何とも斬新なデザインが目を引く「FERO(フェロー)FW-06」は、中国のHYTモトによる電動のスポーツスクーター。日本にはファンティックやランブレッタの総代理店を務めるモータリストの手で輸入されている。コイツに試乗してみたところ…え、ちょっとなんだか2ストレプリカみたいなんですけど!!
●文:ヤングマシン編集部(マツ) ●写真:富樫秀明 ●外部リンク:モータリスト
ヒラヒラ走れて車体ガッチリ。この合せ技は未体験ゾーン!
とにかく身のこなしが印象的! 車重は121kgと軽いけれど、100kg以上の重量は一応ある。なのに、その身のこなしは重量物など一切積んでいないかのように俊敏なのだ。スパッと鋭くコーナーに突っ込める軽やかさは極論すると自転車のようなのだけれど、その際の車体はたわみやねじれを一切感じないほどガチッとした剛性感にあふれている。こんなバイク、ちょっと他に経験したことがない。
試乗した箱根の十国峠はタイトで道幅も狭いワインディングだが、ここでのFW-06は水を得た魚のようで、ろくに減速もせずコーナーを切り裂いていける。この質量感のなさや軽快きわまりないハンドリング、そして、上手く走らせるにはちょっとだけ丁寧な操作が要求される点などなど、あえて近いものを上げるとすれば…かつての2ストロークレプリカだろうか?
見た目こそスクーターっぽいけれど
フェローFW-06は中国・上海のHYTモト社の電動スポーツスクーター。設計や開発は中国のフェローテクノロジー社で、創業者はホンダの上海研究所で上席研究員を務めていた経歴も持つ。2019年のミラノショーで初公開された後、2022年8月に生産を開始し、11月にはモータリストの手で日本市場に導入されている。日本では軽二輪扱いで免許は普通二輪のAT限定でOK。最高速度は110km/h、フル充電時での航続距離は最大140kmと公表されている。
ウリは何といってもメカメカしさ溢れるルックスだろう。車体前後にウイングレットを配し(実際に空気の流れでスタビリティを向上させるという)、片持ちアームで支持される後輪にはホイールカバーまで装備。車体に対し相対的に大きく見える、14インチの前後ホイールが走りの良さをアピールしてくる。
ステップはスポーツバイクのようなバー型だし(フロアボードがないので、雨の日は足がずぶ濡れになるはず)、シート下の収納スペースも極小。全体的な印象こそスクーターっぽいものの、利便性よりルックスを重視した非常に趣味的なバイクだ。
車体構成も面白い。搭載されるリチウムイオンバッテリー(非着脱式)は蛇腹状にに折りたたまれているそうで、それを格納するアルミ製のバッテリーパックがフレームの強度部材を兼ねている。ヘッドパイプやモーターを支持するプレートはそこにボルト留めされるのだ。たわみやよじれを一切感じさせない剛性感は、この独特な車体構成に起因するのだろう。
さらにリヤホイール左側にはフェローが「オートマチック・トルク・システム」と呼称する2段ATが搭載されており、モーターの駆動力はベルトを介してこのトランスミッションへ入力される。スイングアームが上下2本のアームを備えたダブルアーム式なのも面白い。
電動ゆえの面白さがしっかりある!
そんな剛性感もあってかハンドリングはとにかくシャープで、まるで重さを感じさせずにスパッとバンクし、鋭く向きが変わっていくのが気持ちいい。1236mmというショートホイールベースや、やや高めのシート高などもあいまって得られるフィーリングなのだろうが、エンジンのような強いジャイロ効果を発生する“軸”がないこともこのシャープな動きに効いているはずだ。
モーターによる出力特性は、発進時こそパワフルなものの、その先のパワー感は150〜200cc弱くらいのレベルだろうか。ただし左ハンドルスイッチにある「S」ボタンを押すと加速力が2段階くらいアップし、ある程度の速度域からでも「けっこう速いな!!」と感じられるほどの加速を披露する。その際の、トルクフルというよりは高回転へとキュイーンと伸び上がっていくようなパワー特性は、これもなんだか2ストっぽい。
ちょっとコツはいるものの、このSボタンを押しっぱなしでワインディングを走らせているとかなりエキサイティングで、リアルにスポーツバイクのような高揚感や緊張感が味わえるが、ほぼ無音かつ無振動なモーターの特性と、前述のシャープかつガッチリした車体の感触には“電動だからこそのメリット”が存分に活かされていると感じる。
現実的な車両価格、99万円!
気になったのはリヤサスペンションのダンパーが弱めなのか、ハイペースになるとコーナー立ち上がりで車体がフワフワ動く場面があったことと、ブレーキを掛けるとモーターへの通電が途切れるのか、スロットル操作に反応しなくなること。コーナーでフロントブレーキを舐めつつスロットルを開けたり、Uターンでリヤブレーキを引きずったりなどはできない。
とはいえ、このあたりの改善は容易だろうし、独自の2段ATはよく躾けられていて、いつ変速したのか分からないほど滑らか。コミューターとしては既に十分な完成度なのだが、鋭くシャープなハンドリングを味わうとついスポーティに走らせたくなってしまう。そんな電動バイクもフェローくらいのものだろうか。
どうしても高価になりがちな電動スポーツバイク界において、フェローの99万円という価格は現実感があるし、バッテリーには5年または5万kmの保証もつくという(車両は1年&距離無制限)。個人的には4輪と違い、趣味的なモーターサイクル界で電動が主流になるとは考えていないのだが、数々の内燃機関バイクの中に入れ、選択肢のひとつとするには十分に個性的で面白く、魅力的な1台と感じられた。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
あなたにおすすめの関連記事
ホンダの“電動スポーツバイク”はプラグイン式か ホンダは4月26日に開催した「2023ビジネスアップデート」で、三部社長が今後の取り組みについての説明を行った。主な内容はカーボンニュートラルや電動化に[…]
ヤマハがホンダ製「ホンダモバイルパワーパックe:」を搭載した汎用プラットフォームコンセプトを展示 2023年3月15日~17日に開催される「第13回スマートグリッドEXPO 春」に、ホンダとヤマハがそ[…]
電動もハイブリッドもエンジンも……全方位戦略だ! 今回発表された「2030年度に向けた成長戦略」は、二輪や四輪などの製品分野だけでなく、製造分野や研究開発、外部との連携に至るまで、今後のスズキが目指し[…]
最高速度25km/h以下の“EB”に分類される3車 「Honda Cub e:(ホンダ・カブ・イー)」「Dax e:(ダックス・イー)」「ZOOMER e:(ズーマー・イー)」の3モデルが一気に発表さ[…]
惚れるぜカワサキ! ガソリンエンジンは作り続ける! エンジン好きには何とも嬉しいニュースだ。カワサキは電動車やハイブリッド、水素エンジンの投入展望など、カーボンニュートラルへのビジョンを明確に述べたう[…]
最新の関連記事(新型EV/電動バイク)
「みんなが使えるクラス最軽量級モビリティ」PEV600 今回PEV600をご紹介する前に、先代モデル”GEV600”のご説明をさせていただきます。 GEV600は2020年秋に第一種原動機付自転車とし[…]
電動二輪パーソナルコミューター×2機種発表に加え、バッテリーシェアリングサービスも展開 ホンダはインドで、交換式バッテリー「Honda Mobile Power Pack e:(モバイルパワーパック […]
50ccクラスは16歳から取得可能な“原付免許”で運転できるほか、普通自動車免許でもOK バイクを運転するための免許は原付(~50cc)、小型限定普通二輪(~125cc)、普通二輪(~400cc)、大[…]
新エンジン、電動スポーツ、電動都市型バイク、全部やる! ホンダは新しい内燃機関と電動パワーユニットの両方で行く! そう高らかに宣言するかのような発表がミラノショー(EICMA 2024)で行われた。ひ[…]
123年以上の歴史で迎える大きな節目として電動バイクの新ブランドを構築 250~750ccのミドルクラスバイクで世界的に存在感を放っているロイヤルエンフィールドが、新しい電動バイクブランド「FLYIN[…]
最新の関連記事(モータリスト)
バイクは楽しい。その楽しさを増やしていきたい! 内燃機関と電動という違いはあっても、バイク(2輪)で遊ぶ楽しさを大切にしているモータリスト。2024年のモーターサイクルショーでは「バイクは楽しい。その[…]
ミナレッリを介し、ヤマハとのパートナーシップ強化で誕生 2022年11月に開催されたミラノショーで、ヤマハはテネレやMT-07のパワープラントである2気筒のCP2エンジンを、ファンティックに供給するこ[…]
ブリクストン クロスファイア500:バランス超良好でデザインもマル エンジンはホンダのライセンス品とのことだが、フィーリングもそのままで非常に扱いやすい。このエンジンに、”理にかなったしっかり走れる車[…]
ライダーズカフェでバイクが買えたっていいじゃない! ツーリングの最中や、ちょっとバイクに乗って気分転換をするときなどの目的地として重宝する「ライダーズカフェ」。席からバイクが眺めることができたり、ヘル[…]
伝統のスタイルと軽快な走りが共存するLambretta イタリア北部のランブラーデ地区にある「イノチェンティ鋼管工場」で誕生した「Lambretta」。イタリア語の「軽量、迅速、軽快」を意味する「ラン[…]
人気記事ランキング(全体)
CT125ハンターカブ[47万3000円] vs クロスカブ110[36万3000円/くまモン=37万4000円] 原付二種(51~125cc)クラスの販売台数でPCXとトップ争いを繰り広げるCT12[…]
ホンダV3 どうなる新型モトGPマシン 築き上げた栄光にしがみつくことなく、常に挑戦を続けるホンダ。デビュー初年度に圧倒的な強さで王座に輝いたRC211Vとて例外ではない。すでに次期エンジンを搭載した[…]
「もしも出先でヘルメットを盗難されたら、自宅までどうやって帰るのだろう」バイクに乗っていると、こうした疑問も浮かぶのではないでしょうか。そもそもヘルメット窃盗犯は、なぜ人が使った中古のヘルメットを狙う[…]
通勤エクスプレスには低価格も重要項目! 日常ユースに最適で、通勤/通学やちょっとした買い物、なんならツーリングも使えるのが原付二種(51~125cc)スクーター。AT小型限定普通二輪免許で運転できる気[…]
16歳から取得可能な普通二輪免許で乗れる最大排気量が400cc! バイクの免許は原付(~50cc)、小型限定普通二輪(~125cc)、普通二輪(~400cc)、大型二輪(排気量無制限)があり、原付以外[…]
最新の投稿記事(全体)
バイクに適した洗車用ケミカルを揃えるワイズギア 入浴時に使うボディソープ/シャンプー/トリートメントにさまざまな種類があるのと同様に、洗車用のケミカルにも多種多様な製品がある中で、バイクに適したアイテ[…]
ドラレコ選びに大きく関わる“分離式/一体式”の違い バイク用のドラレコは、大きく「分離式」と「一体式」に分けられます。それぞれに一長一短の特徴があるため、ドラレコを選ぶ際にはまず、分離式と一体式とのど[…]
125ccクラスは16歳から取得可能な“小型限定普通二輪免許”で運転できる バイクの免許は原付(~50cc)、小型限定普通二輪(~125cc)、普通二輪(~400cc)、大型二輪(排気量無制限)があり[…]
ホンダV型5気筒ついに市販化!! ついにこのニュースを掲載する日がやってきた。ホンダの市販V型5気筒が出る! 2002年7月号で「V型5気筒の市販は白紙の状態」と報じて以来、約2年の月日が流れた。そし[…]
新体制で挑む10年目のFIM世界耐久選手権 TSR(TECHNICAL SPORTS RACING)が運営する「F.C.C. TSR Honda France」は、2025年シーズンもFIM世界耐久選[…]
- 1
- 2