社が、割引料金が適用される周遊パスなどのドライブプランを用意しているが、ETCカード番号や個人情報を入力する申し込みが必要だったり、行きたいエリアには設定されていなかったり、さらにはどのコースを選べばいいか分かりにくかったりと、慣れないと使い勝手はあまりよくない。
そう考えると、休日割引の3連休の除外や、その代替処置としての周遊パスの拡大といった今回の高速道路料金に関する施策は、休暇の予定が年度前にはしっかり決まっていて、さらには有給休暇も取得しやすいような大企業のサラリーマンや公務員であることが前提になっているように思えてしまいます。要するに、日本において99、7%を占める中小企業に勤務する人たちを置き去りにしているとも取れるのです。まあ、とてもありがちな施策ですが……。
高速道路料金といえば、気になるのは’25年度の二輪車ETC定率割引とツーリングプランについて。今年度のツーリングプランと定率割引は昨年の3月15日に発表されましたが、3月17日現在において何の発表もないので国土交通省高速道路課に’25年度に向けた進捗状況を聞いてみました。
2024年度は全22コースが設定されたツーリングプラン。今年はどんなコース設定になるのだろうか。
担当者によると、近日中に発表できる見込みだが、いつになるかは現時点では公表できない、いずれにしても4月1日からスタートする予定なので3月中には各高速道路会社から発表される見込みとのこと。
そして定率割引についても、現時点ではまだ発表はできず、近日中に発表されるとのことでした。
順当にいけば、ツーリングプランも定率割引も今週中には発表されるはずです。ツーリングプランがより利用しやすいコース設定になっていること、定率割引の適用条件が緩和(今年度は100km走行が80km走行に低減されました)されることを期待しましょう。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
最新の関連記事([連載] 多事走論 from Nom)
ガソリン価格が過去最高値に迫るのに補助金は…… ガソリン代の高騰が止まりません。 全国平均ガソリン価格が1Lあたり170円以上になった場合に、1Lあたり5円を上限にして燃料元売り業者に補助金が支給され[…]
新基準原付 2025年、バイク界に起こる最大の変化は従来の50cc原付(=原付一種)に代わって登場することになった「新基準原付」でしょう。 従来の50cc原付が、今年の11月から施行される排ガス規制に[…]
一度掴んだ税金は離さない! というお役所論理は、もういいでしょう 12月20日に与党(自民党と公明党)が取りまとめた「令和7年度税制改正大綱」の「令和7年度税制改正大綱の基本的な考え」の3ページ目に「[…]
持ち株会社を設立し、ホンダと日産、さらに三菱自動車も加わる? ホンダと日産が経営統合するという話が、12月18日からTVのニュースやワイドショーで大きく取り上げられています。 両社は、今年の3月に自動[…]
アクアライン上り線の混雑時間帯の料金が1600円に! 2025年4月から新料金制を導入 12月3日に開催された「第4回東京湾アクアライン交通円滑化対策検討会」において、令和7(2025)年4月からアク[…]
最新の関連記事(交通/社会問題)
都市部では今や日常的に見かける「特定小型原動機付自転車」 運転免許不要で公道上を走ることのできる新カテゴリー「特定小型原動機付自転車(以下、特定小型原付)」が注目されて久しい。 2023年の法改正で特[…]
ある日のこと。街をぶらぶら歩いていると路肩に駐車されている、YAMAHAドラッグスターを見つけました。「やっぱりアメリカンはかっこいいな」と足を止めて見ていたところ、そこに警察官が来て駐禁ステッカーを[…]
スマホで各種申請書を作成、二次元バーコード経由でプリントアウト可能に 自動車検査登録手続きのデジタル化を推進する国土交通省は、関東運輸局にて2025年2月より「登録手続き申請書メーカー」を運用開始した[…]
「緑のおじさん」こと「駐車監視員」の概要 緑のおじさんは、正式には「駐車監視員」と言い、警察から業務委託を受け、駐車違反車両の取り締まり業務に当たる人を指す。 緑のおじさんと呼ばれているものの、18歳[…]
無事故・無違反で居続けるためには、日頃から事故に遭わない・起こさない、違反をせず安全運転を心がけるという「意識」が大切 日頃からクルマやバイクを運転しているなら、長い間、無事故・無違反で居続けるのは簡[…]
人気記事ランキング(全体)
マーヴェリックの愛機「カワサキGPZ900R」劇中車を振り返る 滑走路で戦闘機と加速競争する姿、美人教官とのタンデム、苦悩を抱えて丘の上に佇む夕暮れ──。数々の印象的なシーンに初代ニンジャ=GPZ90[…]
日本のハイオクは海外ではレギュラー!? オートバイに限らずクルマでも輸入車はほぼすべてハイオク指定。世界に誇る高性能な日本車は、基本的にレギュラーガソリンの給油で事足りる。 そういうところが日本の技術[…]
2025年2月6日改訂 125ccスクーターは16歳から取得可能な“AT小型限定普通二輪免許”で運転できる バイクの免許は原付(~50cc)、小型限定普通二輪(~125cc)、普通二輪(~400cc)[…]
2025新型「KLX230」「KLX230 S」について知るなら… KLX230シリーズの振り返りや、無印/Sについてまずおさらいしたいなら、こちらの記事をチェック。 カワサキがKLX230シリーズを[…]
ASEANモデルのプレミアム化を推進するヤマハ 以前からスクープ情報をお届けしているとおり、WR155シリーズやYZF-R15などが200ccに進化して登場することになりそうだ。 国内のヤマハから公道[…]
最新の投稿記事(全体)
設置・格納時の利便性を追求したシェード 朝からバイクで遊ぶ時の、トランポでの車中泊に。車内でツナギに着替える際の、目隠しに。 バイク乗りなら意外と気になるのがクルマのサンシェード。できれば、パッと広げ[…]
ブランニュー色はライトグレーのボディにライトブルーのホイール ヤマハが「MT-25」「MT-03」の2025年モデルを発表。YZF-R25&R3と同様にシートまわり&テールカウルが変更されたほか、アシ[…]
新たな2眼ポジションライトでシャープな表情に ヤマハが「YZF-R25」「YZF-R3」を発表。ヘッドライトまわりは中央にプロジェクターLEDライト、これまでに見たことのないデザインの左右2眼(4眼?[…]
光岡自動車が運営するトライアンフ横浜港北 昔からのバイク好きであれば、ボンネビルやタイガーという名称に懐かしさを覚え、若いライダーならスピードトリプルに接する機会もあるであろう、英国車を代表するブラン[…]
大型連休の休日割引除外から、年間すべての3連休へ除外対象を拡大 4月から始まる’25年度は、GW、お盆休み、年末年始およびシルバーウイーク(昨年度から追加され、’25年度は9月13日(土)~15日[月[…]
- 1
- 2