もっとも多様な個性があるのはツイン=2気筒
輸入車では125ccクラスから、国産では250ccクラスから1800cc超までが揃う2気筒勢は、その組み合わせや配置によってまったく違ったフィーリングとなるのが面白いところ。おおまかに分けると並列2気筒、V型2気筒、水平対向2気筒があり、2つの気筒で起こる爆発(正確には燃焼)のタイミングが等間隔だったり不等間隔だったり、不等間隔でもどのくらいのタイミングのズレなのか、といったものがクランク位相角で変わり、フィーリングに影響してくる。等間隔ではビィーーンと回っていくが、不等間隔ではバルルルッ、とか、ドドドドッ、といったようにパルス感や鼓動感が生まれやすい。
等間隔爆発の2気筒は、並列2気筒の360度クランク、またはBMWの水平対向2気筒が挙げられる。左右の気筒は同時に上死点と下死点を迎えながら、2回転に1回という4ストロークゆえ交互に爆発し、なめらかなフィーリングが持ち味だ。一方で、あまり高回転追求には向かない面もある。水平対向2気筒の縦置きクランクに関しては後述しよう。
不等間隔にはさまざまあるが、クルーザー系を除いて代表的なのは小~中排気量車に多い並列2気筒の180度クランク、そしてドゥカティの90度Vツインだろう。並列2気筒180度クランクは、360度よりもパルス感が強く、かつ高回転向き。排気量が大きくなると振動がかなり大きくなる傾向にあるが、現代のエンジンはバランサー入りなので気にしなくていい。もっともクセがなくオーソドックスな2気筒といえる。
90度Vツインは各気筒がトルク変動を打ち消(省略)ざっくりいえばアクセルを開けたときには豊かな鼓動感があるが、閉じると振動が大幅に減ってまろやかなフィーリングになるのが特徴。また、クランク質量も小さいため、ハンドリングが軽く鋭くなる傾向も。単気筒に近いダイレクト感とメリハリ感がありつつ、ツインらしく高回転域まで伸びやかに吹け上がる。特にドゥカティなどは「階段を駆け上がっていくような」と表現されるように、高揚感のある回転上昇が持ち味だ。
同じ90度Vツインを採用するのは、現行車ではスズキのVストロームやモトグッツィ全般など。大きなくくりで言えばスズキとドゥカティは似たフィーリングと言えなくもないが、グッツィはまったく異なる。
グッツィがなぜ異なるかというと、BMWの水平対向2気筒にも通じるハナシで、クランクの向きが縦置きなのだ。横置きクランクは回転軸が車体の左右方向なのに対し、縦置きは前後方向。いろいろ小難しい原理はさておき、ざっくりいうと横置きはエンジンを回しているとバイクを傾けるのに抵抗する力が生まれるが、縦置きにはそれがない。なので、大きく重い車体であっても、意外なほど軽快に扱える。
もうひとつの大きな特徴は、トルクリアクションだろう。アクセルを開閉する際に、クランクが加速/減速するトルクの反動で車体が傾くのだ。グッツィは開けると右に傾き、閉じると左へ。BMWは、以前の空冷エンジンはグッツィと同様だが、最新の水冷はクランクの回転方向が逆なので開閉によるリアクションも逆。ただし、後者はクラッチ軸がクランクと逆回転のためある程度打ち消し合い、リアクション自体が小さいのも特徴だ。縦置きは総じてクセが強いともいえるが、だからこそ面白い! と夢中になるライダーも少なくない。
VツインにはほかにKTMの75度やハーレーダビッドソンの45度などがあり、それぞれに独特なパルス感を持っている。KTMは90度よりも単気筒っぽいフィーリングがあり、ハーレーは重厚かつ“ザ・不等間隔”という、回転域ごとに表情を変える様が面白い。また、並列2気筒のなのに90度Vツインのようなフィーリングを生む“270度位相クランク”も最近は主流といえるほどの勢力に育ってきた。
以下のように、180度クランクが多い小~中排気量の並列2気筒に対し、大排気量車になると270度クランクが増える。欧州車のツインは、型式がそのままメーカーの代名詞になっているものが多い。
※本稿は2019年7月13日公開記事を再編集したものです。※本記事の文責は当該執筆者(もしくはメディア)に属します。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
最新の関連記事(ビギナー/初心者)
高回転のバルブ往復にスプリングが追従できないとバルブがピストンに衝突してエンジンを壊すので、赤いゾーンまで回すのは絶対に厳禁! 回転計(タコメーター)の高回転域に表示されるレッドゾーン、赤くなっている[…]
スーパースポーツの前傾姿勢は特にコーナリング向き! A.スーパースポーツとネイキッドでは、前傾度の違いだけでなく、シート座面へ体重の載る位置、重心となるエンジン位置とライダーの関係も違います。体幹移動[…]
二輪免許こそない私だけれど、子供の頃から「特攻の拓」や「バリバリ伝説」のようなバイク漫画がとにかく好きだった。学生時代ともなれば、漫画から読み取れた知識だけで「バリバリ伝説の主人公、巨摩 郡みたいにC[…]
ハイグリップ仕様でなくても溝が少なく浅い最新スポーツタイヤ! A. 確かに最新のツーリングを意識したスポーツタイヤは、少し前のサーキット専用のハイグリップタイヤのように、トレッドに刻まれた溝が少なく、[…]
場所によっては恒例行事なバイクの冬眠(長期保管) 「バイクの冬眠」…雪が多い地域の皆様にとっては、冬から春にかけて毎年恒例の行事かもしれませんね。また、雪国じゃなかったとしても、諸事情により長期間バイ[…]
最新の関連記事(メカニズム/テクノロジー)
高回転のバルブ往復にスプリングが追従できないとバルブがピストンに衝突してエンジンを壊すので、赤いゾーンまで回すのは絶対に厳禁! 回転計(タコメーター)の高回転域に表示されるレッドゾーン、赤くなっている[…]
2スト500cc最強GPマシンを4ストで凌駕せよ! ホンダが世界GP復帰宣言後、1978年から開発していた500cc4ストロークV型4気筒のNR500。 当時の最高峰500ccクラスで覇を競っていたヤ[…]
クラッチレバー不要でギヤチェンジできる自動遠心クラッチ 今から65年前にの1958年に誕生したスーパーカブC100は、ホンダ創業者の本田宗一郎氏と専務の藤澤武夫氏が先頭に立って、欧州への視察などを通じ[…]
新エンジン、電動スポーツ、電動都市型バイク、全部やる! ホンダは新しい内燃機関と電動パワーユニットの両方で行く! そう高らかに宣言するかのような発表がミラノショー(EICMA 2024)で行われた。ひ[…]
プロアームはかつてのVFRを思わせるが……? ホンダが全く新しい内燃機関のコンセプトモデルとして世界初公開したのは、『new ICE concept』と名付けられたV3エンジンだった。電動過給機付きと[…]
人気記事ランキング(全体)
私は冬用グローブを使うときにインナーグローブを併用しています。防寒目的もありますし、冬用グローブを清潔に保つ目的もあります。最近、長年使い続けたインナーグローブが破れてしまったこともあり、新品にしよう[…]
TRIJYA(トライジャ):カフェレーサースタイルのX500 パンアメリカやナイトスターなど水冷ハーレーのカスタムにも力を入れているトライジャ。以前の記事では同社のX350カスタム車を掲載したが、今回[…]
高回転のバルブ往復にスプリングが追従できないとバルブがピストンに衝突してエンジンを壊すので、赤いゾーンまで回すのは絶対に厳禁! 回転計(タコメーター)の高回転域に表示されるレッドゾーン、赤くなっている[…]
従来は縦2連だったメーターが横2連配置に ヤマハは、2004年に欧州で誕生し、2017年より日本を含むアジア市場へ(250として)導入されたスポーツスクーター「XMAX」の2025年モデルを欧州および[…]
2018 カワサキ ニンジャ400:250と共通設計としたことでツアラーから変貌(2018年8月30日公開記事より) 2018年型でフルモデルチェンジを敢行した際、従来の650共通ではなく250共通設[…]
最新の投稿記事(全体)
振動、路面を蹴飛ばす感じ、エンジンで走らせる気持ちよさ バイクはエンジンを懐に抱えて走るような乗り物だ。単純にライダーとエンジンの距離が近いことがエンジンの存在感を大きく感じさせるだけではなく、エンジ[…]
何よりも高耐摩耗性の実現 圧倒的な耐摩耗性を誇るのが、アルミめっきシリンダーの大きな特徴である。iB井上ボーリングが、アルミめっきスリーブを作ろうと考えた最大の理由は、同社の社是でもある「減らないシリ[…]
ベテランカメラマンに「これはアートだ」と言わしめる流麗なフォルム リヤタイヤが路面を蹴り飛ばすかのような、豪快で胸の空く加速フィールはスタートダッシュだけではなく、速度レンジが上がってからもまだまだ続[…]
Screenshot 未塗装樹脂の白化 バイクのミラーや泥除け(フェンダー)、樹脂製リアボックスなどに使われている黒い未塗装樹脂部品。ここに使われている素材の多くは「ポリプロピレン」という軽くて丈夫な[…]
スイングアームにスプールを装着できれば、アドベンチャーやオフ車でもガレージREVOが使える スーパースポーツモデルやビッグバイクユーザーのみなさんからご好評をいただいているガレージREVOは、バイク置[…]