
前回に続き、国土交通省都市局街路交通施設課が進めている「まちづくりにおける駐車場政策のあり方検討会」と、その下にあるワーキンググループ(WG)での検討事項/今後の方針について紹介する。
●文:ヤングマシン編集部(田中淳麿)
国交省主導で駐車場施策を検討 国交省は、2022年度から「まちづくりにおける駐車場政策のあり方検討会」を設置して、有識者/業界/団体/地方公共団体/中央省庁らが集まって、今後の駐車場政策の方向性などに[…]
多様なバイク駐車環境ニーズに対応すべく改定!?
この検討会には、有識者/関係団体/地方公共団体らが集まり、さまざまな角度と視点から今後の駐車場政策について検討されているが、その内容の膨大さから、駐車問題の大きさと広さを実感する。自工会の二輪車委員会もWGに参加しているので、バイクの駐車環境に関する調査報告データや課題も共有されている。
さて、2023年7月に始まった検討会も、2024年の3月に第2回が開催され、その間に実施された各ワーキング(需給マネジメントWG/施設デザインWG)での検討結果や課題を踏まえて、今後の検討方針である「駐車場政策のあり方(案)」が示された。
2025年度を目途に、省令(特定路外駐車場移動等円滑化基準)の改正と技術的助言(まちづくりと連携した駐車場ガイドライン/標準駐車場条例(※1)の改訂に動くとともに、引き続き検討する課題として、駐車場データの活用/需給の適正化とマネジメント/原単位の計算方法の適正化に向けた調査検討に取り組むという。なお、ここでいう原単位とは、地方公共団体の附置義務条例(※2)における、車両1台分の設置基準となる床面積のことだ。
(※1)標準駐車場条例:国交省が定めた条例で、路外駐車場や建築物の附置義務駐車施設に関して地方公共団体が定める駐車場条例の雛形となっているもの。(※2)附置義務条例:該当地区内で一定規模以上の建物の新築/増築の際には、敷地内に駐車施設が必要という附置義務制度に基づいて地方公共団体が定めた条例。
二輪車枠への転用は、駐車場に付加すべき機能
専門用語もあって小難しいが、要は、少し時代に合わなくなった駐車場を今後求められる形に変えていきやすくするために、国が示してきた基準/ガイドライン/条例といったものを見直していくということだ。
駐車場は、街づくり(クルマの流入/人流/住環境等)や都市計画に直結している施設だ。高度経済成長期以降、地方公共団体による附置義務条例の効果もあって、マイカー(普通車)向けの駐車場が都市部で爆発的に増えていったが、そこに付随する法律/条例/省令(しょうれい)/ガイドラインも複雑化している。
これらの決まりごとが、エリアごとの賑わいの創出/新しいモビリティの運用/バリアフリー/荷捌き/観光バスへの対応といった多様なニーズに対応したいという際に、足かせになることもあるのだ。
モビリティ革命のなか、駐車場の設置と運用について、地方公共団体や民間事業者が今以上にフレキシブルかつ多様で細かなニーズに対応するために、いま見直しが進んでいる。これが検討会の背景であり意義だ。
なお、自動二輪車に関する大きな方向性は2つ。「標準駐車場条例の改正」では、都市部の附置義務駐車場が余り気味という実情をふまえて、余った四輪用駐車枠を二輪車用に“転用”すること。
もうひとつは「ガイドラインの見直し」で、多様なモビリティへの対応に関連し、共同住宅への附置義務とインセンティブ事例の紹介、新基準原付に対応していくことが示されている。
とくに、既存の四輪駐車枠に自動二輪車枠を設けることは「既存の駐車場に付加すべき機能」と位置づけられている。今後に期待だ。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
最新の関連記事([連載] 2輪車利用環境改善部会)
1. 山梨県の三ない運動と坂本先生の革新的な安全教育 山梨県は公共交通が不便だったこともあり全県的な三ない運動は実施されず、多くの高校でバイク通学が行われ、各校ごとに“乗せて教える”教育が施[…]
原付一種の新区分「新基準原付」とは? ガソリン原付一種は、排ガス浄化装置である触媒性能の問題により国内第4次排出ガス規制(ユーロ5相当)をクリアできないため、2025年10月末日に生産終了となり、以降[…]
[1] 7年目の高校生講習も秩父地域からスタート 埼玉県内を6地域に分けて全8回で開催される「令和7年度 高校生の自動二輪車等の安全運転講習」が2025年も始まった。 第1回目の講習会は、6月15日に[…]
講習内容を検討する“指導検討委員会” が開催 2025年1月29日、埼玉県知事公館において「令和6年度 高校生の自動二輪車等の交通安全講習に係る指導検討委員会」(以降、指導検討委員会)が開催された。本[…]
地域活性化ツーリングを開催、移動課題改善への提言も 2024年9月29日に開催された地域活性化・ライダー誘致イベント“伊豆ライダー誘致ツーリング”。 主催は若年層を中心に構成。バイクやクルマ、特定原付[…]
最新の関連記事(交通/社会問題)
1. 山梨県の三ない運動と坂本先生の革新的な安全教育 山梨県は公共交通が不便だったこともあり全県的な三ない運動は実施されず、多くの高校でバイク通学が行われ、各校ごとに“乗せて教える”教育が施[…]
2021年に底を打ったバイク盗難の件数は近年、再び上昇傾向にある。2021年の7569件に対し、2024年は1万1641件まで増加しており、原付一種/原付二種が89%を占めているという。[…]
原付一種の新区分「新基準原付」とは? ガソリン原付一種は、排ガス浄化装置である触媒性能の問題により国内第4次排出ガス規制(ユーロ5相当)をクリアできないため、2025年10月末日に生産終了となり、以降[…]
白バイ隊員になるには 白バイに乗るためには、あたり前のことですが大型自動二輪免許の取得が必要です。とはいえ、警察官になる時点で取得していないとダメかといえば、そうではありません。後から取得する手間が減[…]
バイクを取りまく、さまざまな環境の向上を目指す バイク(二輪車)ユーザーがより安全で快適なバイクライフを過ごせる社会をめざし、二輪車を取りまく環境の向上のために活動している日本二普協。 同協会安全本部[…]
人気記事ランキング(全体)
新型CBは直4サウンドを響かせ復活へ! ティーザー画像から判明したTFTメーターとEクラッチ搭載の可能性 ホンダは中国がSNS『微博』にて、新たなネオクラシックネイキッドのティーザー画像を公開したのは[…]
ゼロハンが一番熱かった夏 多くの若者がバイクを愛し、GPライダーが同世代共通のヒーローとなった1970年代後半。 それでもフルサイズの“バイク”は、経済的理由や悪名高い“三ナイ運動”の影響からなかなか[…]
懐かしの四角ライトに極太のブロックタイヤ 1987年に発売されたヤマハ「TW200」は、フロントに130/80-18、リヤには180/80-14という極太タイヤを履いたファットなオフロードスタイルで人[…]
低く長いデザインが個性マシマシ! レトロモダンなボバークルーザー 中国から新たな刺客がやってきた! ベンダは2016年設立の新興メーカーで、独自設計のエンジンを搭載したクルーザーを中心に、ネイキッドな[…]
既存の常識を打ち破る驚異的な動力性能 昨今ではあまり話題にならないものの、’70年代以降の2輪業界で、もっとも長く”世界最速”の称号を保持していた…と言うより、もっとも世界最速に”こだわっていた”メー[…]
最新の投稿記事(全体)
ハンドルまわりだけでも用語はたくさん 「いつかは旧車に乗り、自分専用のカスタムをしたい」と、憧れを抱いている筆者。その夢を叶えるためには、ひとつの大きなハードルがあったりする。そもそも、各部の名称や役[…]
まめなオイル管理が、良コンディションを維持できる秘訣 新型スーパーカブが発表されて以降、新型のシリーズモデルは、週末に限らず、毎日のように街中で見かけるようになった。軽く気ままに走ることができるモデル[…]
電子制御CVTにより街乗りもスポーティ走りも思いのまま! ヤマハは、インドネシアや日本に続いて新型スクーター「NMAX155」を欧州市場に投入する。これまでNMAX125のみラインナップ(一部地域では[…]
本当に初速でZX-10Rを上回ると感じる加速っぷり エンジンにプラスしてモーターの力で走るハイブリッド(HV)モード、モーターのみで走るEVモード、それに加えて自動クラッチにATミッションと、現在にお[…]
初の2ストGPマシンNS500を応援するホンダファンは3気筒のエンジンのMVX250Fに目が釘づけ! 1979年、ホンダは世界GP復帰宣言で500ccの4ストロークV型4気筒(当初はオーバルピストン3[…]