クルマ・バイクは電力供給網と連携した社会インフラになっていく
青山さんは、いままでのガソリン車は、電気・電力といったものとは無縁の存在だったが、電動車はCO2の削減を含んだエネルギー循環のひとつのシステムとして位置づけられるものになるのだと言う。
ホンダが長年開発・販売してきたフューエルセル(燃料電池)車のCLARITY FUEL CELL(’21年9月に販売を終了)。1回の水素充填で約750kmいう長距離走行が可能で、排出するのは水のみだ。取材後の2月3日に、CR-Vベースの新世代FCVを’24年に北米と日本で発売すると発表された。
「電動化になると、とくにクルマの場合は自宅が充電場所の主体になって、屋根の上のPVソーラーで発電した電気をクルマに溜めて、それを外部に給電するということが起きてきます。そうすると、クルマは電力供給網と連携した、社会インフラになっていくんですね。バイクの場合は、MPPが実現可能なひとつの手段で、家庭のなかにMPPが4つぐらいあって、太陽光発電でできた電気をそこに溜めて、それをバイクに使ったり、家庭用の電源に使ったりということを想定しています。
電動化というものが、ガソリンエンジンからの置き換えというのはとても断片的な話でしかなくて、再生可能エネルギーを含めた社会全体のエコシステムをどう作っていくかということの一部が電動化なんです」
CO2削減、地球温暖化抑制は待ったなしの課題とは分かっていても、二輪・四輪・パワープロダクツを含め、年間約3000万台のエンジンを作るホンダはまさにエンジンカンパニー。エンジンこそがホンダらしさであり、アイデンティティだと多くの人が感じているはずだ。
MPPは単に電動車の動力源であるだけでなく、太陽光発電などで作った電気を貯め、家庭用電源として利用することも想定されている。街中では、左のガチャコステーションで使用済みバッテリーと充電済みバッテリーを交換するシェアリングユースを想定する。
「バッテリーやモーターにアイデンティティを持たせられないかというと、必ずしもそうじゃないと思います。バッテリーも、中身が変わると性能も変わっていき、そこには当然、技術競争が存在します。いま、その能力を高めようとしていて、全固体電池のパイロットラインをSakura(栃木県にあるホンダの研究・開発施設)に作って本格的にやっていこうとしています」
巷間言われているように、全固体電池は電動化のゲームチェンジャーになる可能性が大いにあるようだが、例えばCBR1000RR-Rのようなスーパースポーツも存続可能になるのだろうか。
「ツアラーモデルなどは、電動に置き換わりやすいですが、四輪も同じで、スポーツモデルはCN燃料でエンジンを使い続ける可能性はゼロではないです。モータースポーツは、今年から全日本のJSBクラスでCN燃料を使用することになっていますから、そういう領域ではエンジン+CN燃料というのはないことはないでしょうね。我々もそういうトライをしていくと思います」
社会全体のエコシステムのなかで、電動化は避けられない道だとすると、電動バイクという評価基準すら明確ではない乗り物をどう判断していくのか。そこに、長年数々のバイクを評価してきた我々、紙媒体が寄与できるところはあるのだろうか。
「私は、紙媒体が重要だと思いますよ。個人的にも。ただ、いまの10代、20代の方々はデジタルでいいという感じですから、デジタルはその中にどういう価値を作り出せるかなんじゃないでしょうか。紙でもデジタルでも、いかに面白い世界を作るかじゃないでしょうか」
否が応でも訪れてしまうバイクの電動化。であるならば、ワクワク・ドキドキするホンダらしいバイクが登場することを願うばかりだし、想像以上の魅力を持ったバイクが生まれることを大いに期待したい。
ホンダが開発に注力する全個体電池とは、従来のバッテリーの電解質を液体から個体に換えることで、充電1回あたりの走行距離が長く、充電時間も短縮できるという。また、温度変化に強く発火の危険性も低い。
ホンダは4月1日付で、上の図のように組織運営体制を変更する。電動事業開発本部が全事業の主体となる、まさに完全電動シフトだと言えるだろう。
青山さんの提言
- 社会全体のエコシステムを構築する、その一部が電動化である
- Honda全体のシナジーを活かして電動化に取組む
- スーパースポーツはCN燃料の可能性も
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