
1988年の851からスタートしたドゥカティのスーパーバイクは、2025年モデルのパニガーレV4Sでついに第7世代に突入。イタリアのヴァレルンガサーキットで開催された試乗会に参加してきた。
●文:ヤングマシン編集部(小川勤) ●写真:ドゥカティ
速さを身近にする驚異のエンジニアリング
ドゥカティのMotoGPマシンであるデスモセディチGPに最も近い市販車。これが2025年モデルのパニガーレV4Sの答えだ。デスモセディチGPは、2年連続でタイトルを獲得し、今シーズンも絶好調なMotoGP最強&最速マシン。
パニガーレV4Sは、90度V型4気筒エンジンの爆発間隔(クランク2回転で270度→180度→90度→180度)、φ81mmのピストン径、逆回転クランク、バルブ開閉機構であるデスモドローミックなどがデスモセディチGPと共通、206psを発揮。驚くべきは、ミザノサーキットでフランチェスコ・バニャイヤが駆ったパニガーレV4SとデスモセディチGPのラップタイムで、その差は約4秒。これが冒頭の答えの裏付けでもある。ちなみに第6世代のパニガーレV4Sとのタイム差は、約1秒となっている。
【イタリアの試乗会に参加データロガーで走りも検証】今回の試乗会は、走行毎にエンジニアのフランチェスコさんがパソコンを見ながら僕の走りを解析。オプションのデータロガーを使うと、走りを『見える化』することができ、ライン取り、選択ギヤ、ブレーキングポイント、スロットルの開け方などをグラフで見ることが可能になるのだ。
【TESTER 小川勤】第1世代から第7世代まで、様々なドゥカティスーパーバイクに試乗してきた。すべてのキャラクターを明確に思い出せるのは、世代ごとにきちんと進化をしてきたからだろう。
好タイムに繋がるNEWパニガーレV4Sの大きなトピックは、デザイン、電子制御、シャシーの3つ。
デザインはパニガーレらしさはそのままに刷新。風の流れを調律し、空力と熱排出性をアップ。タンク&シート形状の変更は、跨った瞬間にわかるフィット感の高さを持つ。
電子制御とシャシーを刷新した効果は、初めてのヴァレルンガサーキットを走り出してすぐに体感。まず、どんなコーナーもラインを外さずに走れることに驚く。ライダーの操作がパニガーレV4Sにタイムラグなく伝わるイメージで、それはペースを上げても変わらない。
今回、フレームは40%、片持ちから両持ちになったスイングームは37%も横方向の剛性を落としており、このドラスティックなシャシー改革が様々なシーンで効果を発揮。特にフルブレーキング時やフルバンク時のサスペンションが本来の仕事をしにくいシーンで、シャシーが旋回性を高めてくれるというのだ。これがアルゴリズムを使った予測型の電子制御とも完璧なマッチングを見せ、速さを身近にしている。
制御では、フロントブレーキをかけるとリヤブレーキも自動で利くレースeCBSが秀逸だった。さらに状況によってはフロントを離してもリヤは効力を発揮し続けるというのだ。ここでのリヤブレーキの役目は減速ではなく車体姿勢制御。リヤサスを伸びにくくし、バイクが曲がりやすい低い姿勢を作り出すというわけで、現役MotoGPライダーの操作をバイクが行ってくれるのである。
この『よく止まって、よく曲がる』感覚は画期的で、それがスロットル操作を大胆にする。その加速はとにかく強烈だ。初代パニガーレV4Sにはどこにいくかわからない危うさがあったが、最新パニガーレV4Sは狙いを定めたところに瞬間移動するようなイメージである。
驚きなのは、予測型電子制御や剛性を落としたシャシー開発をMotoGPマシンを開発するドゥカティコルセが手がけていること。MotoGPマシンの挙動やMotoGPライダーの操作を、今考えられる最高のエンジニアリングで落とし込んだのが2025年モデルのパニガーレV4Sなのだ。
【ライディングポジション】燃料タンクをコンパクトにし、フィット感をアップ。足つき性は前モデル同様、僕にはキツくて、腰をずらして片足で支えるイメージ。跨ったままだとスタンドもしまいにくい。(身長165cm/体重68kg)
2025年のパニガーレV4Sはスーパーバイクの第7世代へ!
主要諸元■️ホイールベース1485mm シート高850mm 車重191kg(燃料除く)■️水冷4ストV型4気筒DOHC4バルブ 1103cc ボア×ストローク81×53.5mm 圧縮比14対1 216ps/13500rpm 12.3kg-m/11250rpm 燃料タンク容量17L 変速機6速リターン ■️ブレーキ形式(前・後)φ330mmシングルディスク×4ピストンキャリパー・φ245mmシングルディスク×2ピストンキャリパー ■️タイヤサイズF=120/70ZR17 R=200/60ZR17 ●日本導入時期:2024年内 ●価格:414万1000円(V4S)、323万9000円(V4)
派手なグラフィックがなくてもデザインが成立するのがドゥカティのスーパーバイクの特徴。
ユーロ5+規制に通っているスーパースポーツで、エンジン下でマフラーが完結しているのはパニガーレだけだ。
エンジンを車体の一部と考えるドゥカティらしいシャシー構成が進化
最高峰のスーパーバイクとしては、第3世代の999以来となる両持ちスイングアームを採用。デスモセディチGPのノウハウが込められたドゥカティコルセ製で、第6世代の片持ちよりも若干長くなっている。
【リヤサスはエンジンにマウント】前後サスペンションはオーリンズ製電子制御式。これが予測型の電子制御と素晴らしいマッチングを見せる。リヤサス上部はエンジンに直接マウントすることで、車体の横剛性が高くならないようにしている。
エンジン上部に置かれるフロントフレーム。2018年式のパニガーレV4Sの初期型のフレームには穴がなく、翌年のパニガーレV4Rから拳大の穴が空いた。ドゥカティは、常識にとらわれない形で剛性バランスを追求し続ける。
【予測型電子制御を採用】メーターは6.9インチで、かなり大き目。モードは「レースA」「レースB」「スポーツ」「ロード」「ウェット」を用意。パワーモードは「フル」「ハイ」「ミディアム」「ロー」の4つを設定。表示方法は多彩だ。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(ドゥカティ)
ドゥカティ初の単気筒モタードモデル モタードモデルといえば、通常はオフ車の派生モデルとして作られるが、この「ハイパーモタード698モノ」は、ロードスポーツキャラに100%振りきって、車体剛性も高めに設[…]
走行&レクチャーを1日繰り返す 上のメインカットは、イタリア人講師のリビオ・ベローナさんを追いかける筆者と、その走りを後ろから観察する元世界GP250ccクラスチャンピオン・原田哲也さん。コースはMo[…]
イベントが盛りだくさん! ドゥカティオーナーであるドゥカティストや、ドゥカティファンを対象としたお祭り『DUCATI DAY』が2025年も開催された。 会場である千葉県木更津市にあるポルシェ・エクス[…]
予選はCBR1000RR-RとCBR600RRがトップタイムだったが…… 今年のマン島は、予選ウィークがはじまった5月26日から雨が降らない日が一日もない、悪天候に見舞われた。そのため予選はことごとく[…]
豊富な在庫に自信アリ。探しているモデルがきっと見つかる店 ドゥカティ大阪ノースは、もともとドゥカティ名神尼崎店として兵庫県で営業していたが、7年前に現在店舗がある大阪府箕面市へ場所を移し、店舗を全面リ[…]
最新の関連記事(新型スーパースポーツ)
2024年モデル概要:排ガス規制に適合し、実質的な値下げを敢行 2020年モデルでは平成28年排出ガス規制(≒ユーロ4)対応だったため、2022年11月以降は車両の生産自体が不可となっていたが、その後[…]
軽量化とパワーアップの両面を果たしたフルモデルチェンジ:カワサキ「ニンジャ400」【2018モデル】 発売は、2018年2月1日。2017年モデルまでのニンジャ400は、海外向けのERシリーズをベース[…]
意外な従順さを見せるBMWのスーパーマシン サーキットでのパフォーマンスを第一に考えられたマシンではあるものの、意外と一般公道を転がすような速度域でも扱いにくさは感じない。 エンジン特性がしっかり調教[…]
長年愛されたKRTエディションが廃止 2025年モデルの発売は、2025年4月26日。2023年モデルと同様に、令和2年排出ガス規制適合を受けた2022年モデルのスペックを引き継ぐ形で登場した。 ニン[…]
チャンピオンマシンからダイレクトにフィードバック トプラック・ラズガットリオグルの手により2024年のスーパーバイク世界選手権でチャンピオンを獲得したマシン、それがBMWモトラッド「M1000RR」だ[…]
人気記事ランキング(全体)
最新モデルはペルチェデバイスが3個から5個へ 電極の入れ替えによって冷却と温熱の両機能を有するペルチェ素子。これを利用した冷暖房アイテムが人気を博している。ワークマンは2023年に初代となる「ウィンド[…]
アウトローなムードが人気を呼んだフルフェイスがついに復活! 6月3日付けでお伝えしたSHOEIの新製品『WYVERN(ワイバーン)』の詳細と発売日が正式に発表された。 1997年に登場したワイバーンは[…]
バイクツーリングにおすすめの都道府県ティア表 バイクツーリングの魅力は、ただ目的地に行くだけでなく、そこへ至る道中のすべてを楽しめる点にある。雄大な自然が織りなす絶景、心地よいカーブが続くワインディン[…]
水冷Vツイン・ベルトドライブの385ccクルーザー! 自社製エンジンを製造し、ベネリなどのブランドを傘下に収める中国のバイクメーカー・QJMOTOR。その輸入元であるQJMOTORジャパンが、新種のオ[…]
東洋の文化を西洋風にアレンジした“オリガミ”のグラフィック第2弾登場 このたびZ-8に加わるグラフィックモデル『ORIGAMI 2』は、2023年1月に発売された『ORIGAMI』の第2世代だ。前作同[…]
最新の投稿記事(全体)
0.1ps刻みのスペック競争 日本史上最大のバイクブームが巻き起こった1980年代は、世界最速を謳う大型フラッグシップや最新鋭レーサーレプリカが次々と市場投入され、国産メーカー間の争いは激化の一途を辿[…]
365GTB/4 デイトナ:275GTB/4を引き継ぎつつ大幅にアップデート 1968年のパリ・モーターショーでデビューした365GTB/4は、それまでのフラッグシップモデル、275GTB/4を引き継[…]
250ccを思わせる車格と水冷2スト最強パワーに前後18インチの本モノ感! 1979年、ホンダはライバルの2ストメーカーに奇襲ともいえる2スト50ccの、まだレプリカとは言われてなかったもののレーシー[…]
日本語表記では「前部霧灯」。本来、濃霧の際に視界を確保するための装備 四輪車ではクロスオーバーSUVのブーム、二輪車においてもアドベンチャー系モデルが増えていることで、「フォグランプ」の装着率が高まっ[…]
ニッポン旧車烈伝 昭和のジャパン・ビンテージ・バイク 323選 1960年代から1990年代に発表された数々の銘車たち……そのうち300台以上を厳選、年式変遷や派生モデルを含め紹介。 大型やマルチはも[…]
- 1
- 2