ひとつだけ気になるのは“リバーマーク”

GPz900R復活か、新生GPZ900RSか……ニンジャ“匂わせ”のカワサキは2012年に前例があった!

カワサキがEICMAで、トップガンでトム・クルーズ演じるマーヴェリックが駆った初代ニンジャ・GPz900Rを突如展示したのは既報の通り。同じく続編映画に登場したニンジャH2と並べて展示していた。これが202X年のニューモデル登場を暗示しているとしか思えず……。


●文:ヤングマシン編集部(ヨ) ●写真:EICMA Official, 小川勤 ●CG:SRD

トップガン観たよね? 心の準備よろしく!

当WEBが11月13日付けで公開した記事『まさかのGPz900R復活!? EICMAで展示のトップガン仕様に「離陸に備えよ」の超意味深メッセージ!!』は予想以上の反響を呼び、やはり新生GPz900Rを待っているファンは多いのだと確信。今のところ新型についての追加情報はないが、思わせぶりすぎるカワサキブースの展示は現代版「GPz900R」の登場を妄想させるのに十分なインパクトを放っていた。

EICMA 2022のカワサキブースにて。意味深だぜ~!

状況をいったん整理しよう。

イタリア・ミラノで11月8日に開幕したEICMA 2022のカワサキブースに、映画トップガンでトム・クルーズ演じるマーヴェリックが駆った初代ニンジャ・GPz900Rをそっくり再現したバイクが展示された。この車両は1984年型(フロント16インチホイール)をベースに、映画と同じステッカーを貼り付けるなどしたうえで、映画公開から36年の月日が経ったことを表現するユーズド風の処理が施されたもの。

注目はブース背景の文字だ。そこには「PREPARE FOR TAKE-OFF」と書かれ、下段には「AS SEEN IN THIS SUMMER’S HIT FILM」の文字が……! ざっくり訳せば「離陸に備えよ」「今夏に観たあのヒット映画のように」となり、ヤンマシ流に攻めた意訳をするなら「トップガン観たよね? 心の準備しとけよ(ウインク)」といった感じだろうか。

これで何も期待するなというほうが無理筋ってもの。

映画公開から36年の月日を表現したユーズド風の処理が超リアル。緑青を用いて経年劣化を表現したそうだ。

リバーマーク、意味ありげですけど

あえて付け加えるなら、これらの文字の下にリバーマークがあったことも気になる。川崎重工の伝統的なマークとして使用されてきたトレードマークで、バイクでの使用はニンジャH2が登場したときに『川崎重工の総力を挙げて開発した』ことを表現するため、マシンのアッパーカウルに初めて取り付けられた。その後、川崎重工内のエンジン&モーターサイクルカンパニーがカワサキモータースへと分社化した際に、トレードマークとして採用した経緯がある。

おーーーっと! このリバーマークは……?

現在、バイクでリバーマークを使用しているのは、スーパーチャージドエンジンを搭載するニンジャH2SX、Z H2、そしてスーパースポーツのフラッグシップモデル・ニンジャZX-10R/RRだけだ。

こうなると、仮に新生GPz900Rが登場するとして、ベースマシンが何になるかを絞り込むのが少々難しくなる。素直に考えれば、Z900RSと同じようにZ900系の948cc並列4気筒エンジンを搭載するのが妥当に思える。そうなった場合の車名は勝手に(失礼!)GPZ900RSと妄想させていただきたい。

しかし、リバーマークにも意味があるのだとしたら、それはスーパーチャージドエンジンを搭載する可能性もあるということ。ベースマシンはニンジャH2SXよりもZ H2のほうがフィットしやすそうに思えるが、いずれにしろそうなった場合は1984年当時の“世界最速マシン”のコンセプトまで継承することになる。そうなった場合は、レトロスポーツ路線の“RS”ではそぐわなくなるかもしれない。すると、素直にGPz900Rとしたほうが自然だろうか……。

その“前科”、覚えてますよぉ~!

2017年秋の東京モーターショーでカワサキがZ900RSを世界初公開し、多くのファン(とスクープが当たって嘘つきにならずに済んだ編集部)を歓喜させたのは記憶に新しいところ。しかしその5年前、Z誕生40周年を記念したコンセプトモデルとして、同じくEICMA(2012)でカワサキが展示したマシンを覚えているだろうか。

現代的な水冷4気筒エンジンとアルミフレームの車体に、Z1のアイデンティティと言える丸目ヘッドライトやティアドロップ型燃料タンク、丸みを帯びたテールカウルを組み合わせてZ誕生40周年記念を表現したコンセプトモデルだった。

そのコンセプトモデルは当時最新のZ1000をベースとしたもので、水冷エンジンにアルミフレームという組み合わせながら、4本出しマフラーやティアドロップ型燃料タンク、丸型ヘッドライトなどでZ1イメージに仕立てられていた。

もちろん当時のヤングマシン本誌でも「新型Z1登場か?!」と騒いだものだったが、その後しばらくは音沙汰なし。展示したモデルについて車名や資料のたぐいを一切公開していなかったことも妄想を掻き立てたが、じっさいに市販車として登場するまでには5年の歳月を待たねばならなかった。

いま思い返せば、あれはカワサキなりのマーケティングというか、新型Z1の発売を匂わせたらどんな反響があるのか探るためだった、とも解釈できる。

別アングル。アルミ製フロントフェンダーや4本出しマフラー、モノショックのリヤサスペンションを採用しているのがわかる。

となれば、より具体的なメッセージを込めている(ように思える)今回のGPz900R展示は、同じく“匂わせ”の一種と考えることができるはずだ。

2012年のカワサキの“前科”からZ900RSの発売までは5年かかっている。とはいえ、次期排出ガス規制ユーロ6が2025年以降に導入を見込まれていることも考えれば、現行ユーロ5モデルをベースにスピーディな市販化を……というストーリーも十分にあり得る。

前回の記事で本誌マツが予想したとおり、新生ニンジャは2年後のEICMAで発表、2025年モデルとして発売という路線でいかがでしょうか、カワサキさん!? 答え合わせは再来年!(たぶん)

ちなみに『“NEXT”Z900RSファミリー総選挙』ではGPz900R案が1位!

2021年秋にヤングマシン本誌が実施した次世代Z900RSファミリー総選挙企画では、角Z、ローソン、ニンジャ、ゼファー、リミテッド、ポリスの6案をノミネート。多数の得票で見事1位に輝いたのはニンジャ案だった。これがEICMAでの展示に影響を与えた……かどうか定かではない……。

以下にそのときの最終順位と元ネタになったバイクを紹介する。

〈得票1位〉ニンジャ案

カワサキ初の水冷直4、そして当時世界最速として登場した初代ニンジャ=GPz900R。’90年代ビッグバイクブーム期においても一時は人気ナンバー1の座を占めていた。モノサスペンションスタイルは、Z900ベースとの相性もバッチリだ。

【’84 KAWASAKI GPz900R】初代はF16インチで登場。ロングセラーで熟成を重ね、F17インチ化を経てブレーキも初期の対向2ポッドから最後は対向6ポッドまで進化。’80年代は国内向けに750cc版も発売された。

〈得票2位〉マークII案

旧車市場でZ1/Z2系に次ぐ人気は、’80年代の硬派なイメージのZ1000Mk.Ⅱ/Z750FX-I系、通称”角Z”。丸Zが復活したなら、こっちも欲しくなるのがライダーの心情だ。

【’79 KAWASAKI Z1000Mk.Ⅱ】オリジナルのZ1000Mk.Ⅱは、’80年代を迎える直前の’79年にデビュー。エンジンはZ1系を熟成したもので、カムカバーも丸から角型へ変更されていた。国内仕様となるZ750FXのエンジンはI型までZ2ベースで、II型以降はザッパー系だ。

〈得票3位〉リミテッド案

空冷Zにロングフロントフォークとプルバックハンドル、段付きシートなどを与え、半ば強引にクルーザーにしたのがLTD。かつては異端扱いだったその姿も、今では新鮮なのか驚きの結果に。

【’77 KAWASAKI Z1000LTD】オリジナル当時のアメリカンブームに合わせて登場したのがLTDシリーズ。250から1100まで作られ、いずれもロードスポーツ空冷Zのエンジンとフレームをベースとしていただけに、パワーと速さは光るものを誇っていた。

〈得票4位〉ゼファー案

Z1リバイバルとして登場したゼファーも、今や自分自身がレジェンド的存在に。’90年代のネイキッドブーム期にこれでバイクデビューした40代を中心に、待望する声が多かった。

【’89 KAWASAKI ZEPHYR】400/750/1100と、中免〜大型まで数多くのライダーと青春をともにしたゼファー。カワサキ最後の空冷直4としてもその存在価値は大きい。生産中止となった10数年前から中古市場は軒並み高騰し、今やお宝の一角だ。

〈得票5位〉ローソン案

ライムグリーンのカラーリングでAMAスーパーバイクを席捲した、ローソンレプリカことZ1000R/Z1100Rの復刻案。もっと得票数は伸びるかに思えたが、中古のZRXで間に合ってる?

【’82 KAWASAKI Z1000R1】’81年にエディ・ローソンがAMAを制したのを記念し‘82年に発売。Z1000JをベースにビキニカウルやKERKER集合管といった装備で強化されていた。その意匠は’10年代までZRXシリーズが受け継いでいた。

〈得票6位〉ポリス案

当時の海外TVドラマ『白バイ野郎ジョン&パンチ』で人気を博していた、Zの北米ポリス仕様を再現する案。国内未導入車でさすがにニッチすぎたか、得票としては少数に。

【’82 KAWASAKI KZ1000P】Z1000Jをベースに、警察装備による重量増に耐えるため強化フレームや極太タイヤを採用した白バイモデル。北米でのみ流通していたが、コアなマニアは並行輸入で入手していた。


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