
カワサキモータースが仏航空新興メーカーに出資し、エンジンを供給するという。そのエンジン、なんと過給機搭載の「ニンジャH2R」をベースとしたもの。すでに6月のパリエアショー2023で展示されたが、なんとスーパーチャージャーではなくターボを採用している……!
●文:ヤングマシン編集部
”PREPARE FOR TAKE-OFF”って……オイ!
最初に言っておきたい。これは光栄にもバイク界の東●ポと呼ばれるヤングマシンが、妄想力を逞しく発揮した記事である。カワサキが直列6気筒ターボ搭載エンジンを開発しているのは事実であり、2024年にガソリン版、2027年に液体水素版のサンプル機がフランスの新興メーカーに供給される予定であることも事実。しかしそれは、あくまでも航空機用のターボエンジンだ。
じゃあ読み進めるのやめとこう、と思うのは早計である。なぜなら、その6気筒エンジンの展示とプロモーション方法にはバイク好きなら引っ掛かるものがあるからだ。
”PREPARE FOR TAKE-OFF”って……!
……さて、まずは新開発エンジンについて。これらはカワサキが開発する航空機用のレシプロエンジンで、世紀の鬼凄バイク「ニンジャH2R」のスーパーチャージドエンジン技術を生かしたもの。とはいうものの、スーパーチャージャーではなくターボを搭載し、直列6気筒・2070ccに拡張されることで離陸時出力は380psにも到達する。
2015年から受注販売が行われた、クローズドコース専用モデルがニンジャH2R。スーパーチャージド4気筒エンジンを搭載し、最高出力は310ps/14000rpm、ラムエア加圧時には326psにも達した。同じく2015年に発売、日本では2021年モデルまで販売された公道モデルのニンジャH2とは兄弟車だ。
ニンジャH2Rのエンジンと同じボア径76.0mmを採用し、ストローク76.0mmのスクエアとした直列6気筒ターボエンジン。航空機エンジンは定速運転を前提とするため、レスポンスに優れるものの駆動ロスのあるスーパーチャージャーではなくターボを採用したと見られる。青いヘッドカバーは液体水素版を表現したもの。
このエンジン開発の背景には、2023年6月に発表されたフランスのボルトエアロ社との出資・資本提携がある。新しい6気筒ターボエンジンをボルトエアロ社に供給予定であり、まずはガソリン版、その後に液体水素版の供給を計画しているというのだ。
カワサキモータースが公開したロードマップによれば、2024年にガソリン版6気筒ターボエンジンのサンプルを供給し、2030年には欧州で型式を取得、液体水素版6気筒ターボエンジンについては2027年にサンプルを供給し、2035年に欧州で型式を取得する予定であるという。
バイクを開発するカワサキモータースだけに、ニンジャH2Rを発展させたこの技術が、モーターサイクルに再び転用されることも期待せずにはいられない。
ニンジャH2Rのスーパーチャージド4気筒エンジンから、直列6気筒ターボガソリンエンジン(緑ヘッド)、直列6気筒ターボ液体水素エンジン(青ヘッド)へ。ガソリン版は2030年に認証登録、液体水素版は2035年に認証登録を目指す。ジェット燃料との互換性を持ったエンジンも同時開発し、こちらのサンプル供給は2030年。
【Specifications】Kawasaki Aero Piston Inline-six Engine
ガソリン仕様の直列6気筒ターボエンジン。
全長 | 800mm |
全幅 | 300mm |
全高 | 540mm |
ボア×ストローク | 76×76mm |
気筒数 | 6 |
総排気量 | 2070cc |
クランクスピード(回転数) | 8500rpm |
アウトプットシャフトスピード(回転数) | 2600~2800rpm |
離陸時出力 | 380ps |
巡航出力 | 300ps |
過給機 | ターボチャージャー |
最高運行高度 | 3万フィート |
燃料 | ガソリン |
GPZ900R マーヴェリック号と同じ文言を使うとは……
さあ、冒頭の「バイク好きなら引っ掛かる」の部分についてだ。
これはもう展示パネルに書かれた”PREPARE FOR TAKE-OFF”に全力で突っ込むしかない。それ2022年秋のミラノショーでGPZ900R(とニンジャH2)の背景にも書いてあったやつじゃん!! と。
パリエアショー2023での展示。
ミラノショーことEICMA 2022での展示。詳細は関連記事にて。
もちろんヤングマシンではこの“トップガン マーヴェリックの劇中使用車”であるGPZ900Rについて記事化し、2024年モデルとして新たな「GPZ900RS」が登場するのではないかと言及させてもらった。1984年に登場したGPz900Rから40周年にあたる2024年に、正式な後継機を登場させるための“匂わせ”なのではないか、と。
そこへきて、この”PREPARE FOR TAKE-OFF”だ。
直訳すれば『離陸に備えよ』であり、パリエアショー2023においては「ボルトエアロ社とのタッグで新しい飛行機が飛び立つのをお楽しみに!」といった意味合いだったかもしれないが、GPZ900Rマーヴェリック号の意味深な展示を知る我々としては、「こんな一見関係なさそうなところだからこそ匂わせてるんじゃない?」と疑ってしまうわけなのである。
答え合わせは11月のEICMA 2023になりそう……か?
※本記事の文責は当該執筆者(もしくはメディア)に属します。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
あなたにおすすめの関連記事
1984年に登場し、今も熱狂的なファンを持つ'80年代随一の人気機種・カワサキGPZ900R。この"初代ニンジャ”の復活機運が高まりつつある? 2024〜2025年の2年間で30機種以上のエンジン車を[…]
トップガン観たよね? 心の準備よろしく! 当WEBが11月13日付けで公開した記事『まさかのGPz900R復活!? EICMAで展示のトップガン仕様に「離陸に備えよ」の超意味深メッセージ!!』は予想以[…]
“Ninja”の伝説はここから始まった 滑走路で戦闘機と加速競争する姿、美人教官とのタンデム、苦悩を抱えて丘の上に佇む夕暮れ──。数々の印象的なシーンに初代ニンジャ=GPZ900Rがいた。 '86年に[…]
MA-1やレイバン・サングラス、そしてカワサキの“ニンジャ”ことGPZ900Rのブームを巻き起こした前作 アメリカ海軍パイロットのエリート養成学校、通称“トップガン”に所属するエースパイロット候補生の[…]
“一番速いバイク”が亜音速の 住人に挑む! 「バイクと飛行機って、競争したら どっちが速いんだ?」 そもそもの発端は、ヨタ話の中か ら飛び出た、軽い一言だった。 いやもちろん、我々だってそれなりのオト[…]
最新の関連記事(GPZ900R)
第1作から36年の“時間”も再現! カウルが紫外線で退色し、くすんだトーンだが、じつは緑青を用いたペイント。擦れて色が剥げ落ちた箇所も塗装だ。車体右側のエンジンケースカバーやサイドカバー、マフラーには[…]
マーヴェリック号の燃料タンク右側ステッカー エンタープライズに配属された部隊 赤いツチブタは、「アードバークス」の異名を誇る米海軍「第114戦闘飛行隊(VF-114)」のパッチ。1980年代には第1作[…]
“Ninja”の伝説はここから始まった 滑走路で戦闘機と加速競争する姿、美人教官とのタンデム、苦悩を抱えて丘の上に佇む夕暮れ──。数々の印象的なシーンに初代ニンジャ=GPZ900Rがいた。 1986年[…]
Z1から10年目のスーパーマシンはインタビュアーも絶句の熱さ! カワサキが空冷Z1系から決別し、次世代の水冷フラッグシップである初代Ninja=GPz900Rを投入。数々の革新メカを備え、当時の本誌で[…]
初代ニンジャ=カワサキGPZ900Rが登場した1984年って? 1984年はロサンゼルスオリンピックが開催され、15年ぶりに新札(福沢諭吉/新渡戸稲造/夏目漱石)が発行された。ロス疑惑やグリコ森永事件[…]
最新の関連記事(カワサキ [KAWASAKI])
チャンピオンを生んだ野心作= “J”【カワサキZ1000J】 ロングセールスを誇った名車、Z1。それだけに信頼性もあった心臓部とフレームだが、さすがに1980年代になると抜本的な改良が求められた。 カ[…]
16歳から取得可能な普通二輪免許で乗れる最大排気量が400cc 400ccクラスは、普通二輪免許を取ってから間もないビギナーも選ぶことができる排気量帯で、16歳から乗ることができる。 そんな400cc[…]
ステルス火の玉にグリーンボールが追加 参考:ZEPHYR1100/ZEPHYR750/ZEPHYRχ 2024年9月時点では、キャンディトーンレッドの設定のみだったが、2024年12月にはメタリックデ[…]
ピンストライプを初ラインナップ、火の玉パターンはバリエーションカラー拡充 カワサキモータースジャパンは2024年モデルの「Z900RS」を発表した。2017年暮れの発売後、2018年~2022年の大型[…]
1位:カワサキの2ストが復活確定!! カワサキUSAがXで『We Heard You. #2Stroke #GoodTimes #Kawasaki』なるポストを短い動画とともに投稿したことを報じた。動[…]
人気記事ランキング(全体)
いざという時に役に立つ小ネタ「結束バンドの外し方」 こんにちは! DIY道楽テツです。今回はすっごい「小ネタ」ですが、知っていれば間違いなくアナタの人生で救いをもたらす(大げさ?)な豆知識でございます[…]
V3の全開サウンドを鈴鹿で聞きたいっ! ここ数年で最も興奮した。少なくともヤングマシン編集部はそうだった。ホンダが昨秋のミラノショーで発表した「電動過給機付きV型3気筒エンジン」である。 V3だけでも[…]
1978 ホンダCBX 誕生の背景 多気筒化によるエンジンの高出力化は、1960年代の世界GPでホンダが実証していた。多気筒化によりエンジンストロークをショートストトークにでき、さらに1気筒当たりの動[…]
ファイナルエディションは初代風カラーでSP=白×赤、STD=黒を展開 「新しい時代にふさわしいホンダのロードスポーツ」を具現化し、本当に自分たちが乗りたいバイクをつくる――。そんな思いから発足した「プ[…]
ガソリン価格が過去最高値に迫るのに補助金は…… ガソリン代の高騰が止まりません。 全国平均ガソリン価格が1Lあたり170円以上になった場合に、1Lあたり5円を上限にして燃料元売り業者に補助金が支給され[…]
最新の投稿記事(全体)
オートレース宇部 Racing Teamの2025参戦体制 2月19日(水)、東京都のお台場にあるBMW Tokyo Bayにて、James Racing株式会社(本社:山口県宇部市/代表取締役社長:[…]
Schwabing(シュヴァービング)ジャケット クラシックなフォルムと先進的なデザインを合わせた、Heritageスタイルのジャケットです。袖にはインパクトのある伝統的なツインストライプ。肩と肘には[…]
新レプリカヘルメット「アライRX-7X NAKASUGA 4」が発売! 今シーズンもヤマハファクトリーから全日本ロードレース最高峰・JSBクラスより参戦し、通算12回の年間チャンピオンを獲得している絶[…]
小椋&チャントラの若手が昇格したアライヘルメット まずは国内メーカーということで、アライヘルメットから。 KTM陣営に加入、スズキ、ヤマハ、アプリリアに続く異なる4メーカーでの勝利を目指すマー[…]
王道ネイキッドは相変わらず人気! スズキにも参入を熱望したい 共通の775cc並列2気筒を用い、ストリートファイターのGSX-8S、フルカウルのGSX-8R、アドベンチャーのVストローム800系を展開[…]
- 1
- 2