
「プロジェクトBIG-1」の名のもとに初代CB1000スーパーフォアが誕生したのは1992年の秋。その思想は現在もCB1300スーパーフォア/スーパーボルドールに受け継がれ、2022年で30周年を迎えた。数あるホンダCBの中でも最長を誇るロングセラーモデルとなったBIG-1の魅力とは何か? 歴代BIG-1を生み出した開発者に話を聞いた。〈後編〉
●文:ヤングマシン編集部(宮田健一) ●写真:真弓悟史 ホンダモーターサイクルジャパン ●外部リンク:ホンダ
バイク大国日本を体現したフラッグシップネイキッド 時は遡ること30年前の1992年。レプリカブームの衰退に代わって巻き起こったネイキッドブーム、そしてビッグバイクブームの大本命として誕生したのが、初代[…]
「これはデカイな。ビッグワンだ!」ユーザー満足度の向上をめざして進化が始まる
(前編より続く)
こうして1992年11月24日に、ついに市販車として発売されたCB1000SF。それに先立って春に400SFの発売が始まった頃から“プロジェクトBIG-1”という言葉も世に出ることに。
原「試作中のCB1000SFを視察に来た本田技術研究所のトップが思わず漏らした『これはデカイな。ビッグワンだ』というつぶやきがこの言葉の始まり。レプリカなど尖ったスタイルが流行った後で、CBはある意味で普通のバイクなわけですよ。そこで何が違うのか、どんな感動が得られるのかということを、この言葉でハッキリとお客様に伝えることができました」
BIG-1の思想は多くのライダーの共感を集め、ネイキッド界の主役はホンダが奪うことになっていった。これに対抗せんとヤマハ/カワサキ/スズキも動く中、BIG-1は次の段階へと進化していくこととなる。1998年、初代CB1300SF(SC40型)の誕生であった。またそれは1000SFのヒットで彼らにとってのCB像を持つようになった新しいユーザーたちが、次なるCBにつなげていく瞬間でもあった。
原「このときはユーザー満足度を向上させることを第一とし、彼らが望んでいたものをストレートに反映したものを作りました。BIG-1のオーナーズクラブもメンバーは当時500名以上に増えていたんですね。そこで彼らに次は何を望むと尋ねてみたところ、一番大きかった声が『原さん、次は排気量ですよ!』 1300という数字が決まったのもユーザーからの声。私たちとしては1500でも作れと言えば作ることはできたんです。でも、ユーザーたちには1300という排気量が受け止められる数字として肌が合ったんでしょうね。そこで先行して開発されていたX4のエンジンを使って開発が始まりました。このとき、もうひとつ大きかった要望が“タイヤサイズを変えてほしい”というものです。1000ではスタイルや手応えを重視するためにあえて18インチを採用していました。でもやっぱり17インチが主流のなかでお客様には選べるタイヤがない。そこで17インチに。CBらしいハンドリングを守るために幅を太くしたりリヤサスペンションにダブルプロリンクを採用するなど工夫しました。足着きの要望も増えてきていたので、1000よりシート高も下げましたね。おかげ様でセールス的には1000よりも好調でした」
【’98 HONDA CB1300 SUPER FOUR(SC40)】X4ベースの1284ccエンジンを採用。モノバックボーンタイプのダブルクレードルフレームとなることで、ホリゾンタル基調のフォルムとなった。タイヤは17インチに変更。フロントフォーク径の4mm拡大やリヤサスペンション下部へのダブルプロリンク機構採用で、重量増でも低速時から高荷重時まで路面追従性に優れたものとした。 ■全長2200 全幅780 全高1165 軸距1545 シート高790(各mm) 車重273kg ■水冷4スト並列4気筒 1284cc 100ps 12.2kg-m ■タイヤサイズF=130/70ZR17 R=190/60ZR17 ●当時新車価格:94万円 [写真タップで拡大]
そして’03年、BIG-1は再び次なるステージに上がる。現在につながるSC54型の登場だ。当時のビッグネイキッドとしてはいち速くFIを採り入れ、車重は約20kg減。走りのイメージが全面に強調されていた。
原「もう一度BIG-1を振り返ってみたときに、大きいのはいいが重すぎるのではないか、乗れるなら乗ってみろという感じはキープしつつエレガントさやシャープさを増すことがユーザーニーズに沿うのでは? と思ったのが3代目です。岸さんが描いた最初のスケッチを見たときに、これだ! とピンと来ましたね」
岸「もう1枚しか書きませんでした。2代目のときはドイツに駐在して離れていたので、その間の国内トレンドをあまり意識せず描けたのが良かったんでしょうか。テールカウルはやりすぎだったかもしれませんが、スパっとカタチにできました」
原「モックアップを作っていて、タンクやテール部分のボリュームには感動しましたね。大きく感じたK0のとき以上に思えました。走りの面を鍛えたことで3代目では’03年、’04年と鈴鹿8耐にも挑戦し、クラス優勝も手にしました。本当はハーフカウルを付けないままで走らせたかったのですが、さすがにそれではマシンが暴れて無理でしたね(笑)。このときのマシンがきっかけとなって、’05年のスーパーボルドール(SB)につながり、BIG-1の世界がさらに広まったんだから大したものです」
工藤「その頃、高速道路2人乗り解禁もあってツーリング需要がどんどん高まっていました。その中でワインディングでのスポーツを思う存分楽しみながら、ツーリングなど何にでも使えるというのがCB1300の強みだと感じていたんです。今では補機類が増えて狭まったのですが、当時はシート下スペースがとにかく広くて、ここにカッパと着替えとタオルを入れて日帰りで温泉に出かける、といったことが楽しめるのが素晴らしかった。そこにカウルがあれば、もっと快適だろうと。しかし8耐カウルはレースにはいいのだけど、市販車としてのポジションにはまったく向いていなくて。SBのカウル作りにはずいぶんと苦労しました」
【’03 HONDA CB1300 SUPER FOUR(SC54)】基本コンセプトをキープしつつ、シャープな走りを強化。ボアストローク寸法は先代から継承しつつ、極限までコンパクトにしたシリンダーブロックで、エンジン単体で10kg減を達成。パワー特性も従来の3000rpm付近で豪快に立ち上がるものから、中~高回転へ2次曲線的に盛り上がるスポーティなものになった。 ■全長2220 全幅790 全高1120 軸距1515 シート高790(各mm) 車重254kg ■水冷4スト並列4気筒 1284cc 100ps 11.9kg-m ■タイヤサイズF=120/70ZR17 R=180/55ZR17 ●当時新車価格:98万円~ [写真タップで拡大]
※本記事の文責は当該執筆者(もしくはメディア)に属します。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(CB1300シリーズ)
高精度加工によるクロモリシャフトで、奈良県警白バイ隊員も納得の性能変化! そもそも交通機動隊の白バイは、納入の段階である程度のメーカーカスタムがされている。赤色回転灯や速度違反取締りのための計器類の追[…]
バイク大国日本を体現したフラッグシップネイキッド 時は遡ること30年前の1992年。レプリカブームの衰退に代わって巻き起こったネイキッドブーム、そしてビッグバイクブームの大本命として誕生したのが、初代[…]
まずはビッグバイクの代名詞と言えるCB1300SF 全長2200mm、ホイールベース1520mm、車重260kg超を誇る日本のビッグネイキッド「CB1300スーパーフォア」でチャレンジ。あれ、ちょっと[…]
CB-Fコンセプトとは:CB750F/900Fモチーフのコンセプトモデル 今をもってなお人気の高い名機”エフ”ことCB750F/900F。このマシンをモチーフとし、’20年にホンダが現代版のコンセプト[…]
デザイナー自ら「(CB-Fコンセプトは)出ませんよ!」 本当に、実に残念なニュースだ。2020年の春に公開され、ホンダファンを歓喜させたネオクラシックジャンルの提案モデル「CB-Fコンセプト」。その市[…]
最新の関連記事(ホンダ [HONDA])
歴代の直列4気筒が表彰台を独占! ’70年代に4気筒車が続々と登場し、世界を席巻していく。当時のMOTYでは750RS(Z2)が’73年から6連覇と強かった。ところが現代の投票ではCB400フォアが抜[…]
CBR600RR:20周年で新型登場?! 発表は鈴鹿8耐か 初代CBR600RRの誕生は2003年。それまで600ccクラスのレースにスポーツツアラーのCBR600F4iで参戦していたホンダだが、他社[…]
’23 ホンダ CBR250RR 概要 ’17の初代、’20の2代目に続く3代目として’23でマイナーチェンジ。ユーロ5に相当する令和2年度排出ガス規制に適合し、型式名の先頭にはそれを意味する「8BK[…]
ホンダは、昨夏の発表でコロナ禍によるロックダウン、世界的な海上輸送・港湾の混雑、半導体供給不足などの複合的な要因から製品・部品入荷や物流の遅延が継続・長期化しており、生産・海外からの入荷見通しが依然と[…]
GB350はマットパールグレアホワイト、GB350Sはプコブルーを追加! 2022年にクラストップの販売台数を記録し、供給が追い付かないことから受注が一時停止されていたホンダ「GB350」「GB350[…]
人気記事ランキング(全体)
ホンダは、昨夏の発表でコロナ禍によるロックダウン、世界的な海上輸送・港湾の混雑、半導体供給不足などの複合的な要因から製品・部品入荷や物流の遅延が継続・長期化しており、生産・海外からの入荷見通しが依然と[…]
CBR600RR:20周年で新型登場?! 発表は鈴鹿8耐か 初代CBR600RRの誕生は2003年。それまで600ccクラスのレースにスポーツツアラーのCBR600F4iで参戦していたホンダだが、他社[…]
5年連続ベストセラーに充実のパッケージで挑む〈エリミネーター VS レブル250〉 250クラスのクルーザーでは’17年の登場以来、5年連続でホンダのレブル250がベストセラー街道をバク進している。ま[…]
快適ワーク研究所を設立、シフトールはVRやメタバース領域で活躍 2023年2月、ワークマンは労働寿命の延伸を目指し、企業や大学とのコラボ製品を生み出す「快適ワーク研究所」を設立。5月から1万着がテスト[…]
GB350はマットパールグレアホワイト、GB350Sはプコブルーを追加! 2022年にクラストップの販売台数を記録し、供給が追い付かないことから受注が一時停止されていたホンダ「GB350」「GB350[…]
最新の投稿記事(全体)
F-17初のグラフィックモデルは鮮やかな色彩が魅力の2タイプ 『F-17』は、レースにも対応するMFJ公認モデルで、全日本ロードレース選手権からフィードバックされたノウハウを凝縮したフラッグシップフル[…]
取り回しが楽で扱いやすいZ125プロ、ヘルメットホルダーはDIYしてみました 2回目の近況を報告します! 3月は年度末、4月は年度始めともあり、名所へのツーリングへ行く事は残念ながら出来ませんでしたが[…]
オリジナルのバランスを忠実に再現してみせる ケンツが’80年代2ストレプリカの最高峰RG500Γに当時のXR45外装をまとわせた、HB(ハーベイ)カラーのカスタム車を仕上げたのはヤングマシン本誌の’2[…]
真夏の高速道路は灼熱地獄! ライダーを守るために路肩走行を認めて欲しい! コロナ禍が一段落した今年のゴールデンウイーク(4月29日~5月7日)は、ワイドショーでも連日報道していたように高速道路は昨年比[…]
MotoGPで培われた「ライダーを守る技術」が様々な分野に発展 MotoGPでは2011年から採用されてきたダイネーゼのワイヤレス式エアバッグシステム「D-air」。25年以上の歳月をかけて研究&開発[…]