
BMW Motorrad(ビーエムダブリュー・モトラッド)は、空水冷水平対向エンジンを搭載するアドベンチャーツアラー『R 1300 GS』をベースに、燃料タンクの増加や積載性向上などでツーリング特性をさらに高めた『R 1300 GS Adventure(アドベンチャー)』を世界初公開した。2024年7月時点で、日本での発売時期や価格は未定だ。
●文:ヤングマシン編集部(山下剛) ●外部リンク:BMW Motorrad
アドベンチャーツアラーの真打ち「R1300GS アドベンチャー」世界初公開
R1300GSは、BMWが40年以上にもわたって熟成させてきたアドベンチャーツアラーの最新版だ。145psを発生する1300cc空水冷水平対向2気筒エンジンを、スチール製プレスフレームに搭載し、6軸IMUを軸とするABSやトラクションコントロールは当然として、電子制御サスペンションやアダプティブクルーズコントロールなど、最新の電子制御デバイスをフル装備している。高速道路から未舗装路を安全かつ快適に走破可能なスポーツバイクであり、さらにラグジュアリー性も備えるアドベンチャーツアラーで、誤解を恐れずいえば走る道を選ばないマルチなスーパーバイクともいえる。
さて、このたびBMWが発表した『R1300GS Adventure』は、そんなR1300GSの特性をそのままに、航続距離の増大と積載性の向上、それらに伴う走行性能の最適化を図った派生モデルだ。ベースモデルとなったR 1300 GSの主要諸元や装備群についてここでは省くが、大きな相違点は、
- 燃料タンクの大型化(約19L→30L)
- サスペンションストロークの延長(190/170mm→210/220mm)
※ただしスタンダードGSでもスポーツサスペンション装備車は210/220mm - アクセサリーバッグマウントの装備
- ASAの新採用
- 追突警告装置(RECW)の採用
- 専用サブライトの装備
- 専用パニアケースの採用
- エンジンガード標準装備
- ウィンドプロテクション強化
となっており、従来のアドベンチャーがそうであったように、「燃料タンクの大型化」と「重量増に対するサスペンションストローク量増加」をメインとして、電子制御デバイスの最新化も図っている。
ひとつずつ見ていこう。まず燃料タンクだが、スタンダードと同じく素材はアルミで、容量は30Lに増大している。これにより最大航続距離は600km(主要諸元による燃費は約20km/L)で、ガソリンスタンドのない区間も不安なく走り続けられる。タンクの大型化による外観の変化もR1300GS アドベンチャーの特徴で、車両側面部の直線的な面構成はスタンダードGSのデザインとは一線を画すものとなっており、GSアドベンチャーのタフさを強調するアイコンとなっている。また、燃料タンク上面に小さな収納部を備えるのは従来モデル同様で、スマートフォンなどのデバイスを充電可能なUSB-C(5V、2.4A)ソケットも備える。
見るからにタフな造りで、車高も標準モデルに比べて上がっている。
サスペンションストロークは、スタンダードよりも前後共に20mm延長している。これは主に車両重量増加に伴う仕様変更で、従来より継承されているGSアドベンチャーの特徴だ。ちなみに、R1300GSアドベンチャーの装備重量は269kgで、従来モデルであるR1250GSアドベンチャーより1kg増えた。また、R1300GSと比較すると、32kg増加となる。
アクセサリーバッグマウントは、従来のGSアドベンチャーにはなかった装備で、このたび初採用となるものだ。トップケースとパニアケースのマウントは従来モデルにも採用されてきたが、新たに採用となったのは、純正アクセサリーに用意されるタンクバッグ(容量12L)と燃料タンクの両側に装着するラジエターカウルバッグ(同4L)とフレームバッグ(同2L)用マウントだ。タンク両側に装着するバッグ類は、レインウエアなど柔らかな物を収納しておけば転倒時のクッションも兼ねる。また、純正アクセサリーにはタンク上面側部に装着する荷物固定用ベルトホルダーも揃う。
歴代GSのスタイリングの進化。
ASAを最初に投入するのはやっぱりR1300GSだった!
もっとも注目したいのは、ASA(Automated Shift Assistant=オートメイテッド・シフト・アシスタント)だ。これはBMW初採用となる最新電子制御デバイスで、クラッチ操作を不要とする機能である。2個のアクチュエーターにより、クラッチ操作とギヤチェンジ操作を自動で行い、停車状態から発進、加速に至るまでギヤチェンジはバイクにすべて任せっぱなしで走れる。そのため、ASA装備車両にはクラッチレバーがなく、エンジン回転低下によるエンストも発生しない。
Automated Shift Assistant=オートメイテッド・シフト・アシスタントはエンジンに設けられたアクチュエーターによってクラッチとギヤチェンジを自動で行う。
ASAは、ギヤチェンジを自動とするDモードと、従来どおりシフトペダルの上下でギヤチェンジできるMモードを搭載する。Dモードでは、速度、スロットル開度、車体傾斜角などのパラメータのほか、ライディングモードやアダプティブ・クルーズコントロール(ACC)などとも連動しており、各モードの特性や走行状況に最適化されたタイミングでギヤチェンジを行う。ただしDモードで走行中もシフトペダルによるマニュアル操作は可能だ。
なお、ASAはスタンダードGSにも’25年式から採用される。
アダプティブ・クルーズコントロール(ACC)では、車両の前後部の2カ所に設置されたミリ波レーダーを使用する。新採用された追突警告装置(RECW)は後続車両の急接近を運転者に知らせると共に、左右のリアウィンカーを点滅させることで後続車に車間距離が縮まっていることを警告する。これらはブレーキ機能付きダイナミック・クルーズコントロール(DCC)の安全性をさらに強化し、もちろん車線変更警告機能(SWW)、前車衝突警告(FCW)も装備している。
専用サブライト、専用パニアケースの採用、エンジンガード標準装備、ウィンドプロテクション強化は従来のアドベンチャー同様の特別装備だ。ただしサブライトは従来のように独立したタイプではなく、車体の一部としてデザインされたものが採用された。
車体にサブライトをビルトイン。一見するとウインカーかと勘違いしそうになる位置関係だが、ウインカーはナックルガードにビルトインされている。
R1300GSは、従来モデルより約12kgの軽量化が図られたが、R1300GSアドベンチャーでは1kg増加した。つまりR1300GSの軽量化分は装備の充実にあてられたと見ることができるだろう。また、スタンダードGSで初採用した自動車高調整機能(停車時にシート高が30mm下がり、走行中は上がる)は、より車重が増え、シート高も上がるGSアドベンチャーでさらに威力を発揮するにちがいない。
R1300GS アドベンチャーには、装備内容が異なる4グレードが用意される。スタンダードとなる『イノベーション・パッケージ』、オートシフターやライディングモードが追加される『ダイナミック・パッケージ』、センタースタンドや電動調整スクリーンなどを備える『ツーリング・パッケージ』、切削アルミパーツでカスタムされた『Option 719カラコラム』だ。
また、ボディカラーはレーシングレッド(赤)、トリプルブラック(黒)、レーシングブルーメタリック(青×白×赤)、アウレリウスグリーンメタリック(濃緑)の4色が揃うが、スタンダードGS同様に、パッケージによっては選択できないボディカラーがありそうだ。
現状では日本仕様についての詳細、国内導入時期や車両価格も未発表だ。しかしR1300GSが’23年9月に発表され、同年11月には国内販売が開始されたことを踏まえれば、R1300GS アドベンチャーも年内に国内販売開始となる可能性も十分に考えられる。いずれにしても、国内導入についての発表を待とう!
パニアケース用のマウントはシートレールにガッチリと固定される造りだ。
BMW Motorrad R1300GS Adventure
主要諸元■全長2280 全幅1012 全高― 軸距1534 シート高870/890(各mm) 車重269kg■空水冷4ストローク水平対向2気筒DOHC4バルブ 1300cc 145ps/7750rpm 15.2kg-m/6500rpm 変速機6段 燃料タンク容量30L■タイヤサイズF=120/70R19 R=170/60R17 ●価格:未発表 ●色:青×白×赤、赤、黒、濃緑 ●発売日:未発表
BMW Motorrad R1300GS Adventure [Racing Red]
BMW Motorrad R1300GS Adventure [Triple Black]
BMW Motorrad R1300GS Adventure [GS Trophy]
BMW Motorrad R1300GS Adventure [Option 719 Karakorum]
R1300GS Adventure のディテール
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
最新の関連記事(BMWモトラッド)
KOL(Key Opinion Leader)は当日のサプライズ! 去る12月3日(水)、東京お台場のBMW Tokyo Bayにおいて、2026年にルーマニアで開催される「International[…]
箱根の賑わいに背を向けて、ハードすぎる箱根外輪山の懐へ 秋の箱根、いいですよね。湯本から宮ノ下や強羅を経由して芦ノ湖で遊覧船とか。箱根の秋といえばこんな観光ルートを思い浮かべるだろう。しかし、ツーリン[…]
オフロードでASAはプラスに感じられる場面が多い! 驚いたのは写真の緑の機体・オートマチックのASAを積んだR1300GS ツーリングASAのオフロード性能。微妙なクラッチ操作を多用するオフロードでA[…]
自分の力量、目指す位置、さらに好きなカテゴリーでBMWを楽しむ 近年流行しているビッグオフロード車。多くの人を魅了し、その牽引役であるのがBMWモトラッドが生み出したGSシリーズだ。2023年に130[…]
四輪のBMWと同様、モーターサイクルも高性能エンジン車とEVの二本立てで未来へ駆ける!! 10月30日(木)から11月9日の11日間、東京ビッグサイトに101万人にも及ぶ来場者が集り大盛況のうちに閉幕[…]
最新の関連記事(新型アドベンチャー/クロスオーバー/オフロード)
ウインカーと統合したDRLがイカス! X-ADVは2017年モデルとして初登場し、アドベンチャーモデルとスクーターのハイブリッドという新しいコンセプトで瞬く間に人気モデルになった、ホンダ独自の大型バイ[…]
カワサキの侵攻で勢力図に異変!? アドベンチャーカテゴリーの世界的な人気は依然として高めに維持されているが、その一方で、主力となるリッタークラスのマシンに対して、「大きすぎる、重すぎる…」と感じている[…]
12/11発売:ホンダ スーパーカブ110/スーパーカブ110プロ/クロスカブ110 ホンダの原付二種ビジネス&レジャーモデル群、「スーパーカブ110」「クロスカブ110」などが12月11日に発売され[…]
箱根の賑わいに背を向けて、ハードすぎる箱根外輪山の懐へ 秋の箱根、いいですよね。湯本から宮ノ下や強羅を経由して芦ノ湖で遊覧船とか。箱根の秋といえばこんな観光ルートを思い浮かべるだろう。しかし、ツーリン[…]
オフロードでASAはプラスに感じられる場面が多い! 驚いたのは写真の緑の機体・オートマチックのASAを積んだR1300GS ツーリングASAのオフロード性能。微妙なクラッチ操作を多用するオフロードでA[…]
人気記事ランキング(全体)
EICMAで発表された電サス&快適装備の快速ランナー ホンダが年1回のペースで実施している『編集長ミーティング』は、バイクメディアの編集長のみが参加するもので、ホンダの開発者らと一緒にツーリングをしな[…]
前バンクはクランクリードバルブ、後バンクにピストンリードバルブの異なるエンジンを連結! ヤマハは1984年、2ストロークのレプリカの頂点、RZシリーズのフラッグシップとしてRZV500Rをリリースした[…]
「マスダンパー」って知ってる? バイクに乗っていると、エンジンや路面から細かい振動がハンドルやステップに伝わってきます。その振動を“重り”の力で抑え込むパーツが、いわゆるマスダンパー(mass dam[…]
GSX-S1000GT 2026年モデルは新色投入、より鮮やかに! スズキはスポーツツアラー「GSX-S1000GT」の2026年モデルを発表した。新色としてブリリアントホワイト(ブロンズホイール)と[…]
[プレミアム度No.1] エボリューション集大成モデル。スプリンガースタイルがたまらない!! ストック度の高さはピカイチ!! 取材時に年式が最も古かったのが1998年式ヘリテイジスプリンガー。この車両[…]
最新の投稿記事(全体)
大型バイクのカスタムはクルーザーからアドベンチャーまで 台湾から世界的なカスタムビルダーも登場したこともあって、カスタムエリアでは車種を問わずさまざまな仕様が展開されていた。「SPEED&CRAFTS[…]
「天然のエアコン」が汗冷えを防ぐ 厚着をしてバイクで走り出し、休憩がてら道の駅やコンビニに入った瞬間、暖房の熱気で生じる汗の不快感。そして再び走り出した直後、その汗が冷えて体温を奪っていく不安。ライダ[…]
ウインカーと統合したDRLがイカス! X-ADVは2017年モデルとして初登場し、アドベンチャーモデルとスクーターのハイブリッドという新しいコンセプトで瞬く間に人気モデルになった、ホンダ独自の大型バイ[…]
上旬発売:アライ アストロGXオルロイ アライヘルメットからは、ツーリングユースに特化したフルフェイス「アストロGX」のニューグラフィック「ORLOJ(オルロイ)」が12月上旬に登場する。この独特なネ[…]
最強のコスパ防寒着か? 進化した「GIGA PUFF」 まず注目したいのが、「GIGA PUFF フュージョンダウンフーディ」だ。価格は驚異の4900円。このフーディの肝は、中わたの量にある。従来製品[…]
















































































