
同クラスの中でもほどよいスポーティーさを売りにして、人気を集めているカワサキ ニンジャ400とニンジャ250。2025モデルでは新型に切り替わる可能性があるという噂もある今、現行2024モデルのベースとなった2018モデルの比較試乗インプレッションとともに、その魅力を振り返ろう。※記事内容はヤングマシン2018年1月号(2017年11月24日発売)に基づく
●文:沼尾宏明(ヤングマシン編集部) ●テスター:丸山浩
2018 カワサキ ニンジャ250:電スロなしで全域をカバー/限界性能もアップ(ヤングマシン2018年1月号より)
伸び上がる! レッドゾーン以降もキッチリ回り、従来型より明確に高回転パワーがアップしている。ライバルのCBR250RRと直接比較したわけではないが、これは速い──。私は2018ニンジャ250の実力を貸し切りのサーキットで存分に味わいながら、少し気がかりも感じていた。
2017年11月16日、九州は熊本のオートポリスで、カワサキが新型ニンジャ250&400の試乗会を開催。いち早く新型に乗る機会を得たわけだが、まずストレートで全開にすると、スムーズに回転が上昇し、レッドゾーンの1万3500回転まで気持ちよく吹け上がる。従来型のレッドゾーンは1万3000回転以降で、1万2500回転あたりから加速が鈍くなっていた。しかし、新型はそこからが真骨頂。ギュンと伸び切り、レブリミットとなる1万4000回転まで回る。この領域で馬力を稼いでいるのだろうが、まさに高回転高出力。RRも同様だが、2気筒ながら相当な高回転化でパワーを絞り出すことに成功している。
気がかりを感じていたのはこの部分だ。高回転高出力を求めると、過去のレーサーレプリカのように低速域のトルクが薄くなり、扱いやすさや日常での使い勝手が犠牲になる。ニンジャも同じ轍を踏むのか、と思ったのだ。しかし、街乗りを想定して走ってみると、まったくの取り越し苦労だった。発進直後からトルクが盛り上がり、3000回転も回せば普通に走れてしまう。以降も谷は感じさせず、キレイに上昇。中速域のパワーバンドは幅広く、レスポンスも自然だ。RRのように電子制御スロットルじゃないのに、上も下もOKのスムーズな出力特性に驚いた。
そして、ハンドリングもスポーティーになった印象だ。倒し込みはシャープではないものの、ほどよく軽快。接地感が高いため、誰でも安心して寝かせていけるフィーリングだ。高速コーナーでもフロントに安定感があり、しっかり荷重をかけて旋回力を引き出せる。このハンドリングを支えるのが大径化した正立フォーク。限界域での剛性は倒立に敵わないが、対応できる速度域が広がった。もちろん街乗りでは十分。低中速でのステアリングの軽さも正立ならではの美点だ。また、従来はサスの動きに固さがあり、コストダウンの影響を感じたが、新型はダンピングが利き、奥で踏ん張る。路面追従性も良好で、上質なサスだなと思う。ブレーキも必要十分。初期タッチが穏やかで、握り込めば効力を発揮する。サーキットでメリハリが利くタイプではないものの、ふだん使いに適している。
全体的に、RRが持つエンジンのパンチ力や車体のガッチリした剛性感といったレーシーさとは違う。だが、従来のニンジャが持っていたハードルの低さはそのままに、速さを上乗せしたのが新型。エンジンも車体もマシンのキャラクターによく合っている。むろん新たなデザインもカッコイイ。質感にもチープな感じはない。より多様なライダーを満足させつつ、今後も新しいライダーを増やす役割を担っていくはず。ニンジャ250は新型でも決してブレていない。
【2018 KAWASAKI Ninja250/KRT EDITION】
2018 カワサキ ニンジャ400:トガりまくり、新次元のレプリカだ!(ヤングマシン2018年1月号より)
続いて試乗した400は…さらに驚いた。コイツはまさにスーパースポーツだ。車体は250とほぼ共通で、車重はわずか+1kg。これに48psの399ccツインを搭載している。走りは、下から上まで全域でトルクが厚くなり、レスポンスも力強い。レッドゾーンは250より低い1万2000回転以降となるが、伸び切り感もキッチリある。この速さは圧巻だ。一方、ハンドリングは250クラスの軽さそのままで、旋回速度が速い。私がもて耐で乗る250のチューニングマシンに近い乗り味だが、さすがにここまで速くはならない。それをカワサキが自らやってのけた。しかも単純にボアかストロークの一方を上げた、おざなりな仕事ではなく、どちらもアップしたのが素晴らしい。
バイアスタイヤの250も頑張っていたが、ラジアルの400はグリップや安定感などコーナリング性能がさらに上手。ややゴツゴツ感のある250から乗り心地もさらに快適になった。それにしても今どきの400としては珍しくトガッている。初心者から1〜2ランク上の腕前を向けを狙った印象だ。往年の400直4レプリカを彷彿とさせるが、ツインのニンジャの方が中低速トルクは断然上。サーキットはもちろん、ストリートの速さも相当なものだ。この割り切りは、万人向けの250があったからこそだろう。改めて400の面白さを知らしめてくれた1台だ。
【2018 KAWASAKI Ninja400/KRT EDITION】
2018 ニンジャ250/400比較(ヤングマシン2018年1月号より)
Ninja 250(右)とNinja 400(左)の車体と足まわりは基本的に同じ。カウルもカラーリング以外は変わらないため、見分けるのは大変かも? ただし250がバイアスタイヤなのに対し、400はラジアルで後輪が140/70-17→150/60R17と太めだ。一方、エンジンは専用設計で、クランクケース以外は2台とも大幅に異なる。また、400はサイレンサーが大容量で、250より長いのが特徴だ。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(カワサキ [KAWASAKI])
機能美を実現したナップス限定ビレットパーツが登場 カワサキZ900RSは、最高出力111ps/8500rpmを発揮する水冷4ストローク並列4気筒DOHC4バルブ、948ccエンジンを搭載したネオクラシ[…]
レプリカに手を出していなかったカワサキがワークスマシンZXR-7から製品化! 1988年、秋のIFMAケルンショーでカワサキのZXR750がセンセーショナルなデビューを飾った。 なぜ衝撃的だったかとい[…]
粘り強い100mmボアビッグシングルと23Lタンク KLR650の心臓部は、水冷4ストロークDOHC4バルブ単気筒エンジンだ。排気量は652ccで、ボア径はなんと100mmにも達する超ビッグシングルと[…]
昔ながらの構成で爆発的な人気を獲得 ゼファーはレーサーレプリカ時代に終止符を打ち、以後のネイキッドの基盤を構築したモデルで、近年のネオクラシックブームの原点と言えなくもない存在。改めて振り返ると、’8[…]
勝つための合理性と最新テクノロジーが辿り着いたパラレルツイン! レーシングマシンは勝つためを最優先に開発される。だから優位なテクノロジーなら躊躇せず採用する斬新で個性の集合体のように思われがち。 とこ[…]
人気記事ランキング(全体)
250cc水冷90°V型2気筒でDOHC8バルブが、たった2年でいとも容易くパワーアップ! ホンダが1982年5月、V型エンジン・レボリューションのVF750Fに次ぐ第2弾としてVT250Fをリリース[…]
インカムが使えない状況は突然やって来る!ハンドサインは現代でも有効 走行中は基本的に1人きりになるバイク。たとえ複数人でのマスツーリングだとしても、運転中は他のライダーと会話ができないため、何か伝えた[…]
悪質な交通違反の一つ、「無免許運転」 今回は無免許運転をして捕まってしまったときに、軽微な違反とはどのような違いがあるのか紹介していきます。 ■違反内容により異なる処理無免許運転の人が違反で捕まった場[…]
6/30:スズキの謎ティーザー、正体判明! スズキが公開した謎のティーザー、その正体が遂に判明したことを報じたのは6月30日のこと。ビリヤードの8番玉を写した予告画像は、やはりヤングマシンが以前からス[…]
RZ250の歴代モデル 1980 RZ250(4L3):白と黒の2色で登場 ’80年8月から日本での発売が始まった初代RZ250のカラーは、ニューヤマハブラックとニューパールホワイトの2色。発売前から[…]
最新の投稿記事(全体)
機能美を実現したナップス限定ビレットパーツが登場 カワサキZ900RSは、最高出力111ps/8500rpmを発揮する水冷4ストローク並列4気筒DOHC4バルブ、948ccエンジンを搭載したネオクラシ[…]
バッテリーで発熱する「着るコタツ」で冬を快適に ワークマンの「ヒーターウエア」シリーズは、ウエア内に電熱ヒーターを内蔵した防寒アイテム。スイッチひとつで温まることから「着るコタツ」として人気が拡大し、[…]
知られざる黎明期の物語 最初の完成車は1903年に誕生した。シングルループのフレームに搭載する409cc単気筒エンジンは、ペダルを漕いで勢いをつけてから始動させる。出力3psを発揮し、トランスミッショ[…]
充実してきた普通二輪クラスの輸入モデル この記事で取り上げるのは、日本に本格上陸を果たす注目の輸入ネオクラシックモデルばかりだ。それが、中国のVツインクルーザー「ベンダ ナポレオンボブ250」、英国老[…]
テールデザインでトラディショナルから新世代を意識させる! 1992年に発表後、実に30年間という史上まれにみるロングセラーだったCB400 SUPER FOUR。 その経緯にはいくつか節目となるモデル[…]
- 1
- 2





































