
一般社団法人 日本自動車工業会(自工会)は2023年度に実施した二輪車の市場動向調査の結果を発表した。これは日本の二輪ユーザーの意識や行動を隔年で調査しているもので、項目は多岐に渡る。全文は自工会のWEBサイトにアップされているのでぜひご覧いただきたいが、ここではEV二輪車に関連する項目をピックアップしてお届け。ちなみに集計期間は2023年8月30日〜9月22日で、集計サンプル数は4415となっている。
●文:ヤングマシン編集部(マツ) ●外部リンク:一般社団法人 日本自動車工業会
2輪ユーザーの“電動バイク”への意識とは?
①80%がその存在を知っている【認知状況】
”名前と特徴は知っている”レベルの認知度はかなり高く、前回(2021年)調査の72%から増加の80%に(赤枠内参照)。中でもスクーター/オンロード/オフロードタイプのバイクを所有しているユーザーの認知度が高い。性別では男性の認知率が高く、女性の認知度は低い。
②でも乗ったことはほとんどナシ【乗車経験】
認知度はかなり高いにもかかわらず、9割以上のユーザーが電動バイクの乗車経験を持たないという結果に(同じく赤枠内参照)。これは2021年の前回調査と比べても変化がなく、今後、普及を目指すためには試乗機会の増加が不可欠だろう。
③環境に良くて音が静か【良いイメージ】
電動バイクの良いイメージとしては、前回調査と同様「環境によい」がトップ(赤枠部)。次いで 「音・振動が静か」。「ガソリンスタンドに行かないですむ」という回答は前回調査より増加した。
④エンジン車のような個性がない【悪いイメージ】
逆に悪いイメージとしては「購入価格が高い」「排気音を楽しめない」「エンジン音や振動を楽しめない」など(赤枠部)。「個性がなく単なる移動手段」という回答は2021年の19%から22%へと増加している。 ガソリン車ゆえの振動や音などが失われることへの懸念が伺える。
⑤60%以上が購入の意向なし【購入検討意向】
2023年度調査では、電動バイクの購入を「検討したい」「やや検討したい」と回答した比率は12%。逆に 「検討したいとは思わない」「あまり検討したいとは思わない」は合計で62%に(赤枠部)。この傾向は所有車両の属性別で見ても大差なし。スポーツバイクのユーザーもコミューターのユーザーも、現状では購入を検討するまでには至っていない模様だ。
⑥でも欲しい機種が出れば買う【購入検討のための条件】
では、どうなったら電動バイクを購入するか…という問いには「購入価格が安くなる」「走行距離が長くなる」「自宅で容易に充電が可能になる」などの実用性の改善が上位に(赤枠部)。とくにスクーターユーザーでこれらの意識が高い。 一方、オンロード/オフロードユーザーでは「購入したい車種、サイズが発売される」「購入したいデザイン・色が発売される」といった、趣味・嗜好に合う商品の登場を挙げている。
⑦価格はガソリン車同等で【購入受容価格】
「コミューター50ccクラス」「コミューター125ccクラス」「スポーツタイプ250ccクラス」の3ジャンルの電動バイクを想定し、”いくらなら購入したいか?”を調査。3タイプとも「ガソリン車と同額」がもっとも多い(赤枠部)が、排気量クラスのアップに伴い追加費用を受容する意識が高まる。属性別では「オンロード小型二輪」ユーザーは3タイプとも「ガソリン車と同額」意識が強く、「スクーター」ユーザーは追加費用に対する受容意識が高くなっている。
これらの結果をふまえた自工会の見解〈抜粋〉
EV二輪車の普及促進は、カーボンニュートラル実現に向けた有効な施策のひとつではあるものの、ユーザーからは、そもそも二輪車が持つ魅力や特性とは相反するという評価も少なからず見られるなど、必ずしもポジティブな印象を抱かれた存在であるとは言いがたい。既存ガソリン車の燃費性能向上や、メーカーとしての環境貢献活動推進といった取組みに対する期待も、これまでと同様に寄せられている。
引き続きその特性理解と普及促進をはじめとするさまざまな業界努力を進めることが求められ、たとえば特定観光地との協働によるEV二輪車観光モデル地区の設定、非常時の蓄電池や他モビリティでの活用等バッテリーの副次的活用といった取組みの推進が求められる。
それに加え、EV二輪車普及により得られるメリットの可視化や、日常生活での具体例導入事例の提示といった、定量的かつ分かりやすいPR活動を推進することで、カーボンニュートラル実現の貢献に向けた多角的な取組みが求められる。
上記調査をふまえた編集部の見解
結果だけ見れば、多くのライダーが電動バイクに対する購入意欲が薄いことは明らか。4輪の電動車と比較すると、2輪はスペース的に搭載できるバッテリー容量に限界があるため航続距離を稼ぎにくく、重量も同性能のエンジン車より重くなりがち。高価なバッテリーを積むことで価格も上昇傾向…と、商品性を成立させるのがなかなか難しい。そのあたりをユーザーも嗅ぎ取っているのだろう。
普通に考えれば、これらを覆して電動バイクを普及させるのはかなりハードルが高いが、それでも普及を目指すなら、データにもあるように”欲しい!”と思えるような商品が欠かせないだろう。それは既存エンジン車を代替するようなものではなく、たとえば猛暑下でも涼しく走れるとか、2台つなぐとクルマになるとか、なにか根本的にエンジン車では実現不可能な、電動でしか出し得ない魅力やメリットが必要なのではないか。
…なんて書くと、ヤングマシン的にはなんだかワクワクしてきますね。CG作っちゃおうかな?!
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(新型EV/電動バイク)
初の電動スクーターが「C evolution」 2017年、BMWモトラッドは初の電動スクーター「C evolution(Cエボリューション)」を発売。それまでのガソリンエンジンを搭載したC650に通[…]
Honda CUV e:(2025) Hondaが「2050年カーボンニュートラル社会の実現」に向けた取り組みの一環として進めている、2輪車の電動化。その歴史は1994年の「CUV-ES」から始まり、[…]
車重217kgに600ccクラスの動力性能 2週間前の9月2日に、欧州で「EV FUN Concept」の走行テスト映像を公開したばかりのホンダが、その量産バージョンのブランニューモデルを発表した。ホ[…]
両手を自由に使うことができる、新パーソナルモビリティ ホンダが2025年9月24日より、法人向けに販売を開始したのがパーソナルモビリティの「UNI-ONE(ユニワン)」です。 法律的には「移動用小型車[…]
ホンダ初の本格的電動モーターサイクルが間もなく……? 2024年秋のEICMAで世界初公開された電動二輪車のコンセプトモデル「EV Fun Concept(イーヴィー ファン コンセプト)」は、202[…]
最新の関連記事(ニュース&トピックス)
バイクを楽しむ人は、幾つになろうと、心は若者です。 夢への挑戦は、誰でも、一度は考えるでしょう。レースの世界でも頂点に立つ、華やかなステージでスポットライトを浴びる、新たなビジネスチャンスに賭ける、そ[…]
新型CBは直4サウンドを響かせ復活へ! ティーザー画像から判明したTFTメーターとEクラッチ搭載の可能性 ホンダは中国がSNS『微博』にて、新たなネオクラシックネイキッドのティーザー画像を公開したのは[…]
霊山を巡る中部日本トライアングルルート 「日本三霊山ラリー」は、古来より日本の山岳信仰の対象とされてきた富士山、立山、白山の3つの頂を巡るツーリングラリーだ。このルートは「中部日本トライアングルルート[…]
ヤマハブースは東京ビッグサイトの東5ホール! ヤマハブースでは世界初公開のワールドプレミア×5モデルを含むモーターサイクルや電動コミューター、eBike(電動アシスト自転車)などを出展する。また、楽器[…]
1903年以降、ナンバーはずっと使い続けることができる英国 ナンバープレートがオークションなどの売り物になること、じつはイギリスではさほど珍しいものではありません。 イギリスでは一度登録したナンバーを[…]
人気記事ランキング(全体)
新型CBは直4サウンドを響かせ復活へ! ティーザー画像から判明したTFTメーターとEクラッチ搭載の可能性 ホンダは中国がSNS『微博』にて、新たなネオクラシックネイキッドのティーザー画像を公開したのは[…]
ゼロハンが一番熱かった夏 多くの若者がバイクを愛し、GPライダーが同世代共通のヒーローとなった1970年代後半。 それでもフルサイズの“バイク”は、経済的理由や悪名高い“三ナイ運動”の影響からなかなか[…]
懐かしの四角ライトに極太のブロックタイヤ 1987年に発売されたヤマハ「TW200」は、フロントに130/80-18、リヤには180/80-14という極太タイヤを履いたファットなオフロードスタイルで人[…]
低く長いデザインが個性マシマシ! レトロモダンなボバークルーザー 中国から新たな刺客がやってきた! ベンダは2016年設立の新興メーカーで、独自設計のエンジンを搭載したクルーザーを中心に、ネイキッドな[…]
既存の常識を打ち破る驚異的な動力性能 昨今ではあまり話題にならないものの、’70年代以降の2輪業界で、もっとも長く”世界最速”の称号を保持していた…と言うより、もっとも世界最速に”こだわっていた”メー[…]
最新の投稿記事(全体)
デザイン刷新&Eクラッチ採用の2024年モデルからカラーバリエーションを変更 ホンダは欧州で、2024年モデルのマイナーチェンジでデザイン変更とEクラッチ(Honda E-Clutch)搭載仕様の追加[…]
FLHTCUTG TRI GLIDE ULTRA:直感的にハーレーとわかる威風堂々のスタイル バットウイング・フェアリングを備える「トライグライドウルトラ」は、堂々たる装いと快適な乗り心地が楽しめるモ[…]
バイクを楽しむ人は、幾つになろうと、心は若者です。 夢への挑戦は、誰でも、一度は考えるでしょう。レースの世界でも頂点に立つ、華やかなステージでスポットライトを浴びる、新たなビジネスチャンスに賭ける、そ[…]
3Way仕様で秋から春まで使える高機能モデル:RY2003 ウィンターロングジャケット ワイズギアの2025-2026秋冬モデルとして登場した「RY2003 ウィンターロングジャケット」は、一着で秋か[…]
多岐にわたる仕様変更が行われた9年間 9年に及んだ生産期間中の仕様変更は多岐に及んでいる。ただしそのおもな目的は、最高出力や最高速の向上ではなく、扱いやすさや安全性に磨きをかけることだった。 1969[…]
- 1
- 2