
コロナ禍によって起きたバイクバブルが落ち着き、新車・中古車や用品の販売状況もコロナ前に戻りつつあるいま、せっかく増えた若年層やリターンを含む多くのライダーに、バイク業界側は何を提供することが責務なのか。日本二輪車普及安全協会(以下・日本二普協)の専務理事を務める小椋さんにお話を伺った。一般の読者にはあまりなじみのない団体だが、実は非常に幅広い分野でライダーを強力にサポートしてくれている。小椋さんに二普協の活動内容を詳しく語っていただくことで、ライダーと日本二普協の距離をぐぐっと近づけられたらと思う。
●取材/文:ヤングマシン編集部(Nom) ●写真:日本二輪車普及安全協会、編集部
【小椋道生(おぐら みちお)】’64年、愛媛県出身。’82年、ホンダ二輪北大阪入社。’96年、本田技研工業(以下・HM)・国内二輪営業部勤務。’01年、ホンダモーターサイクルジャパンに出向。’05年、HM中国本部中国業務室、’07年東風本田汽車零部件有限公司駐在。’10年、HM管理本部モータースポーツ部四輪課課長。’18年HMブランドコミュニケーション本部広報部二輪広報課課長。’20年、HM二輪事業本部事業企画部ブランド戦略課主幹。’22年、日本二普協専務理事に出向し現在に至る。’19年にライダーにリターンし、現在の愛車はホンダ・CB1100(もうすぐ10万キロ)/ DAX125/モンキー50で、毎年の走行距離は2万5000km。
安全・安心・快適・楽しさを日本のライダーに提供
「普及」や「安全」という文言が入っているために、なんとなくとっつきにくい雰囲気がある日本二普協。だが、実は我々ライダーのとても身近なところでさまざまな活動をしている団体だ。まずは、日本二普協の成り立ちと、どんな活動をしているかをお聞きした。
「’71年に、急増する交通事故防止のために、日本自動車工業会と全国軽自動車協会連合会、そして警察関係者により全国二輪車安全普及協議会が設立されました。設立当初は、主に交通事故防止が目的でしたが、’13年に二輪車の環境整備や普及促進を目的に活動していたNMCA日本二輪車協会と合体して、その年の10月に一般社団法人日本二輪車普及協会ができました。
現在は、北海道、東北、関東、中部、近畿、中四国、九州の7拠点に、国内4メーカーと販売会社、警察関係からの出向者、そしてプロパーの計50名のスタッフが勤務して活動を行っています。
活動の目的は、日本のライダーがより豊かなバイクライフを送れるようにサポートするというもので、安全・安心・快適・楽しさという4つの観点に基づいた多くの施策を行っています」
そんな日本二普協の課題は、免許を取ったばかりのビギナーライダー、特に若年層ライダーからの認知度が低いことだそうだ。
「安全を実現する施策として、長年『グッドライダーミーティング』という安全運転講習会を開催していたんですが、参加される方がビギナーよりベテランが多い状況でした。我々としては、免許取り立てでライディングのイロハもご存じないような方に参加していただきたいのですが、ベテランでライディングスキルも非常に高度な方々がリピーターとして参加されることが多く、ビギナーライダーが気後れして参加しにくいところがありました。
’91年から開催していた「グッドライダーミーティング」という安全運転講習会を、より初心者が参加しやすくなるように今年から「ベーシック・ライディング・レッスン」に改称。参加申し込みも、初心者を先行するようにしている。自走が怖いからと、クルマにバイクを積んで参加した女性ライダーが、講習後は自走で帰ったというエピソードがあるように、丁寧に苦手な部分の克服をサポートしてくれる講習内容だ。
そこで、2年前からビギナーライダーの参加拡大に取り組み、今年から名称を『ベーシック・ライディング・レッスン(以下・BRL)』として、免許取得後間もない方、一般公道の混合通行での走行に不安をかかえている方、長いブランクがあって運転操作に自信のない方に特化したものにしました。2年前はビギナーの比率が3割くらいだったんですが、昨年末で43%まで上がり、今年の4月以降は6割くらいにまで上がっています。参加受付も、初心者の方を先行受付して、その後に一般の方という形で、初心者が参加しやすいようにしています」
驚くのが、このBRLの参加料の安さ。東京での開催の参加申し込みのウェブサイトを見ると、参加料は無料で、傷害保険料が200円必要なだけ。地域差はあるものの、この保険料200円のみで参加できるところが多く、このような安全運転講習会の一般的な価格は1万円以上だから、まさに激安! 運転に不安がある方は、ぜひBRLに参加してはいかがだろう。
そして「安心」というキーワードでは、二輪車防犯登録の運用も上げられる。本誌読者なら加入されている方が多いと思うが、国内4メーカーの新車購入者の加入率は5割にとどまっているという。
「すべてのバイクが防犯登録をしてくだされば、販売店でPCにそのバイクのデータを入れると所有者がすぐに分かって、国内の中古車市場に盗難車が流通するのを防ぐことができます。ただ、いまは新車に加え、中古車、さらにはフリマアプリなどと販売形態が多様化しているので、なかなか登録数が増えません。これに関しても、もっと認知度を上げ、登録者数を増やすことがユーザーの安心につながると考えています」
バイクの盗難防止と、万が一の盗難の際に早期発見を可能にするのが二輪車防犯登録。取扱い販売店でバイクを購入した際に加入すると、登録ステッカー(上写真)とユーザーカードが発行(参考登録料1650円)され、そのバイクのデータが警察のオンライン網に登録されていつでも所有者確認が行えるシステムだ。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
最新の関連記事(交通/社会問題)
「緑のおじさん」こと「駐車監視員」の概要 緑のおじさんは、正式には「駐車監視員」と言い、警察から業務委託を受け、駐車違反車両の取り締まり業務に当たる人を指す。 緑のおじさんと呼ばれているものの、18歳[…]
無事故・無違反で居続けるためには、日頃から事故に遭わない・起こさない、違反をせず安全運転を心がけるという「意識」が大切 日頃からクルマやバイクを運転しているなら、長い間、無事故・無違反で居続けるのは簡[…]
講習で学ぶカーボンニュートラルと電動モビリティの関係 今回の電動二輪車技術・安全運転講習会は、バイク通学の実施や「二輪車競技部」の部活動で知られる熊本県立矢部高等学校の生徒を対象に行われた。 循環型社[…]
ガソリン価格が過去最高値に迫るのに補助金は…… ガソリン代の高騰が止まりません。 全国平均ガソリン価格が1Lあたり170円以上になった場合に、1Lあたり5円を上限にして燃料元売り業者に補助金が支給され[…]
京王線沿線には14か所のバイク駐車場が 京王電鉄は、前身となる京王電気軌道株式会社が1910年(明治43年)に設立され、首都圏では東武鉄道、京浜急行電鉄に次ぐ長い歴史を持つ会社だ。 鉄道の駅は公共交通[…]
最新の関連記事(ニュース&トピックス)
かつてバイク乗りに親しまれていた「解体屋」文化 ボロボロのバイクが無造作に山に(比喩ではなく本当に山積み)なっていて、客は工具を片手にその山に登って部品を剥ぎ取ってきたり、バラした部品を集めてその場で[…]
シルバーメッキにロゴプレートつきで高級感あり ホンダ モンキーが、3Dで作りこまれた亜鉛ダイキャスト製のチャームつきキーチェーンとして登場。キャムショップが手かける3Dキーチェーンシリーズとしては、ス[…]
ヤマハがY-AMT搭載の新型「MT-07」を発表 ヤマハは、欧州で先行発表されていた新型「MT-07」の国内モデルを2025年2月26日に発売。クラッチ操作とシフト操作を必要としない『Y-AMT』仕様[…]
「Vストローム1050/DE」が新カラーで2/17発売 スズキは、国内向け2025年モデルとして「Vストローム1050」およびバリエーションモデル「Vストローム1050DE」のカラーリングを変更した。[…]
ホンダ「ゴールドウイング」50周年記念サイト開設 国内向けサイト内で「Gold Wing 50周年記念サイト」がオープン。1975年のゴールドウイング(GL1000)から始まる歴史を紹介するとともに、[…]
人気記事ランキング(全体)
かつてバイク乗りに親しまれていた「解体屋」文化 ボロボロのバイクが無造作に山に(比喩ではなく本当に山積み)なっていて、客は工具を片手にその山に登って部品を剥ぎ取ってきたり、バラした部品を集めてその場で[…]
シルバーメッキにロゴプレートつきで高級感あり ホンダ モンキーが、3Dで作りこまれた亜鉛ダイキャスト製のチャームつきキーチェーンとして登場。キャムショップが手かける3Dキーチェーンシリーズとしては、ス[…]
ASEANモデルのプレミアム化を推進するヤマハ 以前からスクープ情報をお届けしているとおり、WR155シリーズやYZF-R15などが200ccに進化して登場することになりそうだ。 国内のヤマハから公道[…]
“ホンダを穿く”プロジェクト 第2弾 そして見逃せないのは、ホンダ×児島ジーンズ×オーヴァーレーシングという豪華な顔ぶれによる、今回限りのトリプルコラボTシャツだ。モチーフはCT125ハンターカブで、[…]
SRS-001 スマートライドモニターAIO-5Lite:バイク専用設計なので利便性が抜群! スマホとモニターをBluetoothなどの無線で接続し、スマホをバッグやジャケットのポケットに入れたまま手[…]
最新の投稿記事(全体)
世界トップレベルのカスタムプロショップ 全国ハーレーダビッドソン正規ディーラーの中で、カスタム日本一を決める大会『バトルオブザキングス』では、ハーレーダビッドソン静岡として2年連続チャンピオン(201[…]
通勤からツーリングまでマルチに使えるのが軽二輪、だからこそ低価格にもこだわりたい! 日本の道に最適なサイズで、通勤/通学だけでなくツーリングにも使えるのが軽二輪(126~250cc)のいいところ。AT[…]
オイルの匂いとコーヒーの香り。隠れ家へようこそ。 56designが4月12日に奈良県奈良市にオープンさせる「56design NARA」。以前から要望が多かったという、同社初となる関西圏の新店舗だ。[…]
“ターメリックイエロー”爆誕ッ!! CT125ハンターカブの2024年モデルが発売されたのは、2023年12月14日のこと。新色の「ターメリックイエロー」が追加された。ホンダいわく“市街地や郊外で映え[…]
「緑のおじさん」こと「駐車監視員」の概要 緑のおじさんは、正式には「駐車監視員」と言い、警察から業務委託を受け、駐車違反車両の取り締まり業務に当たる人を指す。 緑のおじさんと呼ばれているものの、18歳[…]