去る4月19日、電動キックボードに関する改正道路交通法が衆議院本会議で可決した。2年以内の施行が迫るなか、各地の会議体などで委員を務めるモビリティジャーナリストの楠田悦子氏に話を聞いた(その3/最終回)。16歳から免許不要で乗れるようになる予定の電動キックボードに対して、自治体行政はどう考え、動くべきなのか?
●文:ヤングマシン編集部(田中淳麿)
法律を変えられた日本人のマインドは歓迎したい 田中(筆者):道交法改正についてお考えを。 楠田:新しい移動手段が生まれることは日本では最近なかった。10年ぐらい前に超小型モビリティというのがあって今も[…]
交通ルールを学ばないと、何に乗っても危ない ───「事故を起こさない=乗り物を取り上げる」ほうが多い。三ない運動の頃から進化していないのでは? 楠田:新潟県の某市では、自転車通学で事故が多発したらスク[…]
- 1 交通ルールを学ばないと、何に乗っても危ない
- 2 人気記事ランキング(全体)
- 3 二輪車利用環境改善部会に関連する記事
- 4 [高校生のバイク問題] 日本二普協のシンポジウムで紹介:バイク通学実施高校“秩父農工”の取り組み
- 5 [バイク駐車場問題] 神戸市に見る、”道路上”を活用した先進的な駐車場の例
- 6 [高校生のバイク問題] 静岡県飛龍高校にOBらがカブを寄贈〈背景には整備士資格検定の改正〉
- 7 [バイク駐車場問題] アキッパが調査結果を報告〈8割以上が駐車場不足を実感〉
- 8 [バイク駐車場問題] 駅近の駐輪/駐車場事情:小田急電鉄編〈高架下や法面脇に駐車場を設置〉
- 9 [高校生のバイク問題] 埼玉県は“特定原付”の周知/啓発に自転車講習会の場を活用
- 10 [バイク駐車場問題] 北海道ツーリングの拠点・札幌の、雪国ならではの課題と対応
- 11 [高校生のバイク問題] 三ない運動を廃止し、交通安全講習会を始めて6年。埼玉県の目的と思いとは?
- 12 最新の記事
交通ルールを学ばないと、何に乗っても危ない
───法改正の可決以降、多くのメディアがそれぞれの立場で論調を展開しています。電動キックボードについては「免許がいらないにしても運転講習をすべき」だとか、それに対して認定制度が必要といった記事も見られます。こうした考えについてどう思われますか?
楠田:何でもかんでも免許がなきゃいけないとは思いません。乗り物側がしっかりしていて、ルールが守れていて、インフラがしっかりしていれば別にいらないなとは思うんですよね。日本のインフラが脆弱だったり、乗り物自体が危ないからそう言われるんだと思うんですよ。
デンマークとかは、車道はここ、自転車はここを走るというのが本当に徹底されていて、「危ないと感じるようなインフラを作るのは行政の責任だ」みたいなことを言うくらいなので。そこまでインフラ側がしっかりしていたら、そんなに乗り物側に安全性を求めなくてもいいわけですよ。
───安全教育やしつけに厳しいドイツだと、州によっては小学生で交通安全に関する試験をやっているところがあると聞きました。日本だと先生が教えて先生がチェックするというケースはあるんでしょうか?
楠田:ありますよ。自転車の免許を付与するということをさいたま市(埼玉県)がやっています。さいたま市は「子ども自転車運転免許制度」というのを2013年から導入していて、筆記試験と実技試験をして、合格者には埼玉県警と教育委員会から免許証を交付しています。
───(ネットで調べて)この制度はすごいですね。免許証を持っていればインセンティブまで受けられる。埼玉県自転車軽自動車商協同組合の加盟店で免許証を見せれば、自転車パンク修理が1割引になったり安全点検を無料でしてもらえるんですね。かつては高齢者にも同様の制度があったようで、自転車事故の実情に則した対策をしています。
楠田:やってるところはちゃんとここまでやっているんです。
───埼玉県は中/高校生への自転車講習を行なっていますし、三ない運動を撤廃してからは、バイクに乗っている/免許を取得した高校生にも講習会を実施しています。埼玉県のような意識の髙い自治体では、電動キックボードについてもこういう対応を取る可能性もあるかもしれません。
楠田:どうでしょうか。自転車については、ここまで多くの人が乗るモビリティだから実現しています。電動キックボードの普及しだいでしょうね。ここまで市民権を得られている乗り物というのは、自転車かクルマしかないわけですよ。子どもの時に自転車の乗り方を親から教えてもらって、補助輪を取って乗るというのが日本だと当たり前だからここまでやれるんです。海外だと自転車に乗れない人がほとんど、という国もあるので。
電動キックボードの位置付けが自転車と同じくらいまで行けば、そういう対応になるでしょうけど、少人数しか乗らない乗り物に対してそこまでできるかはわかりません。ただ、交通ルールを守れている子どもたちが電動キックボードに乗るようなら、期待もできるかもしれません。
───ここまで行政対応についてお伺いしました。電動キックボードについて他に気になっていることはありますか?
楠田:ユーザーからすると、電動キックボードも含めた新しいモビリティを販売するお店の数や周知/PRが全然足りていません。“良いものであるか”よりも、売っていくための環境が整ったり、“売っていこう”という判断で販売網まで作れるかどうかで全然違ってくると思います。
───法改正でモノが認可されても、販売網や周知が整っていないことが課題のひとつだということですね。ありがとうございました。
※本記事は“ヤングマシン”が提供したものであり、文責は提供元に属します。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
人気記事ランキング(全体)
バイクショップとは思えない機器を活用して、手間のかかる下地作りや磨き作業を効率アップ 新車から何十年もの時を経たオリジナルコンディション車と、フルオーバーホール/再塗装/再メッキが施されたレストア車両[…]
スピード感を纏ってクオリティアップ ホイール/エンジンまわり/ステップなどの金属パーツは、パウダーコートや塗装を剥がし徹底的にポリッシュすることで、ノーマルパーツを使いながらも高級感を出した。汎用品で[…]
第1位:X-Fifteen[SHOEI] 2024年10月時点での1位は、SHOEIのスポーツモデル「X-Fifteen」。東雲店ではスポーツモデルが人気とのことで「とにかく一番いいモデルが欲しい」と[…]
モデルチェンジしたKLX230Sに加え、シェルパの名を復活させたブランニューモデルが登場 カワサキは、KLX230シリーズをモデルチェンジするとともに、KLX230Sとしては3年ぶり(その他の無印やS[…]
復活の軽二輪レトロは足着き性抜群、エンジンは大部分が専用設計だ 現在の国内メーカー軽二輪クラスでは唯一となるネオクラシック/レトロスタイルのモデルが待望の登場を果たした。 カワサキが以前ラインナップし[…]
二輪車利用環境改善部会に関連する記事
最新の記事
- 1
- 2