クルマ・バイクは電力供給網と連携した社会インフラになっていく
青山さんは、いままでのガソリン車は、電気・電力といったものとは無縁の存在だったが、電動車はCO2の削減を含んだエネルギー循環のひとつのシステムとして位置づけられるものになるのだと言う。
「電動化になると、とくにクルマの場合は自宅が充電場所の主体になって、屋根の上のPVソーラーで発電した電気をクルマに溜めて、それを外部に給電するということが起きてきます。そうすると、クルマは電力供給網と連携した、社会インフラになっていくんですね。バイクの場合は、MPPが実現可能なひとつの手段で、家庭のなかにMPPが4つぐらいあって、太陽光発電でできた電気をそこに溜めて、それをバイクに使ったり、家庭用の電源に使ったりということを想定しています。
電動化というものが、ガソリンエンジンからの置き換えというのはとても断片的な話でしかなくて、再生可能エネルギーを含めた社会全体のエコシステムをどう作っていくかということの一部が電動化なんです」
CO2削減、地球温暖化抑制は待ったなしの課題とは分かっていても、二輪・四輪・パワープロダクツを含め、年間約3000万台のエンジンを作るホンダはまさにエンジンカンパニー。エンジンこそがホンダらしさであり、アイデンティティだと多くの人が感じているはずだ。
「バッテリーやモーターにアイデンティティを持たせられないかというと、必ずしもそうじゃないと思います。バッテリーも、中身が変わると性能も変わっていき、そこには当然、技術競争が存在します。いま、その能力を高めようとしていて、全固体電池のパイロットラインをSakura(栃木県にあるホンダの研究・開発施設)に作って本格的にやっていこうとしています」
巷間言われているように、全固体電池は電動化のゲームチェンジャーになる可能性が大いにあるようだが、例えばCBR1000RR-Rのようなスーパースポーツも存続可能になるのだろうか。
「ツアラーモデルなどは、電動に置き換わりやすいですが、四輪も同じで、スポーツモデルはCN燃料でエンジンを使い続ける可能性はゼロではないです。モータースポーツは、今年から全日本のJSBクラスでCN燃料を使用することになっていますから、そういう領域ではエンジン+CN燃料というのはないことはないでしょうね。我々もそういうトライをしていくと思います」
社会全体のエコシステムのなかで、電動化は避けられない道だとすると、電動バイクという評価基準すら明確ではない乗り物をどう判断していくのか。そこに、長年数々のバイクを評価してきた我々、紙媒体が寄与できるところはあるのだろうか。
「私は、紙媒体が重要だと思いますよ。個人的にも。ただ、いまの10代、20代の方々はデジタルでいいという感じですから、デジタルはその中にどういう価値を作り出せるかなんじゃないでしょうか。紙でもデジタルでも、いかに面白い世界を作るかじゃないでしょうか」
否が応でも訪れてしまうバイクの電動化。であるならば、ワクワク・ドキドキするホンダらしいバイクが登場することを願うばかりだし、想像以上の魅力を持ったバイクが生まれることを大いに期待したい。
青山さんの提言
- 社会全体のエコシステムを構築する、その一部が電動化である
- Honda全体のシナジーを活かして電動化に取組む
- スーパースポーツはCN燃料の可能性も
※本記事の文責は当該執筆者(もしくはメディア)に属します。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
あなたにおすすめの関連記事
’23年はEWCの王座奪回が目標、鈴鹿8耐は日本人ライダーを起用したい 昨年7月、数か月前から噂されていたモトGPからの撤退を表明したスズキだが、同時にFIM世界耐久選手権(以下EWC)へのワークス参[…]
MFJはレースのためだけの組織ではなくツーリングも事業内容のひとつなんです MFJはレースのための組織で、一般ライダーとは接点がないように思っている方が多いと思うが、事業案内には「ツーリング」という一[…]
"ゼロエミッション東京"実現に向け、非ガソリン化を推進 多くのライダーが知っての通り、東京都は'50年の世界のCO2排出量実質ゼロに貢献する「ゼロエミッション東京」の実現を目指し、'30年までに温室効[…]
高速料金問題は自民党PTの1丁目1番地。12年かかって一歩進んだと思います 2022年4月3日からスタートした“ETC二輪車定率割引”。土日祝日限定/事前に専用サイトで自分のETC機器を登録/片道10[…]
約500万人が便利に利用している原付一種の存続を強く訴えていく 全国オートバイ協同組合連合会(以下AJ)は、日本全国の約1600社のバイクショップが加盟する都道府県単位の協同組合で組織される団体で、大[…]
最新の関連記事(ホンダ [HONDA])
大型二輪免許は18歳から取得可能! バイクの免許は原付(~50cc)、小型限定普通二輪(~125cc)、普通二輪(~400cc)、大型二輪(排気量無制限)があり、原付以外には“AT限定”免許も存在する[…]
しっかりとした防寒対策をすれば冬ならではの魅力が楽しめる! じっとしているだけでも寒い季節…さらに走行風を浴びるバイクって何が楽しいの? と思われる方も多いかもしれません。たしかに寒さの感じ方は、人そ[…]
6速MT仕様に加えEクラッチ仕様を設定、SエディションはEクラッチ仕様のみに 2017年4月に発売され、翌年から2024年まで7年連続で軽二輪クラスの販売台数で断トツの1位を記録し続けているレブル25[…]
大容量ラゲッジボックスやスマートキーシステム、USB-Cなど充実装備は継承 ホンダは、原付二種スクーター「PCX」および軽二輪スクーター「PCX160」にマイナーチェンジを施し、2025年モデルとして[…]
市販バージョンは750ccオーバー!? ホンダが世界に先駆けて量産直4マシン=CB750フォアを発売したのは’69年のこと。つまり、今年は直4CBの生誕30周年にあたるってわけ。そこで、提案モデルとい[…]
人気記事ランキング(全体)
アッパーカウルはフランスで882.5ユーロ 1980年代のGSX1100S KATANAをモチーフにしたスペシャルモデルを製作することは、S2コンセプトのスタッフが何年も温めていたアイデアだった。それ[…]
【’09VMAX開発秘話】2リッター「音魂(オトダマ)」は失敗だった 新VMAXの開発には実に十数年の歳月が費やされた。このプロジェクトを長い間推し進めてきた中心人物は開発の経緯をおよそ次のように語る[…]
ライトグレーのボディにライトブルーのホイールが新鮮! ヤマハが「MT-25」の2025年モデルをインドネシアで世界初公開した。欧州で発表済みの兄弟モデル・MT-03に準じたモデルチェンジ内容で、現地価[…]
従来は縦2連だったメーターが横2連配置に ヤマハは、2004年に欧州で誕生し、2017年より日本を含むアジア市場へ(250として)導入されたスポーツスクーター「XMAX」の2025年モデルを欧州および[…]
欧州&北米で昨秋登場した新型YZF-R3の250cc版 ヤマハはインドネシアで新型「YZF-R25」を発表した。2024年10月に欧州&北米で登場した新型YZF-R3と同様のモデルチェンジ内容とした2[…]
最新の投稿記事(全体)
振動、路面を蹴飛ばす感じ、エンジンで走らせる気持ちよさ バイクはエンジンを懐に抱えて走るような乗り物だ。単純にライダーとエンジンの距離が近いことがエンジンの存在感を大きく感じさせるだけではなく、エンジ[…]
何よりも高耐摩耗性の実現 圧倒的な耐摩耗性を誇るのが、アルミめっきシリンダーの大きな特徴である。iB井上ボーリングが、アルミめっきスリーブを作ろうと考えた最大の理由は、同社の社是でもある「減らないシリ[…]
ベテランカメラマンに「これはアートだ」と言わしめる流麗なフォルム リヤタイヤが路面を蹴り飛ばすかのような、豪快で胸の空く加速フィールはスタートダッシュだけではなく、速度レンジが上がってからもまだまだ続[…]
Screenshot 未塗装樹脂の白化 バイクのミラーや泥除け(フェンダー)、樹脂製リアボックスなどに使われている黒い未塗装樹脂部品。ここに使われている素材の多くは「ポリプロピレン」という軽くて丈夫な[…]
スイングアームにスプールを装着できれば、アドベンチャーやオフ車でもガレージREVOが使える スーパースポーツモデルやビッグバイクユーザーのみなさんからご好評をいただいているガレージREVOは、バイク置[…]