もうすぐ二輪メディア歴50年となるベテランライターが、日本におけるバイク黄金時代のアレコレを実体験と共に振り返る昭和郷愁伝。タイトルを改め、紙面からWEBへの引っ越し連載・第3回目は、自己紹介を兼ねて、バイクが繋げてくれたメディア系のお仕事について振り返ります。
●文/写真:ヤングマシン編集部(牧田哲朗)
影武者キカイダーの誘い
大学生時代から手伝い始めたヤングマシンを中心に、もうすぐバイク業界歴が50年になるワタクシですが、そもそもの業界入りのきっかけは、自分の師匠的存在となる青山敦夫さんとの出会いから。当時出入りしていたバイク屋で、「暇なら仕事、手伝わない?」と誘われたのが最初でした。青山さんはテレビや映画のスタントをやっていた人で、有名所ではキカイダー01のサイドカーのアクションも担当してました。同時にロードレース活動もしていて、所属は須田レーシング。現・モーターサイクルドクターSUDAの、須田高正さんが主宰していたチームでした。
テレビや映画の仕事といっても多岐に渡っていて、暴走族や白バイ役、役者さんの代わりに運転したり、ロケ先の下見にスタッフを送迎する運転手的な仕事までと色々。テレビの仕事では「非情のライセンス」とか「特捜最前線」、「ザ・ゴリラ7」、「ドーベルマン刑事」、子供向けなら「がんばれ!!ロボコン」とか「ゴレンジャー」なんかの仕事をやらせてもらったね。時代的にロケの撮影では、道路撮影許可なんて物も取らずにゲリラ撮影も多かった。カメラマンだけ配置して、リハーサル1回の本番1回でスピーディに撤収。交通量の少ない、朝一番を狙っての撮影も多かった。現在ならコンプライアンス的に大問題となることも、昭和では当たり前だったなぁ。
100台以上のマジ暴走族が集結
中でも映画は規模が大きいので楽しかったね。フルに仕事をしたのが「爆発!暴走族」(’75年)、「爆発!暴走遊戯」(’76年)、「暴走の季節」(’76年)、「爆発! 750cc族」(’76年)の爆発シリーズと呼ばれる青春暴走物。1作目は話題性作りということで、撮影所側が暴走族に交渉して、チーム実名で集めたから、集合撮影の時には100台以上のマジ暴走族が集まった。はい、ここで問題発生。敵対チームもいるので、小競り合いが起きる。頭に言って止めさせる。でも人数が多いので別のトラブルも起きる。クレーム処理係じゃないんだけど……。
一番のトラブルでは集合撮影に選んだ場所もあって大問題に発展した。いくら昭和とはいえ、族車が100台も暴走する撮影を公道ではできないので、さすがにこの時は私有地を貸し切っていた。場所は埼玉県にあった所沢サーキットで、当時はカートコースとモトクロスコースがあったんだよね。まぁ時効ってことで言うと、元々は東京オリンピックのクレー射撃会場で、それを政●家を使って、ヤ●ザの親分さんが入手した土地。で、土地を寝かしておくためにカートコースとモトクロスコースをやっていたわけだ。
まあ、そんなヤバイ場所とは知らず、族の輩がバールで自販機をこじ開けて中の金とジュースを盗んだ。それを知った地主の若い衆が現場に怒鳴り込んでくる。手には猟銃……。多勢の暴走族もさすがにホンモノの人達には縮み上がってたね。結果的には撮影所側が賠償して、幸いにも大きな揉め事にはならずに済んだ。
初めてのクルマも同じく族仕様に
「爆発! 750cc族」では自分が乗っていたトヨタ・セリカ1600GTが劇用車で登場。屋根を切り落としてロールバーを入れて、車体剛性出すのにドアを溶接してって、自分にとっては初めてのクルマだったんだけどね……。ボンネットを白く塗ったりサイドにストライプを入れたのは、この映画の主演だった岩城滉一さんのアイデア(岩城さんとは「爆発!暴走族」からのお付き合い)。このシリーズには、後に“ウイリー松浦”として有名になる松浦さんも仲間入りして、毎日のようにロケで馬鹿をやってました。こういったテレビや映画のお仕事で、結構、稼がせてもらいました。たいたいギャラは当時の平均日当の2~3倍ぐらいだったかな。ただ、収入はバイクとクルマのカスタム費に溶かしてしまったので、ほとんど残らなかったんだけどね(この昭和カスタムのお話はまた別の回にて)。
スポットの撮影ではハリウッド映画の仕事もしたね。「がんばれ!ベアーズ大旋風 ―日本遠征―」の日本ロケ。まぁ暴走族役ですが、現場監督はキャブに貼ってあったヨシムラのステッカーを見て、「おー!! ヨシムラかっこいいねー。」(脳内訳)と言っていた。編集でバイクシーンはカットされたかもしれないけど。バイク以外だと「トラック野郎」とか「サーキットの狼」とか、当時のブームの真っ只中にあった作品にも参加できて楽しかったね。
では、いまに繋がる雑誌の仕事は~というと、前記したモーターサイクルドクターSUDAの須田さんは、初期のヤングマシンで試乗テストなどもしており、その関係から編集部員にも須田レーシングのクラブ員がいたんだよね。で、師匠の青山さんがヤングマシン編集部員と麻雀をしている最中にまたもや「暇なら仕事、手伝わない?」となったのでした。その一言でバイク雑誌業界に足を踏み入れる訳だけど、当時のワタシはそんなに暇そうに見えたのでしょうかねぇw。その後、師匠が怪我を理由にテレビや映画の仕事を引退してバイクショップをオープンしたので、自分もそれに併せてバイク業界の仕事にシフトしていくことになったのでした。つづく。
今回の原稿は、’18年11月号のヤングマシン本誌に掲載された「牧田哲朗の名車時効伝Vol.2/暴走の季節」に加筆修正を加えたものです。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。
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