超シャープで質量感ナシ。こりゃ面白い!!

コイツ……なんだか2ストっぽいぞ!! サイバー系電動スポーツ「FERO FW-06」試乗インプレッション

何とも斬新なデザインが目を引く「FERO(フェロー)FW-06」は、中国のHYTモトによる電動のスポーツスクーター。日本にはファンティックやランブレッタの総代理店を務めるモータリストの手で輸入されている。コイツに試乗してみたところ…え、ちょっとなんだか2ストレプリカみたいなんですけど!!


●文:ヤングマシン編集部(マツ) ●写真:富樫秀明 ●外部リンク:モータリスト

ヒラヒラ走れて車体ガッチリ。この合せ技は未体験ゾーン!

とにかく身のこなしが印象的! 車重は121kgと軽いけれど、100kg以上の重量は一応ある。なのに、その身のこなしは重量物など一切積んでいないかのように俊敏なのだ。スパッと鋭くコーナーに突っ込める軽やかさは極論すると自転車のようなのだけれど、その際の車体はたわみやねじれを一切感じないほどガチッとした剛性感にあふれている。こんなバイク、ちょっと他に経験したことがない。

試乗した箱根の十国峠はタイトで道幅も狭いワインディングだが、ここでのFW-06は水を得た魚のようで、ろくに減速もせずコーナーを切り裂いていける。この質量感のなさや軽快きわまりないハンドリング、そして、上手く走らせるにはちょっとだけ丁寧な操作が要求される点などなど、あえて近いものを上げるとすれば…かつての2ストロークレプリカだろうか?

【FERO FW-06】主要諸元■全長1832 全幅711 全高1087 軸距1236 シート高784(各mm) 車重121kg(バッテリー込み) ■モーター定格出力 5kW(最高出力10kW) 変速機形式2段自動変速 ■ブレーキF=ディスク R=ディスク ■タイヤF=110/80-14 R=140/70-14 ■希望小売価格99万円(税込)

見た目こそスクーターっぽいけれど

フェローFW-06は中国・上海のHYTモト社の電動スポーツスクーター。設計や開発は中国のフェローテクノロジー社で、創業者はホンダの上海研究所で上席研究員を務めていた経歴も持つ。2019年のミラノショーで初公開された後、2022年8月に生産を開始し、11月にはモータリストの手で日本市場に導入されている。日本では軽二輪扱いで免許は普通二輪のAT限定でOK。最高速度は110km/h、フル充電時での航続距離は最大140kmと公表されている。

ウリは何といってもメカメカしさ溢れるルックスだろう。車体前後にウイングレットを配し(実際に空気の流れでスタビリティを向上させるという)、片持ちアームで支持される後輪にはホイールカバーまで装備。車体に対し相対的に大きく見える、14インチの前後ホイールが走りの良さをアピールしてくる。

ステップはスポーツバイクのようなバー型だし(フロアボードがないので、雨の日は足がずぶ濡れになるはず)、シート下の収納スペースも極小。全体的な印象こそスクーターっぽいものの、利便性よりルックスを重視した非常に趣味的なバイクだ。

一応はスクーターの文脈に沿ったスタイルだが、各所に斬新なデザインが施されるフェローFW-06。ABSやトラクションコントロールも備える。

テールランプ周辺は空気の抜け道を設けたウイングレット形状。リヤホイールに装備されるディッシュ状のカバーもFW-06のデザインにおける特徴だ。

車体構成も面白い。搭載されるリチウムイオンバッテリー(非着脱式)は蛇腹状にに折りたたまれているそうで、それを格納するアルミ製のバッテリーパックがフレームの強度部材を兼ねている。ヘッドパイプやモーターを支持するプレートはそこにボルト留めされるのだ。たわみやよじれを一切感じさせない剛性感は、この独特な車体構成に起因するのだろう。

さらにリヤホイール左側にはフェローが「オートマチック・トルク・システム」と呼称する2段ATが搭載されており、モーターの駆動力はベルトを介してこのトランスミッションへ入力される。スイングアームが上下2本のアームを備えたダブルアーム式なのも面白い。

右が96V58Ahの大容量バッテリーを格納するアルミ製バッテリーパックで、これに簡素な構造のパイプフレームや、モーターを支持するプレートをボルトオンすることで車体としている。この構造によりフレーム重量は30%減、強度は50%UPを実現したという。

車体は風洞実験で形状が検討されており、前後のウイングレットは空気の流れを制御して安定性に寄与しているという。2段ATをリヤアクスルの左側に搭載するのも独特だ。ちなみにダブルアーム式のスイングアームは、理論的にはスイングアームを延ばしたのと同じ効果があり、ウイリーの抑止などに効果がある…と言われている。

電動ゆえの面白さがしっかりある!

そんな剛性感もあってかハンドリングはとにかくシャープで、まるで重さを感じさせずにスパッとバンクし、鋭く向きが変わっていくのが気持ちいい。1236mmというショートホイールベースや、やや高めのシート高などもあいまって得られるフィーリングなのだろうが、エンジンのような強いジャイロ効果を発生する“軸”がないこともこのシャープな動きに効いているはずだ。

モーターによる出力特性は、発進時こそパワフルなものの、その先のパワー感は150〜200cc弱くらいのレベルだろうか。ただし左ハンドルスイッチにある「S」ボタンを押すと加速力が2段階くらいアップし、ある程度の速度域からでも「けっこう速いな!!」と感じられるほどの加速を披露する。その際の、トルクフルというよりは高回転へとキュイーンと伸び上がっていくようなパワー特性は、これもなんだか2ストっぽい。

ちょっとコツはいるものの、このSボタンを押しっぱなしでワインディングを走らせているとかなりエキサイティングで、リアルにスポーツバイクのような高揚感や緊張感が味わえるが、ほぼ無音かつ無振動なモーターの特性と、前述のシャープかつガッチリした車体の感触には“電動だからこそのメリット”が存分に活かされていると感じる。

フル液晶メーターとバーハンドルを核としたコクピット。カウル内側の左側にはポケットとUSB-C電源を、右側のフタ付きポケット内には充電ポートを備える。Sボタンは左側ハンドルスイッチに配される。キーはリモコン式だ。

シートの座り心地は悪くないが、シート高は784mmとスクーターとしてはやや高め(いちおうタンデムも可能なピリオンシートも備わる)。シート下には収納があるが、容量はスマホと財布、グローブが収まる程度。

上体はほぼ直立するが、シート高が高めのせいか、ステップとの間隔を広めに感じるやや腰高感のあるライポジ。足着き性は身長172cm・体重75kgのライダーでかかとが若干浮くレベル。

現実的な車両価格、99万円!

気になったのはリヤサスペンションのダンパーが弱めなのか、ハイペースになるとコーナー立ち上がりで車体がフワフワ動く場面があったことと、ブレーキを掛けるとモーターへの通電が途切れるのか、スロットル操作に反応しなくなること。コーナーでフロントブレーキを舐めつつスロットルを開けたり、Uターンでリヤブレーキを引きずったりなどはできない。

とはいえ、このあたりの改善は容易だろうし、独自の2段ATはよく躾けられていて、いつ変速したのか分からないほど滑らか。コミューターとしては既に十分な完成度なのだが、鋭くシャープなハンドリングを味わうとついスポーティに走らせたくなってしまう。そんな電動バイクもフェローくらいのものだろうか。

どうしても高価になりがちな電動スポーツバイク界において、フェローの99万円という価格は現実感があるし、バッテリーには5年または5万kmの保証もつくという(車両は1年&距離無制限)。個人的には4輪と違い、趣味的なモーターサイクル界で電動が主流になるとは考えていないのだが、数々の内燃機関バイクの中に入れ、選択肢のひとつとするには十分に個性的で面白く、魅力的な1台と感じられた。

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