
“4ストロークこそ上級”。そんな時代にRZが待ったをかけた。軽量な車体にピーキーな2ストロークユニットを抱き、大排気量車を追い回す快感。’80年代はレーサーレプリカ熱が沸騰した時代だ。本記事では、ケビン・シュワンツが駆るワークスマシンをイメージし、国内レプリカとしては最後のラインナップとなったスズキ RGV250Γを取り上げる。※本記事はヤングマシン特別号 青春単車大図鑑からの転載です。
●文:ヤングマシン編集部
シュワンツと共に駆け抜けた夏〈スズキ RGV250Γ〉
レプリカ時代の礎を築いたRG250Γの登場から5年。強力なライバルから覇権を奪還すべく、ついにスズキの次世代機が姿を現す。
RGV250Γの名が示す通り、並列2気筒に代わって完全新設計の90度V型2気筒を搭載。スズキは’82年からWGPのワークス活動を休止していたが、’88年からV型4気筒のRGV-Γ500を引っ提げて本格復帰。新作のV型250ガンマもこれに合わせて投入された格好である。
低中速トルクの増強を目的に1シリンダーあたり2つの排気デバイスや、市販車としては異例のラウンドラジエター、ボックス構造のアルミツインスパーフレームなど意欲的な装備を満載。NSRやTZRと一線を画すスラントノーズのフロントカウルも新時代を感じさせた。
乗り味は、控え目な低中速域に対し、炸裂するような高回転パワーで「ジャジャ馬」との異名をとった。また、当時スズキのエースとして活躍したケビン・シュワンツに憧れるライダーも多く、レプリカブーム佳境期を盛り上げた。
’93年までほぼ毎年バージョンアップを繰り返すも、レプリカブームの沈静化に伴い、沈黙。ところが、’96年に突如フルチェンジを敢行する。何と新作の70度Vツインや、剛性を2倍に高めたフレーム、セルスターターなど、2ストレプリカの完成形と呼ぶべき出来映えだった。
結果的にこれが最新&最後の国内2ストレプリカとなったが、言わばガンマが開拓したレプリカ時代をガンマが幕引きした形。不思議な巡り合わせである。
【’88 SUZUKI RGV250Γ】発売当時、WGP500にシュワンツがペプシカラーのRGV-Γで参戦。そのレプリカであるSPには日本GP2連覇の記念グラフィックが入る。■水冷2ストV型2気筒 ピストンリードバルブ 249cc 45ps/9500rpm 3.8kg-m/8000rpm ■128kg ■タイヤサイズF=110/70R17 R=140/60R18 ●価格:59万9000円 ※写真は’89年式SPモデル
【扱い切れるかクロスミッション】他車に先駆けていち早くSP仕様を投入したVガンマ。減速比が接近したクロスミッションはシフトが忙しく、乗りこなすには腕が必要だった。
’90年のフルチェンジで右2本出しサイレンサーに倒立フォークなど、スズキワークスRGV-Γ500(右)により近く刷新された。
’90年からスズキワークスのメインスポンサーが煙草のラッキーストライクに。これに合わせてレプリカが登場した。’94、’96にも存在。
優勝かリタイヤか。豪快な走りでファンを魅了したケビン・シュワンツ。ヤマハのレイニーとは長年のライバルで、熾烈な争いを展開した。’93WGP500で年間タイトルに輝き、2年後に引退。ゼッケン34はWGP初の永久欠番となった。2013年には鈴鹿8耐に参戦して3位フィニッシュ。
スズキ RGV250Γの系譜
’88~’89 スズキ RGV250Γ:V型に転換! 車体も完全に一新
フルモデルチェンジで倒立フォークや右2本出しサイレンサー、湾曲リヤアームなどを採用し、戦力アップ。トリプル排気デバイスも備えた。’93年に40 psとなり、トラス形状のスイングアームを獲得した。
’90~’95 スズキ RGV250Γ:倒立フォークに湾曲スイングアーム
フルモデルチェンジで倒立フォークや右2本出しサイレンサー、湾曲リヤアームなどを採用し、戦力アップ。トリプル排気デバイスも備えた。’93年に40 psとなり、トラス形状のスイングアームを獲得した。
’96~’00 スズキ RGV250Γ:90度Vから70度Vへ
規制で2スト車の存続が危ぶまれる中、フルチェンジ。位相クランクの70度Vツインやラムエア、エアロカウル、軽量セルなどを与えた野心作で、扱いやすい上に凄まじく速い。SPのみの設定。
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