
“ボロボロなバイク”を売っている、伝説のバイク屋とも言われた「湘南ジャンクヤード」をご存知だろうか? 通常ではありえない光景が、ここにはある。知る人ぞ知る場所なだけあって、独特の雰囲気と販売スタイルは、初心者には踏み込みにくいとうのも事実。そんなわけで、「湘南ジャンクヤード攻略法」と称して、初めてでも迷わない、湘南ジャンクヤードの回り方を皆様にお伝えするぞ!
●文:ヤングマシン編集部(DIY道楽テツ)
かつてバイク乗りに親しまれていた「解体屋」文化
ボロボロのバイクが無造作に山に(比喩ではなく本当に山積み)なっていて、客は工具を片手にその山に登って部品を剥ぎ取ってきたり、バラした部品を集めてその場で一台のバイクを組み上げる。そんな光景が、かつては日本各地で見られた。
そんな“解体屋文化”も、中古バイクの東南アジアへの輸出というビジネスの台頭で、すっかり廃れてしまった昨今。だけども、時代とともに姿を変えながらも、その魂(あえてスピリットと言わせてもらおう)を受け継いでいるのが、「湘南ジャンクヤード」なのである。
ちなみに湘南ジャンクヤードは「解体屋」ではない。だけど「普通の中古バイク屋」でもない。湘南「ジャンクヤード」なのである。以下、ひとつひとつ詳しく語っていこう。
現在の所在地はYSP湘南の奥
かつては相模川の河川敷ほど近い場所にあったが、護岸工事の影響で2025年3月現在は近隣地へ移転している。
いまだに旧住所に行ってしまうお客さんがあとを絶たないそう。間違わないように、情報をアップデートしておこう!
湘南ジャンクヤード
〒253-0073 神奈川県茅ヶ崎市中島242−1
営業時間 10:00-17:00
定休日 水・木曜日
※YSP湘南の奥
湘南ジャンクヤードの特徴とコンセプト
さてさて、まず最初に「湘南ジャンクヤード」の最大の特徴をお伝えすると「中古バイクの現状販売」ということ。中古バイク屋さんのようで、中古バイク屋さんではない。まず、納車前点検(整備)がない。もちろん、バイクを薦めてくる営業マンもいない。
お客さん(ユーザー)が、自分の手で触れて、目で見て、チェックして、感じて、そしてエンジンを始動して、その音を聞いて、アクセルを吹かしてみて…そして自分が納得したものを購入するという「自己責任」スタイルなのである。
自己責任というと、なんか突き放されたように感じる方もいるかもしれない。自分で判断することに不安がある方は申し訳ないけども、「普通の中古バイク屋」に行ったほうが無難だ。おそらく、湘南ジャンクヤードは楽しめない。
だけれども、日常メンテレベルでも「自分で整備できる」、「自分で整備したい」もしくは「整備できるようになりたい」と思うユーザーにとっては、湘南ジャンクヤードは最高のお店になるハズ。
納車前点検(整備)がないということは、それだけ販売価格が抑えられるということもポイント。つまりは「安く買える」のだ。そして、販売証明書を発行してもらってお金を支払えば、その場ですぐ持って帰ることが可能になるのである。
なお、希望すればオイル交換程度のメンテナンスは、店舗のほうで請け負ってくれる。ナンバーを取得して乗って帰る場合などは、相談してみるといいだろう。
価格帯別に並ぶエリア
湘南ジャンクヤードの最大の特長と言えるのが、その価格帯だ。
敷地の中央には価格別に車両が並べられていて、5000円~11万円と普通のバイク屋さんではまずお目にかかれない値段と状態のバイクに出会えるのだ。
11万円コーナー ※美品。
8万8000円コーナー ※綺麗な車体が多い
7万7000円コーナー ※まだ綺麗
6万6000円コーナー ※外装がやや傷んでいたりする
4万4000円コーナー ※かなり面白くなってくる
3万3000円コーナー ※この価格以上はエンジン実動
2万2000円コーナー ※かなりクセがある価格帯。レア車が潜む穴場ゾーンでもある
1万1000円コーナー ※正直ボロい
5500円コーナー ※プロ向け
当然高いほうが車体の程度が良く、安いほうが程度が悪いものになっていく。これを順番に見ていくのが、本当に楽しい。高いほうから見るのがいいか、安いほうから見るのがいいかは、個人の好みによって違いがあるだろうけれども、筆者はより安い車体(そしてボロボロになるほど)面白くなってくる性格なので、いつも高価格帯から低価格に歩きながら楽しんでいる。
これが湘南ジャンクヤードの醍醐味。てか、年式が古いとか外装が痛んいるとかって次元じゃないマシンがわんさと並んでいる。たとえばこんなバイク、普通の中古バイク屋さんじゃ絶対見れないでしょ?
とくに3万3000円以下は魑魅魍魎、笑ってしまうほど「酷い」バイクにたくさん出会える。これは「ヤフーオークション」の「部品取り車」をリアルに見れるようなもので、これがとても楽しいのだ。
たとえ同じ車種、同じ年式、同じカラーリングだったとしても、8万円と6万円と3万円のコーナーに並んでいたりする。何がどう違って倍以上の価格になっているのか? 財布事情と、自分のメンテナンス能力を照らし合わせてウンウン唸りながら悩む。なんて楽しみ方ができるのが、湘南ジャンクヤードの一番の特長かもしれない。
外周を取り巻く、未整理エリアも面白い!
敷地内の価格帯別エリアをぐるっと取り囲むのは、入口付近の比較的安価な価格帯のエリアや、奥の比較的高価格帯のバイクたち。また、正面手前にあるのは整備待ちだったり、まだ未整理のバイクが並んでいる。
この外周エリアのバイク価格はマチマチで、取り付けられているラベルに書かれていたり、ミラーにかかれていたりといった感じ。表記がないものは、店員さんに聞けば教えてくれる。気になったのがあれば、ぜひチェックしてみてほしい。
なんたって数が膨大なので、宝探しの気分が味わえる。時間をかけて、じっくり楽しみながらバイク探しをしてほしいとのことだ。ひとりで黙々と探すのも楽しいし、仲間とワイワイやりながらバイク探しするのも楽しいだろう!
圧巻の在庫数と回転率
今回取材に行ったときの在庫数は、約700台だった。半年前に行ったときは約450台だったので、かなり在庫が増えていることになる。
でもこれは売れ残っているとかではなくて、逆にバンバン売れてしまうからドンドン増やしてる(!)とのこと。数字でいえば月間計算で100~120台を販売しており、これを営業日換算にすると実働日数で割れば1日あたり5~6台売れていることになる。バイク屋さんとしては、異例の回転の速さじゃなかろうか?
まとめ:ワクワクできるバイクアミューズメントパーク
湘南ジャンクヤードは、バイクを自分で整備できる人にとっては、格安で中古バイクを手に入れられる魅力的なショップだ。通常のショップとはまったく違うコンセプトを持っていて、需要のあるなしや、売れ筋とかガン無視(←失礼!)のラインナップは、結果としてとてもマニアックなラインナップに繋がっていたりもする。
状態や価格帯に応じた車両があり、初心者向けの安価なバイクから、マニア向けの希少車まで幅広く揃っており、メカ好きにとっては(たとえ見ているだけでも)宝探しのような楽しみが味わえる希少なバイク屋といえるぞ。
ちなみに筆者にとって湘南ジャンクヤードは「ワクワクできるアミューズメントパーク」だ。このバイクをどうやって直して、どれだけ綺麗にできるだろう? と想像するのがとっても楽しい。
これを読んだ皆様も(これまで敬遠していた方も!)ぜひ湘南ジャンクヤードに来て、見て、触れてみて、自分なりの楽しみを見つけてみてほしい。そして気になったバイクは跨ってみて、エンジンをかけて、じっくりしっかりチェックして、納得できたらゲットしてみて!
ちなみに宣伝っぽいけど、これはあくまで筆者個人的なお勧めであり、報酬や依頼などは一切受けていないことをお伝えしておく。大きな駐車場があるのでデカい車でも来店可能だ。トランポでもトラックでも遠慮なくいってみようぜ!
私のYouTubeチャンネルのほうでは、「バイクを元気にしたい!」というコンセプトのもと、3日に1本ペースでバイクいじりの動画を投稿しております。よかったら遊びにきてくださいね~!★メインチャンネルはコチラ→「DIY道楽」 ☆サブチャンネルもよろしく→「のまてつ父ちゃんの日常」
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(メンテナンス&レストア)
赤サビの上から直接塗って黒サビに転換。愛車を守るBAN-ZIのラストロックシステム 【RUSTLOCK(サビ転換下処理剤)サビキラープロ】赤サビの上から直接塗ることで黒サビに変化する転換剤機能と、上塗[…]
熱膨張率の均一化によって様々なアドバンテージがある 2ストローク/4ストロークエンジンを問わず、エンジン性能を向上するためには様々な課題や問題がある。特に大きな課題は、“熱膨張率”に関わる問題だ。 「[…]
「消えないブレーキランプ」は他人ごとじゃない 街中をバイクで走っていたところ、前を行くスクーターのブレーキランプがなんか明るいな~と思ったら、どうやら点灯しっぱなしになってるぽかったのですよ。 毎度乗[…]
クニペックス製と瓜二つ!? アストロプロダクツの新製品「プライヤーレンチ」 ボルトやナットの2面を隙間なく掴める、平行に移動するジョー、グリップを握る力が増力される独自のジョイント構造、全長に対して著[…]
軽量で取り扱いやすく、初心者にもピッタリ 「UNIT スイングアームリフトスタンド」は、片手でも扱いやすい約767gという軽さが魅力です。使用後は折りたたんでコンパクトに収納できるため、ガレージのスペ[…]
最新の関連記事(ニュース&トピックス)
V12をミッドに縦置きした「まぎれもなきスーパーカー」 ランボルギーニ・ディアブロは、1990年にデビューした5.7リッターV12をミッドに縦置きしたまぎれもないスーパーカー。 時あたかもクライスラー[…]
初心者からベテランまで、老若男女だれもが一日中楽しめる オフロードバイクさえあれば、初心者だろうとベテランだろうと、老若男女だれもが一日中楽しめるフリーライドイベントとして企画されたのがエンジョイライ[…]
ミニカーとは何かがわかると登録変更のハードルもわかる まず「ミニカー」とは、法律上どのような乗り物として扱われるのか、基本的な定義から押さえておく必要がある。実はこれ、道路交通法上では「普通自動車」扱[…]
ホンダCB1000Fコンセプト、カワサキZ900RSへの「負けん気」を胸に登場か? 鈴鹿8耐でデモ走行を披露したホンダの「CB1000Fコンセプト」は、生産終了したCB1300シリーズの後継として期待[…]
長距離ツーリング休憩時の立ち寄り場所の参考に 本記事の作成にあたり、AIの補助を借りつつ、「東名高速道路 グルメ おすすめ」「サービスエリア ランキング」「各SA PA名 グルメ」といったキーワードで[…]
人気記事ランキング(全体)
4気筒の「ニンジャZX-R」、2気筒「ニンジャ」計6モデルに10色を新設定 カワサキは欧州でフルカウルスポーツ「ニンジャ」ファミリーのうち、4気筒モデル「Ninja ZX-6R」「Ninja ZX-4[…]
ミニカーとは何かがわかると登録変更のハードルもわかる まず「ミニカー」とは、法律上どのような乗り物として扱われるのか、基本的な定義から押さえておく必要がある。実はこれ、道路交通法上では「普通自動車」扱[…]
ヤマハFZR400:極太アルミフレームがレーサーの趣 ライバルがアルミフレームで先鋭化する中、ついにヤマハもFZの発展進化形をリリースする。 1986年5月に発売されたFZRは、前年に発売されたFZ7[…]
ピカイチの快適性を誇り、タンデムユースも無理ナシ ようやく全日本JーGP3の開幕戦が近づいてきて(記事制作時)、最近はバイクに乗るトレーニングもスタート。 筋力が増えたことで、これまで苦手だった車種で[…]
50ccでも実用カブとは別系統のOHCスポーツ専用エンジンを開発! ホンダは1971年に、50ccではじめてCBの称号がつくベンリイCB50を発売した。 それまで50ccにもスポーツモデルは存在したが[…]
最新の投稿記事(全体)
バイク用ヘルメットに特化した消臭・除菌機 MAXWINの「MUFU MF-C1」は、バイク用フルフェイスヘルメットなどの小空間に特化したオゾン除菌/消臭機で、ニオイのこもりやすいヘルメット内を15分〜[…]
全天候に対応! 防水仕様の高機能バックパック アールエスタイチの「WPカーゴバックパック RSB283」は、急な雨でも安心な防水気室を2つ搭載。メイン収納とフロントポケットの両方に防水加工が施されてお[…]
24〜32Lに容量可変!ツーリングに柔軟対応 「KEMIMOTO ツーリング シートバッグ」は、荷物の量に応じて容量を24L〜32Lに拡張できる万能バッグ。1泊2日の小旅行から、2泊3日以上のキャンプ[…]
V12をミッドに縦置きした「まぎれもなきスーパーカー」 ランボルギーニ・ディアブロは、1990年にデビューした5.7リッターV12をミッドに縦置きしたまぎれもないスーパーカー。 時あたかもクライスラー[…]
北米市場の要請を受け2スト専業から脱却 ’50年代中盤に4スト単気筒車を手がけたことはあるものの、’52年から2輪事業への参入を開始したスズキは、’70年代初頭までは、基本的に2スト専業メーカーだった[…]