クラッチもトランスミッションもない!

完成度を高めた電動プロトタイプ「CRエレクトリック」は2023年にメジャーレース参戦か

ホンダが12月12日に開催した「2023年 Honda モータースポーツ活動計画発表会」では、新型「CBR250RRレースベース車」など新規モデルも公開された。その中には、電動モトクロッサー「CR ELECTRIC PROTOTYPE」の姿もあった。


●文/写真:ヤングマシン編集部(ヨ) ●外部リンク:ホンダ

2019年のデモ走行時には『45分のレース走行を目指す』としていた

ホンダは、2022年12月12日に「2023年 Honda モータースポーツ活動計画発表会」を開催。そこで次年度の参戦体制やライダー&ドライバーの顔ぶれを発表するとともに、レース界における近い将来のカーボンニュートラルに向けた技術開発などについても言及した。

その場では2022年シーズンを戦ったレーシングマシンたちと一緒に、「新型CBR250RRレースベース車」と「CRエレクトリック プロトタイプ」も展示された。本記事では後者のCRエレクトリックに注目したい。

上記発表会では、このCRエレクトリックについて「2023年にはレース参戦を目指す」と述べられたのみで、車両の詳細については不明。参戦できるレースがどのカテゴリーになるのかも明かされなかったが、じつは同車両の以前のバージョンが2019年に全日本モトクロス HSR九州大会でデモ走行をしており、そこからある程度の推察はできそうだ。

2019年当時のプロトタイプは、2018年型のCRF250RをベースとしたフレームにM-TEC(無限)と共同開発したパワーユニットを搭載し、マン島TTに参戦したロードレーサー・神電の技術も行かされていたという。スタートダッシュではかなりの速さを見せた一方で、ギャップの通過などではエンジン車に比べてやや挙動に重さが見られた。

その当時の言い方では、モトクロスレースの1ヒートにあたる「45分の走行を目指している」としていたが、おそらくそれが現実に近付いてきたことから2023年はレースで実戦テストする、ということなのだろう。全日本モトクロスまたは地方選手権でエンジン車と混走する場合、どのクラスを走ることになるのか注目だ。

出力と走行時間(=走行距離)がトレードオフになる関係上、重量増を許容範囲に収めた一定以下のバッテリー容量で、トップカテゴリーの1ヒート45分を周囲と遜色ないペースで走り切れるのか、それとも4ストローク250ccと混走することになるのか──。

興味本位で語ることが許されるなら、レッドブルが主催する「ストレートリズム」のような短時間で勝負するようなエンターテインメント性の高い競技に参戦する姿も見てみたい。40秒程度の限られた時間だけ最高出力を発揮できればいいとした場合、かなり大胆な設定でバッテリーの軽量化やモーターの高出力化も可能なのでは、と素人考えながら期待してしまう。同様に、フリースタイルMXなどにも可能性があるような気がしてならない。

ガチンコのレースだけでなく、エンターテインメント性の強い場で『電動モトクロッサー、ここにあり!』をアピールしてくれたら、ファンにとっても嬉しいサプライズになるはず。勝手な言い分だと重々承知はしているが、1997年にヤマハがYZM400Fで初勝利、直後の市販車発表でファンの度肝を抜いたような、新しいムーブメントを目の当たりにしてみたい!

【参考動画】[FULL SHOW] Red Bull Straight Rhythm 2022 | Ultimate 2-Stroke Race

CR エレクトリック プロトタイプはギヤチェンジなし

CRエレクトリックで注目なのは、クラッチレバーもシフトペダルもないこと。つまりスクーターのような操作系に近く、右足ブレーキになってはいるが、ライダーが望めば左手ブレーキを装備することも可能だろう。

フレームはCRF-R系(年式不明)で、エンジンと同様の位置にパワーユニットを搭載。車体重心はエンジン車に近そうだ。モーターの前方にある黒いボックス状のものはバッテリーだという。ラジエターを備えており、モーターは水冷だとわかる。

市販車と言われたら信じそうなカラーリング。パワーユニットまわりに“無限”の文字は無し。

前後から見ると、マフラーが見当たらないこと以外はほとんどエンジン車と変わらない。

左手側にはレバーなし。シンプルなボタンが2つ設置してあり、なんらか(パワーモードとか?)の操作を行うようだ。

チェンジペダルがなくシンプルな左側ステップ。スプロケットとスイングアームの位置関係はエンジン車によく似ている。

通常のエンジンでいうシリンダー背後あたりにモーターのセンターがある。このあたりに車体重心がくるものと思われる。

右側シュラウドの奥には小ぶりなラジエターが見えた。本格的に走るだけの出力を実現するためには水冷式が不可欠なのだろう。

右側にはブレーキペダルがあり、見慣れた光景。

SHOWA製フロントフォークはインナーチューブにコーティングが施されていた。


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