
バイクにまつわる会話をしている時には何となくお互いに理解しているような気がするものの、バイク雑誌の記事などに出てくる言葉は記事によって言ってることが違うのでは? そう思ったことのある方は意外と少なくないはず。ここでは、小型二輪とか大型バイクとか、原付一種とか普通自動二輪とか、混在するとわかりにくくなる用語を整理して解説してみたい。
●文:ヤングマシン編集部
『通称』と『道路交通法における区分』、『道路運送車両法による区分』がある
バイク雑誌やWEBヤングマシンの記事を読んでいて「これってどうなってるの?」と混乱したことがある方もいらっしゃると思う。のっけから言い訳タイムであるが、文脈によって用語を使い分けることがあり、それがわかりにくさに繋がっていることもあるのである。
さて、バイクを仕分けする方法の代表的なものが「排気量による区分」である。一般的な呼称(通称)による分け方のほかに、道路交通法と道路運送車両法による分け方があって、じつは知らないとまあまあややこしい。
まず通称だが、50cc以下のバイクは原付や原付一種、ミニバイク、50ccクラスと呼ぶことが多い、昔はゼロハンと呼ぶ文化もあった(750ccをナナハンと呼んだことの影響だろう)。そして51~125ccについては原付二種や原2(げんに)、125ccクラスと呼ぶ。さらに、かつては小型二輪という通称もあったが最近はあまり聞かない(理由は後述する)。そして126~250ccについては軽二輪、ニーゴー、ニーハン、250ccクラスなど。251~400ccはヨンヒャク、限定的ではあるがミドルクラスなどと呼ぶこともあるだろうか。また、126〜400ccをまとめて中型二輪と呼んだ時代もあった。これは免許制度が現在のような普通/大型という分け方ではなく、自動二輪免許に対して「中型に限る/小型に限る」という限定条項が加えられたものだったことに起因する。中免 or 限定解除という言い方もこれが元だ。
そして401cc以上についてはビッグバイク、大型バイク、大型二輪と呼ぶが、さらに細かく600ccクラス、1000ccクラス(リッタークラス)、オーバーリッタークラスなどと分けることもある。600cc前後もミドルクラスと呼ぶことがあり、400ccをミドルクラスと呼ぶこととの区別は文脈によって使い分けている場合もある。
これらにスクーターやネイキッド、アドベンチャーといったカテゴリー分けが加わるのだから、読者の方には申し訳ないほどややこしくなっている……と認めざるを得ない。
ちなみに『251cc~』などと表現しているが、厳密にいえば『250ccを超える』が正しい。とはいうものの「250ccを超えて400ccまで」とすると堅すぎる雰囲気になるだけでなく文字数も増えてしまって読みにくくなる。なので便宜的に「251~400cc」のようにしているのである。ご理解とご容赦をば。
排気量の異なるバイク、そして電動のバイクはどう分けたらいいのか……
公的なものでも混乱しがちな『道路交通法』と『道路運送車両法』
次に紹介するのは、道路交通について規定している「道路交通法」による区分だ。この中に、さらに『車両の区分』と『免許の種類』がある。
道路交通法における車両の区分についてはシンプルで、50cc以下は原動機付自転車(原付)、51~400ccは普通自動二輪車(普通二輪)、401cc以上は大型自動二輪車(大型二輪)となっている。
免許の種類も基本的にこれと重なるのだが、125ccまでの小型限定が存在する点が違いと言える。50cc以下が運転できるのは原動機付自転車免許(原付免許)、125ccまでは小型限定普通自動二輪車免許(小型限定)、400ccまでのものは普通自動二輪車免許(普通二輪免許)、そして401cc以上は大型自動二輪免許(大型二輪免許)だ。
排気量(cc) | ~50 | ~125 | ~250 | ~400 | 401~ |
車両の区分(道路交通法) | 原付 | 普通二輪 | 普通二輪 | 普通二輪 | 大型二輪 |
免許の種類(道路交通法) | 原付免許 | 小型限定 普通二輪免許 | 普通二輪 免許 | 普通二輪 免許 | 大型二輪 免許 |
上記は免許を取得したライダーならばイメージしやすいだろう。では、以下はどうだろうか。
こちらは道路運送車両法による区分である。50cc以下は第一種原動機付自転車(原付一種)、51~125ccは第二種原動機付自転車(原付二種)、126~250ccは二輪の軽自動車(軽二輪)、そして251cc以上は二輪の小型自動車(小型二輪)となっているのだ。
排気量(cc) | ~50 | ~125 | ~250 | 251~ |
道路運送車両法 | 原付一種 | 原付二種 | 軽二輪 | 小型二輪 |
このほか、電動バイクについては排気量というもの自体が存在しないため、定格出力(最高出力とは別)で区分されている。0.6kW以下は原付一種、0.6kW超1.0kW以下は原付二種、そして1.0kW超は全て軽二輪である。
そんなこんなで、例えば2500ccの場合でも、道交法では大型二輪なのに道路運送車両法では小型二輪になったりし、同じように125ccは原付(二種)だったり普通二輪だったりするのである。
二輪の運転免許は全部で7種類
バイクの免許は原付(~50cc)、小型限定普通二輪(~125cc)、普通二輪(~400cc)、大型二輪(排気量無制限)があり、原付を除いたものに“AT限定”が設定されている。つまり、4種類+3で、計7種類の二輪運転免許が存在するわけだ。ちなみに大型二輪免許は18歳以上でないと取得できないが、原付~普通二輪免許は16歳から取得可能となっている。
ついでに言うと、小型限定普通二輪免許、普通二輪免許、大型二輪免許、そして普通自動車免許は学科が共通になっており、いずれかの免許を持っていれば他の免許を取る際に学科試験を受ける必要がない。
免許の種類 /運転可能車両 | 四輪自動車 (大型/普通) | 原付免許 | 小型限定 普通二輪免許 | 普通二輪免許 | 大型二輪免許 |
401cc~ | 運転できる | ||||
126~400cc | 運転できる | 運転できる | |||
51~125cc | 運転できる | 運転できる | 運転できる | ||
~50cc | 運転できる | 運転できる | 運転できる | 運転できる | 運転できる |
基本的に上位の免許を持っていれば小さいバイクは運転でき、通称マニュアル免許(AT限定なし)はもちろんオートマチック車が運転できる。逆に、“AT限定”が付いている場合はマニュアルトランスミッション車……というかクラッチ操作を要する車両が運転できない。
このほか、普通/大型自動車免許を持っている場合は原付が運転できるが、これを125ccのバイクまで範囲拡大できないかという議論もある。実現はまだまだハードルが高そうではあるが。
2025年4月からは特定の125ccバイクが50ccと同じ扱いに
50cc以下のエンジン車が排出ガス規制の影響によりこれまで通りのコストでは生産継続が困難になることを受け、最高出力を4kW以下に制限した125cc以下のバイクが“新基準原付”として2025年4月1日から原付免許で運転できるようになる。この改正は業界団体が求めたもので、メーカーは新たな区分に対応した商品開発に動き出している。
ただし、総排気量は125ccであっても新基準原付はあくまでも『原付相当』の乗り物であり、30km/hの法定速度や二段階右折ルールの適用、2人乗り不可などは今までの50cc原付となんら変わらないことに注意が必要だ。また、出力制御されていない車両は新基準原付に合致しないため運転不可である。
このほか新基準原付はこれまでの50ccバイクと同じ税金額が適用されることも明らかになっている。
車検が必要なのは251cc以上!
クルマは基本的にすべて車検があるが、バイクは道路運送車両法における原付と軽二輪について車検を受ける必要がない。そして251cc以上の小型二輪車は運輸局による検査を受けて合格すると車検証が交付され、新車の初回登録時からは3年間、その後は2年間の有効期間を持つ。引き続き車両を使用する場合は継続検査を受けることになる。
すべての排気量で軽自動車税を払う義務があり、軽二輪は取得時に、小型二輪車は車検時に、重量税の支払い義務も生じる。ちなみに、自賠責保険の区分も道路運送車両法に基づいた原付/軽二輪/小型二輪で分けられている。
まとめ
以上のように、排気量で区分しているとはいえ、なんの法律に基づいているかで呼称が変わったりする。書き手の中でも道路交通法と道路運送車両法が厳密に区別できていない場合があるので、そんな記事を目にしたときは「フッ……」とニヤける程度で見逃していただければ幸いである。
※本記事の文責は当該執筆者(もしくはメディア)に属します。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
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