ホンダは、新事業創出プログラム「IGNITION(イグニッション)」から生まれたベンチャー企業として2社目となる「株式会社 ストリーモ」の設立を発表した。社名と同じ新型モビリティ「ストリーモ」は、いわゆる電動キックボードに属するものだが、そこはホンダ。足を乗せたまま静止する事もできる“バランスアシスト機構”を備えているのだ!
賛否両論の電動キックボードへ、ホンダの回答はこれだ!
ホンダは、新事業創出プログラム「IGNITION(イグニッション)」から生まれたベンチャー企業として2社目となる「株式会社 ストリーモ」の設立を発表。社名と同じ製品名「Striemo(ストリーモ)」を開発中であり、2022年中に日本国内で、2023年に欧州で発売予定とした。
電動キックボードについては各メディアでさまざまな報道があり、なかでも問題視されたのは「速度が20km/h以下のものについては免許を不要(16歳以上)とし、ヘルメットの着用は義務ではなく任意、原則として走行場所は車道とするが、最高速度を6㎞/h以下に制御できるものは歩道や路側帯も通行可能にするという電動キックボードの規制緩和を促す道交法改正案」だった。
ようするに、免許不要でヘルメット着用は努力義務とされた乗り物が、一定の速度以下に制限すれば車道または歩道を走れるようになるという法案である。これが2022年4月19日に可決されたわけだが、小径ホイールゆえの走破性の低さやブレーキング時の不安定さなどは、今でも議論の的になっている。
ここに“技術”で答えを出そうとしているのがホンダである。
ストリーモは前1輪/後2輪の電動三輪モビリティで、最大の特徴は、独自のバランスアシスト機構を備えていることだろう。0.1mm単位で重心バランスを計算した緻密な設計とされ、人が自然にバランスを取りやすいジオメトリー構造としたうえで、ゆっくり歩くようなスピードから自転車程度のスピードまで、転びづらく安定した走行が可能だという。
ニュースリリース発表と同時に公開された動画を見ると、平滑な路面であれば想像以上に安定して曲がることができるようで、バンク角も思った以上にありそう。そして驚くのは、ハンドルから手を離しても直立したまま静止できることだ。これがバランスアシスト機構による「自立・安定」であり、『人が持つ自然な反応を活かした世界初のシステム』とのこと。
すでにフランスを舞台に先行テストが行われ、幅広い年齢層の被験者から「想像以上に安定している」とのフィードバックを得ているようだ。
じっさい、走りを見ると安定感があり、ライントレース性も非常に高そう。また、歩行者と一緒に並走してもスルスルと安定して進むことができる様子が見て取れる。
少しマニアックな見方をすれば、乗車位置や各種ジオメトリー、そして重心などの設定には、ホンダならではのレベルの高さが垣間見える。特に、やや長めのホイールベースや後ろ寄りの乗車位置により、段差につっかえてつんのめったり、フロントを巻き込むようにスリップダウンしたりといった転倒の可能性はかなり低く抑えられているように感じられた。
左右に傾斜した路面を直進したり、砂利と段差が混じった路面を走ったりという場面もあり、ストリーモの開発にあたっては、安全性を高めるべく多くのトライがなされたことをうかがわせる。
なお、現行の法規においてストリーモは原付一種扱いとなり、免許が必要かつ走行できるのは車道のみ。新法案への対応モデルやアップグレードパッケージの販売等は追って発表があるという。価格は26万円で、すでに第一次抽選販売は開始(要デポジット5万円)されており、当選結果の連絡は8月中旬とのことだ。
違法な電動キックボードが跋扈する今だからこそ、ホンダの発表に意味がある?
新たな法案は可決されたものの、現在はまだ施行されていない。一般の電動キックボードは原付一種扱いであり、車道を走ることとヘルメット装着が義務付けられている。また、一部のレンタル業者が許可された実証実験の「特例電動キックボード」については小型特殊自動車扱いで免許が必要、ヘルメットは任意だが車道/自転車通行帯のみ走行可能となっている。
つまり、ナンバーなし車両は全て違法であり、現行の法規では無免許や歩道走行も全て違法。これを守っていない車両や走行はかなりの数が見受けられ、危険性に対する議論は熱を帯びるばかりである。
そんな状況下、ホンダ(を母体としたストリーモ)が発表した新しい電動キックボードは、しっかりと安定性が確保されていない車両へのカウンターと言えるのではないか。玉石混交の電動キックボード界で悪貨が良貨を駆逐してしまう前に、“マトモで安全な車両”をスタンダードとして確立してしまえば、電動キックボードの良い面(便利さや気軽さ)に焦点を当てていくことができるはずだ。
また、安全教育にずっと力を注ぎ続けてきたホンダなら、法規に合わせた安全運転についてしっかりとユーザーに伝えることもできるのではないだろうか。
気軽で便利な乗り物を欲する需要があり、同時に法規と世論の噛み合わなさも露呈している現状に対し、技術で答えを出そうとしているのがホンダだ。誰もが安心して乗れるもの、そしてそれを許容する環境を作っていくために、この「ストリーモ」が背負う役割は、想像以上に重いものとなるかもしれない。
STRIEMO ※写真はプロトタイプ
主要諸元■全長1090 全幅480 全高1180(各mm) 車重約20kg 最高速度25km/h 走行モード(3モード):1) 6km/h、2) 15km/h、3) 25km/h■1充電での走行距離:30km フル充電にかかる時間:約3.5時間 ※製品版は現行法規における一種原動機付自転車扱いとなり、免許、ヘルメット、ナンバー登録、自賠責保険が必要になります。
●価格:26万円(Striemo Japan Launch Edition限定モデル) ※日本国内一般消費者向け 一種原動機付自転車扱い ●抽選予約受付中(結果は8月中旬発表)
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