BMW K1600GT 試乗インプレッション【電脳進化で極上の快適性がさらに向上】

水冷並列6気筒エンジンを搭載するBMWの「K1600」シリーズが、ユーロ5適合に伴いモデルチェンジを実施。ヘッドライトを含むフロント回りの意匠を変更し、トラクションコントロールやダイナミックESAを次世代型へ。スタンダードなK1600GTに試乗した。


●文:ヤングマシン編集部(大屋雄一) ●写真:長谷川徹 ●外部リンク:BMW

BMW K1600GT:シルキー6の魅力健在。高級サルーンを超えた

1648cc水冷並列6気筒という唯一無二のパワーユニットを搭載するK1600シリーズ。全4機種のうち、テストしたGTはスポーティかつスタンダード的なモデルだ。

【BMW K1600GT】■全長2310 全高1440-1600 軸距1620 シート高810-830(各mm) 車重350kg ■水冷並列4スト6気筒DOHC4バルブ 1648cc 160ps/6750rpm 12.2kg-m/5250rpm 変速機6段リターン 燃料タンク容量26.5L ■ブレーキF=ディスク R=ディスク ■タイヤF=120/70-17 R=190/55-17 ●色:黒 白 白赤青 ●価格:335万5000円~(白赤青:6万6000円/白:27万1000円)

【ライディングポジション】シートを低い方にセットした状態。並列6気筒ながらシート幅はスリムで足着き良し。どこにも無理のないライディングポジションだ。[身長175cm/体重68kg]

【トラクションコントロールがさらに賢く】試乗車の色はプラス27万1000円のミネラルホワイトメタリックで、ホイールもオプション品だ。新型はエンジンドラッグトルクコントロールを追加し、エンジンブレーキ方向にもトラクションコントロールが介入するように。

BMW K1600GT:試乗インプレッション

まずはエンジンから。ユーロ5適合に伴い最新のECUを採用し、合わせてトラクションコントロールも高度化。加速方向だけでなく、スロットルを戻した際の過度なエンジンブレーキも制御するようになった。

このエンジン、相変わらずシルキーさが際立っており、特に2000~3000rpmでは電動モーター並みに無振動なのだ。トップ6速100km/hでおよそ3000rpmであり、高速巡航時はまるで高級サルーンのよう。4000rpm付近でかすかに微振動が出るものの、5000rpmから上ではレーシングサウンドと呼べるほどの咆吼を響かせ、滑空するかのごとく加速する。

モーターを想起させるのはあくまで無振動な低回転域だけで、スロットルを開ければ内燃機関ならではの力感が存分に味わえるのだ。

続いてはハンドリングだ。直6エンジンが注目されるが、車体もフロントサスペンションはデュオレバー、リヤはリンク式モノショックのパラレバーという特殊な構成となっている。しかしながら、それを感じさせず自然に扱えるのはさすがBMWだ。

軸距が1620mmと長いので小回りは苦手だが、車体の傾きに対してナチュラルに舵角が付き、その傾向が低速域から高速域まで大きく変化しないことが安心感を生んでいる。

電子制御サスのダイナミックESAは、新型で次世代型へと進化し、選択肢がロードとダイナミックの2種類に。ロードモードはまるでスカイフックのような乗り心地で、ギャップ通過後の収束がやや遅い感あり。一方、ダイナミックモードは路面からの衝撃を的確に吸収し、その後の収束もロードより早いので好印象だった。

ブレーキは、350kgもの巨体を急減速させられるほどのストッピングパワーを持つだけでなく、そこまでのコントロールがしやすいのも特徴だ。フロントについては、ノーズダイブを抑制するデュオレバーの助けもあり、安心して握れるのだ。

BMW K1600GT 車両紹介

BMW K1600GT:エンジン/マフラー

【最新ECUでユーロ5パス】1648ccの水冷並列DOHC4バルブ6気筒エンジンは、最高出力は160psのまま発生回転数が1000rpm低下。最大トルクは175Nmから180Nmへと微増した。

排ガス規制ユーロ5適合後もサイレンサーの意匠はほぼ変わらず。パニアケースの着脱がイージーなのはさすがBMW。

BMW K1600GT:足まわり

【極上の走り心地の根幹】前後ともφ320mmディスクとブレンボ製キャリパーを採用するブレーキセット。フロントサスペンションはデュオレバー/リヤはリンク式モノショックのパラレバーで、電子制御式サスのダイナミックESAは新型で自動化を促進。

BMW K1600GT:主要装備

アダプティプLEDヘッドライトは新型となり、左右に加えて上下にも光軸が可動。

【快適な電動式可変スクリーン】BMWのツアラー系では定番装備とも言える電動式の可変スクリーン。左側のスイッチボックスにあるシーソーボタンで高さを無段階に調整できるのだ。

メーターはR1250RTらと同じ10.25インチのTFTカラーディスプレイに。標準装備のオーディオシステムは2.0へと進化し、USB-C接続が可能なスマホ用の防滴ストレージも追加する。

’17年モデルからリバースアシスト機能が採用されており、そのためのスイッチがハンドル左にある。

燃料タンク容量は約26.5Lで、無鉛プレミアム指定となる。ライダーシートは高さを810mmと830mmの2段階に調整でき、前後ともヒーター付きだ。なお、この車体色のみ日本仕様はブラウンベンチシートに。

サイドカウルの両側にはロック可能なコンパートメントあり。左にある4つのボタンはお気に入りの機能を任意に割り当てられる。

スリップストリームディフレクターと呼ばれる手動式の導風板。これを開くと走行風がカウルの内側へ導かれる。

日本仕様はエンジンプロテクトバーとフォグランプを標準装備。クイックシフターは上下方向に対応。

[△] 最新機能フル装備だがACCがないのは残念

同社のR1250RTが’21年モデルで追従型クルーズコントロールのACCを採用。これの完成度の高さに感心しただけに、より長距離移動を得意とするK1600GTが導入しなかったのは残念。なお、通常仕様のクルーズコントロールは標準装備される。

[こんな人におすすめ] K1600でしか味わえない極上の世界観

’11年の国内発売以来、このシリーズには何度も試乗。まるで滑空しているかのような走りは新型も健在で、同じ6気筒のホンダ ゴールドウイングとも異なる。先進装備の数々がライダーのストレスを極限まで軽減。これぞ傑作だ。


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